コロッケ 本物のニセモノになるための極意

7月11日の『ディープピープル』(NHK総合)でコージー富田とミラクルひかるを交えて深くて濃いモノマネ談義をしたかと思えば、17日の『ソロモン流』(テレビ東京)ではモノマネの「賢人」として密着取材を受けたコロッケ。
ニセモノだから小回りが利くっていう利点はあったかもね。マイク一本あればなんでもやりますよっていう強さはある」と胸を張り被災地でチャリティーライブを繰り返すコロッケ。
芸歴30年を迎えますます魅力的になっていく職人の、これまでなかなか明かされなかったものまね芸人としての秘訣の数々が両番組で語られた。

コピーとパロディー

ディープピープル』でミラクルひかるが自分の声質が変わってきて以前より微妙に似ていなくなったという悩みを打ち明けるとコロッケは自身のものまね芸の本質をつくようなことを語る。

俺は似せようって思ってないからね(笑)。

「聞けば聞くほど発見が多いから後から似てくる」のだと。

モノマネを大きく分けるととコピー派とパロディー派に分かれる。どっちを目指すかだよね。
ただ長年いろんな方を見てると、コピー派を目指してしまうと、ある時、ちょっと似てなかったりすると、周りのお客さんって勝手に「あれ?似てないな」「あ、他のも似てないんじゃない?」とか凄いね、恐ろしい状況に陥る。
ただそのかわりパロディ派っていうのは最初っから似てないと、最初っからけられる場合があるんだよね。「ふざけすぎ」「何やってんの?」「気に食わない」とかね。
でも声はね、ずっと練習すれば出るよ。諦めなければね。

コージーも「自分の声を知ったほうがいいね」と追随する。「自分の声を覚えて、自分の声を消す

自分の声に似てる人のモノマネが多分一番得意になるんだけどそこを排除しないとダメなのよ。
(モノマネしてて)自分で気がついちゃう。「あ、今、自分の声だ」って。

そして選んだのが「パロディー」だった。

そっくりすぎるとホンモノの歌手の人たちもツッコミようがない。「おい!」って言えない。「お前いいかげんにしろよ」とも言えない。あと、絡みようがない。それは本人が言わないようなギャグとか歌わないような歌い方をすることで「それは違うわー」とか「そんなのやってないし」とか(言える)。そこはモノマネをする芸人としてどっちが正しいかっていうのはこれ、永遠のテーマで分かんないんだけど俺はどっちかっていうと、正統なほうじゃなくズレたほうで(やっている)。

ソロモン流』でも「コピーとパロディー」について触れている。
そして自分がパロディーを選んだことの意味を語る。

パロディーのほうは本物がやらないことをやることでそっちに興味を持ってもらえる。五木さんでロボットをやる必要性は全くないじゃないですか(笑)。だから、必要性のないところがみなさんが楽しんでいただける所かもしれないですね。

コロッケの技術論

ディープピープル』では「ネタ帳なんて書いたことない」というコロッケのモノマネの具体的な技術論にも話は及ぶ。
■内面を似せる

基本的内面的なことを先に大事にしなきゃいけない。たとえば、美川さんは何でもいいから不機嫌ではないけど不機嫌なような気がする。いつも何かに疑問をいだいてるようなイメージ。

さらに、美川は日本舞踊の経験がある。だから、所作にそれが現れる。それを表現しなければいけないのだ、と。


■顔芸
コロッケといえば顔芸。それはどのように生まれたのか。

昔はホント、ぬるま湯につけて、顔を動かして練習してた時期もあるの。
一回ぬるま湯につけて、顔をひと通り動かしていくのよ。そうするとすっごい動くようになるの。
今だから話すけどね、耳動かそうと思ったら頭が動いちゃったんだよね(笑)。
へ?頭動いたほうが面白いかも!って(笑)。
で、どこに力をいれれば頭が動くんだろうってのを(やって)見つけた。


■リニューアル

一般的にリニューアルモノマネっていうか、エコタレントっていう言い方をあえてすると、自分の中で新しく覚るものは覚えていきながらも、持ってるものを膨らませることによってまたすごく便利になっていくじゃん。
だから、持ってるものをどう変えるか、みたいなね。あと、最近の人はどういうふうなモノマネが好きなのか、とかね。だから、モノマネが得なのはいろんな曲をいろんな人で歌うことができるから、最近の曲を誰かで歌うことで新しく聞こえる。森山直太朗さんがEXILEの曲を歌うとどうなるか、とかさ。
そういうことでいくつかやっていくと、あ、こんな感じもあるなとか(発見がある)。

コージーも「違う人の曲でやるほうが似て感じる」と同調する。

だから徳永英明さんの曲を歌うより、徳永さんで「ぞうさん」を歌ったほうが余計似て聞こえる、とか。「そこだね、特徴は」っていうところで歌うから。


■フェイント
ソロモン流』でも「一番自分の秘密を明かすとしたら、フェイント」と芸の真髄を明かす。

たとえばカメラがここにあるとして、直接見るより、そのまま(1回)通りすぎてこう来た(目線を戻した)ほうが、見てるお客さんは「おお」ってなる。それは僕、最初に覚えたのがゲイの人たちと一緒に働いていて、女装家の人たちってそういう余計な動きが多いんですよ。そういうのに気付いて僕はちあきなおみさんをやるときも通りすぎてから戻ってくるようにしたんですよ。それをやるようになってからだいぶ変わりましたね。

コロッケ家家訓

母親の強い反対を押し切って上京したコロッケ。
ソロモン流』の船越英一郎との対談では「辞めたい」と思ったことは「一切無い」と言い切る。「ものすごくプラス思考なんですよ」と。

(その原点は)母親かもしれないですね。すっごい貧乏で大変だったんですね、小さい時。普通、お米がないって言うと落ち込むじゃないですか。でもうちの母は笑ってましたからね。

コロッケの実家には子供の頃から「あ・お・い・く・ま」という家訓が貼られていたのだという。

「あ」 焦るな 
「お」 怒るな 
「い」 威張るな 
「く」 腐るな 
「ま」 負けるな

子供の頃はその真の意味は分からなかったが「初めて噛み締めたのが、モノマネ番組で優勝した時」だった。

人に対して「負けるな」じゃなくて自分なんだ、と。自分が、威張るな、焦るな、怒るな、というと全面的にってことになりますよね、自分以外の皆さんに対して。そうなってからすごい気が楽になって穏やかになりましたね。

芸歴30年、年齢も50を過ぎたコロッケ。

これから大人として男としてどんどん楽しくなっていくなって。だから今まで以上にふざけ出すと思いますね。
そんな真剣にやることじゃないと思うんです。極めるってことは真剣にやると極められないんじゃないかって思うんですよ。楽しんでないと