草野仁が明かすオウム報道

間もなく最終回を迎える「草野☆キッド」は「さよならスペシャル」と題し、草野仁の人生を自ら語り振り返っていた。
その中で彼が長く司会を務めた「THEワイド」での「オウム報道」について、当事者ならではの臨場感あふれる語り口で話していた。

長くやりました昼の番組の「THEワイド」っていうのはですね、他のどんなニュース番組にも、あるいはどんな情報番組にも負けなかったと思うのは、やっぱり「オウム報道」なんですね。
1995年3月20日に地下鉄サリン事件が起きるんですが、伏線は当然その1年前の松本サリン事件です。
すぐに取材を開始して、当時、みなさん覚えてらっしゃるでしょう? あの近くに住んでいた河野義行さんが怪しい、と。
でも、そこに使われて、何人かの命を奪ったのが化学兵器サリンである、と。
そういうことが分かった瞬間、これはもう、河野さんの(個人でできる)レベルじゃないから、河野さんは疑いの対象から外さないといけないのに、長野県警はいつまでもいつまでも、半年経っても「次の正月には河野をパクる」などと言っているというような話が伝わってきたりする。
で、戦上でも使われてはいけないサリンが使われたってことは、サリンの専門家にちゃんと分析して調べてもらうしかない、と思いたちまして。
とすれば、アメリカの軍関係の方しかいない、と。行き当たったのがカイル・オルソンという生物化学兵器の専門家でした。
早速日本に来てもらいまして、細かく調べてもらいまして、分析して放送で言ってくれたことがあるんですね。
「なぜ、松本でサリンが使われたか。これは、草野さん、テストなんです! テロリスト達のテストなんです。次の本番は東京で必ずあります。だから気を付けていただきたいと思うのは、必ず東京で本番があるから、閉鎖空間、たとえば、地下鉄、あるいは新幹線、そういうところにはなるべく行かないようにしてください」と。
ちゃんと放送で警告を発して、彼はアメリカへ帰ったんです。

その後、その警告どおり地下鉄サリン事件が発生する。その疑いの目がオウム真理教に向けられる。
オウムの幹部らはその疑いを晴らすため、各局の情報番組、報道番組に出演していた。
草野が司会を務める特別番組も例外ではなかった。

そして、36.7%という驚異的な視聴率を獲りました夜の特番でですね、
オウムの科学省の村井が、何を思ったか、呼んできた専門家に、たぶん大したことないだろう、と侮ったんだと思いますが、「あのー、カイル・オルソンさんに伺いたいんですけど、私たちのプラントでは、ハステロイという金属を使ってるんですが……」って言ったんです。
そしたらカイル・オルソンが「ハステロイ?」(と、驚く)。
ハステロイこそ、サリンなどを作る時に使う合金であって、アメリカから外へ出してはいけない、禁輸製品として指定されているもので、それを使っているということはサリンを使っているってことになりますよ、みたいなことを言ったら、上祐が割って入って、「いやいやどうのこうの」って誤魔化そうとしたんですが、もう事実は特番を通じて伝わってしまった、と。