「お笑いウルトラクイズ」にみる芸人愛とその戦友意識


2007年まさかの復活を果たした「ビートたけしお笑いウルトラクイズ」。その番組公式本が5月に「非常識大百科」と題されて出版されている。なぜかひっそりと。
たけしとたけし軍団(+山本モナ)、ダチョウ倶楽部出川哲朗松村邦洋春一番林家ペー・パー子といった出演陣、制作者側からはテリー伊藤、甘利孝、財津功がインタビューを受け様々なエピソードを語っている。

ビートたけしお笑いウルトラクイズ」で、あれだけ理不尽で過激な酷いことをやらせれている芸人たちを見て、僕らが不快感よりも、どこかなんだかホッコリしてしまうのは、やはり彼らの強い一体感、仲間意識、いわゆる戦友意識が強く伝わってくるからだろう。
そもそもこの番組が誕生した経緯を見れば、それがよく分かる。

ダンカン:そもそもこの番組が始まったのは、殿が「林家ペーさんって面白いよな」と言い出したからでしたよね。
たけし:ペーさんをどうにかしてクローズアップする番組を考えよう、ということで始まったんだな。
           (略)
タカ:最初はペーさんを含めて光の当たってない芸人さんを表に出そうっていうのがコンセプトにあったんですよ。

そして、その空気を自然と作り出しているのが、たけしや、その側近であるたけし軍団のこの番組におけるスタンスであることは疑いようがない。

ダンカン:全員で同じようなリアクションをやりましょう、というチームワークのクイズもありますし。そういう時に一人だけトンデモないリアクションする人間がいると、やってる最中でも殿が「ハイ、お前帰って!」って。「お前、スタジオ呼ばないから」これは大変ですよ!


タカ:壮大なる集団のコントですから。オチに向かって全員一丸となるというね。だから、その最低限の決めごとが分かってないと、この輪には入ってこれない。リアクションに対するリアクション、周りで見ている側のリアクションというのもありますからね。全体が完成しないんですよね。……でも、あの番組で1回でもロケ行くと、先輩後輩関係なく「戦友」って絆が生まれますよ。ウチの事務所の後輩じゃなくても可愛がりたくなりますから。

そして、前述のコンセプトのとおり、「光のあたってない芸人」が表に出てくるようになる。
そこには芸人たちの友情の厚さと温かさが垣間見えてくる。


例えばこの男、出川哲朗の場合。
自分のレギュラー番組で、ゲストとしてやって来たダチョウ倶楽部に見せ場を奪われ始め、芸人として焦っていた時期、初めて「お笑いウルトラクイズ(第12回)」の出演オファーが舞い込む。出川は意を決してダチョウ倶楽部の楽屋を訪れると「これが最後のチャンスだから、もしこれでダメなら芸能界辞めて(当時付き合っていた)彼女と結婚します!」と宣言したという。それを聞いたダチョウ倶楽部の面々は、内心では「その他大勢に埋もれてあんまり目立てないだろうな」と思いつつも励ましあった。
結果、出川は初回から大活躍。

出川:たまたま初めて参加した時から殿に面白がってもらえてね。それが嬉しくて、終わってからダチョウさんに挨拶に行ったんです。リーダーが涙目になって「哲ちゃん、こんなに頑張るとは思わなかったよ。良かったなあ、今度からウルトラ仲間だよ」って喜んでくれてね。僕も感動して泣きそうになって、一緒にいた竜さんにも「本当にありがとうございました!」って言ったら「誰がこんなに目立てって言ったんだよっ! ふざけんなお前! オレの出番が減るじゃねえか!」と怒鳴りながら去っていきました。なんて人間のちっちゃい男なんだと(笑)。

出川斉藤慶子さんが「出川さんのこと大好きになっちゃいました」と言ってくれたので「お前、俺に惚れるなよ!」と返したら、殿が「調子に乗んな!」ってパーンッ!て叩いてくれて。
 その後、最後に一言お前にやるということになって、僕が「これからもよろしくな、タケちゃん!」とかなんとか言ったんですよ。そしたら、ひな壇にいた先輩の芸人さん50人くらいが全員降りてきて、みんなで囲んで僕をボッコボコにしてくれたんです。もう涙が出るくらい嬉しかったですね。「あぁ、これでやっと仲間として認められたんだ、ウッチャンナンチャンの連れの出川じゃなくて、芸人の出川哲朗として認められたんだ」と。(略)その後コマーシャルに入ってから、軍団さんとか「良かったなあ〜」と言ってくれてね。


あるいは、松村邦洋の場合。

松村:リアクションが上手にできなくて、たけしさんに怒られたことがありますね。「ナニ普通にやってんだ! 
ちゃんとしろ、この野郎!」ってね。(略)あの後、「たけしさんが軍団以外に怒ることは滅多にない。それは期待されている証拠」と芸人仲間から言われました。
だからあの時はうまくできなかった悔しさと嬉しさが混じり合って複雑な気持ちでしたよ。でも、嬉しさのほうが大きかったですね。


最後に、実に「お笑いウルトラクイズ」らしいエピソードをひとつ。

春一番ウルトラクイズでは、いろんな思い出があるんですが、どうしても思い出すのが竜ちゃんのチンポなんですよ。あるときの逆バンジーの企画で、竜ちゃんがスッポンポンになるって演出だったんですけど、うまく脱げなくて、それでその次の回でうまく脱げたときには出演者から笑いじゃなくて拍手が起きましたね。チンポが出て拍手が起きるってどんな大人だよ、みたいな(笑)。