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太田光が青臭い正論を吐く理由

ブログ


爆笑問題太田光は新作*1トリックスターから、空へ」の前書きの中で、最近はよく周りから「お前は何者で、何になりたいのか?」と問われると書いている。

トリックスターから、空へ
太田 光
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相変わらず、生放送等で「タモリさんを助けようと思ってやってるんだけど、逆に困らせてしまう」ような危うい暴走を繰り返したりする一方、お笑い芸人にも関わらず「太田光の私が総理大臣になったら……秘書田中(以下「太田総理」)」や「スタ☆メン」など数多くの番組で政治的発言を繰り返したりし、文化人的な立ち位置を見せることが多くなった。
そこでは今どき恥ずかしいくらいの青臭い正論を吐くことが多い。<参考動画>
 http://www.youtube.com/watch?v=eKgUeQWZWl8
 http://www.youtube.com/watch?v=Zsdp5S5tVdU
そんな時、太田は「お前は何者で、何になりたいのか?」と自らにも問いかけ、「まいったな」と思うのだという。そんなこと自分でも分からないと。

"何になりたいか"どころか、自分が"何者なのか"もわからない。
自分では漫才師のつもりであるが、「アイツはもう、芸人とはいえない」とい
う声も随分聞いた。言われてみればそんな気もする。今まで胸をはって「俺は芸
人だ」と言える気持ちになったことは一度もない。


太田総理」の大ファンだという伊集院光との「TVブロス」での対談で、太田はこの番組について以下のようなことを語っている。

「とにかく(カミさんには)「偉そうに」っていうのが一番言われる。それを言わないと勘違いに気付かないんじゃないかと思われて。誤解なんだけど」


「あれ(「太田総理」)は自分が今までやった番組の中では特殊だし、あんな疲れる番組も無いけど、すごく気に入ってる。伊集院にも1回でいいから出演してほしいな。スタジオでは一回2時間くらい収録するんだけど、ほとんど俺が喋ってるわけ。わーって喋ってると、「これは危ない」って自分でも思うのね。アドレナリンが出るというか」


「それで、やべぇやべぇって思いながらも止らないわけ。俺は核心にまで到達したい方だから
「あの番組は俺が言うことに対して、周りの政治家とかの反論があるのが前提なのよ。反論がないと俺の一人語りになっちゃうから」
「そこで(プロデューサーの)三浦チェックがあって、考査のチェックがあって、編集があって、何重にもストッパーがあるのよ。で、更に言うとテレビだから視聴率があって低けりゃ終わりっていう」
「最終的にうちのカミさんが見て、「何だあれは」っていう。放送までにたくさんの安全装置が働いて、それで助かってるんだよ」


太田は伊集院に対して、この番組に「引っ張り込んでやろうという思惑が最初からあった」というが、個人的には最もこの番組で、太田に対抗する論客としてふさわしい芸人は、水道橋博士ではないかと思う。
その博士は「WEBダ・ヴィンチ」の連載「本、邪魔か?」のいじめ問題をテーマにした回で、太田の「たけしの日本教育白書」での発言を引用している。(引用された全文はリンク先を参照のこと)


太田は、漫才ブーム以前は青春ドラマに感動していた、と語り、しかしビートたけしが出現し、それは綺麗事だとつっこんだ。そして彼は「世の中は綺麗事じゃなくて、熱血の青春ドラマの世界じゃないんだ、っていうことを教えてくれて僕らは開眼した」という。しかし、今の子供はその綺麗事を知らずに最初から本音しか知らない。だから危険なんだという。
そこからもっと追求していけばいいのに、知恵の入り口って凄く危険なんですよ。たけしさんがやったことは逆説なんだってことを気がつかないと、それをそのまま受け入れちゃうと、それで良いんだと思っちゃうじゃない?」と。


この発言に博士は共感を示しつつ、現在の太田の立ち居地の理由を考察している。

これは僕が常日頃、抱く思いと、全く持って共通する。
この世界に入ってから、俺より下の世代の芸人のたけしイズムの解釈が“嘲笑”でしかないことを何度も戸惑ったし、ビートたけしの逆説が分らない若者の多さには本気で呆れている。
それはサブカルチャー論にも共通する。
いつの間にか、サブがメインにあり、カウンターで発言すべきサブカルチャーが正論の如く流通している。
昨今の太田光が、実にお笑いにあるまじき、まともな正論をぶつ論客となっているのも、本来のメインカルチャーの方が脆弱すぎて、立ち居地としては、正論をぶつ方が、むしろ異端であり、カウンターであるからだろう。


これらのことを裏付けるように、太田自身も「hon-nin vol.01 」で松尾スズキとの対談で語っている。

松尾「芸人って、政治的にはどこにも与しない方が、楽なのに、話せば話すほど自分の政治的姿勢が固まってしまう面があるじゃないですか。その危険性は……?」


太田「それはよく考えますね。「太田総理」は、最初「嫌だ」って言ったんですよ。特番を二回やってからレギュラーになったんですけど、毎週なんて疲れるし、やるかやらないかであれほど迷った番組も無かった。で、その時思ったのが「オレたちひょうきん族」以降、自分たちも含めてすべてのお笑い番組は「ひょうきん族」と「天才かけしの元気が出るテレビ」の亜流だなと思っていて、いつかそうじゃない番組をやりたいと思っていたんです。そこで、お笑い芸人が政治の渦中に入る番組はまだ誰もやってないんじゃないか。たけしさんの「TVタックル」はあるけど、あの番組でのたけしさんは中立な立場でしょう?誰もやったことがないからこそ、もしかしたら面白いことになるかもしれない。そう納得して引き受けることに決めたんです」


松尾「たしかにドキドキ感はありますね。太田さん、どこ行っちゃうんだろう?って(笑)」


太田「それは自分にもあります(笑)」


松尾「『TVブロス』のコラムを読んでると、太田さんは共産主義の失敗をなんとか取り戻そうとしているように見えるんだけど……」


太田「よく左だと言われるんですけど、自分ではそんな感じもないんですけどね」


松尾「僕、共産主義ってすごく優しい考え方だと思うんです。それが失敗するのは人間が不完全だからだとしか言いようがないんだけど、太田さんはその不完全さを何とかして埋めようとしてるように見えるんだよね。だから「太田さんは優しい人だなあ」って。


太田「そうですか?(笑) もしそう見えるとしたら、世の中が優しくない方向に動いてるからじゃないかな。オレ、天邪鬼なんですよ。もしも世の中の流れが逆だったら、たぶん単なるひねくれ者なんです。で、世の中を引っ掻き回すことを面白いと思ってるんでしょう、きっと


松尾「そう考えると、ずっと一貫していますね」


太田「まあ、そうですね。お笑い芸人の感覚で世の中に茶々を入れている感じではありますね




*1:「TVブロス」の連載をまとめたもの