『それでも、生きてゆく』が踏み込んだ領域

フジテレビのドラマ『それでも、生きてゆく』は『鈴木先生』(テレビ東京)同様、その圧倒的クオリティで間違いなく2011年を代表するドラマになるはずです。が、これまた『鈴木先生』同じく、視聴率は芳しいものとは言えません。もったいない。
「ドラマはつまらない」なんて散々言われながらもこうした上質なドラマは作られているのです。見られていないだけで。今期のドラマ2トップがこの『それでも、生きてゆく』と『勇者ヨシヒコと魔王の城』(テレビ東京)であることはドラマファンの方なら納得してもらえると思いますが、この2つのドラマの振り幅だけをとってみてもいかに日本のドラマも豊かであるか分かると思います。


このドラマは10数年前に起きた幼女殺人事件の被害者家族と加害者家族の物語です。
妹・亜希を殺された兄・洋貴(瑛太)と弟の耕平(田中圭)。その母親が響子(大竹しのぶ)。
事件を起こした文哉(風間俊介)の妹・双葉(満島ひかり)と事件直後に産まれた妹・灯里(福田麻由子)。その両親(時任三郎風吹ジュン)。
どちらの家族も事件のことに蓋をして心の奥に闇を抱えたまますごしていましたが、被害者の兄・洋貴と加害者の妹・双葉が出会うことで、少しずついびつな歯車が動き出します。


このドラマの凄いところは、こうした重くシリアスなテーマが全体を覆っているにもかかわらず、同時にコミカルな空気が常に漂っているということです。
特に満島ひかりを中心とした、対瑛太、対大竹しのぶなどのシーンは展開する状況がどんどん深刻になっていくのに、時折思わず吹き出してしまうような言い回しやぎこちない仕草で人間の機微が見事に描かれています。
不穏さと滑稽さの同居。
脚本、演出もさることながら抜群のキャスティングで配された役者陣それぞれの演技がどんどん化学反応を起こしてもの凄い熱量になっています。
ただ、こういった側面はなかなか文字では伝わりにくい*1ので、一番わかりやすいストーリー上重要な3つのシーンを紹介したいと思います。
なので、思いっきりネタバレです。
録画していて後から見る、DVD購入を決めているという方は読まないほうがいいです。
この記事は、「ネットで評判になってるし、最後の方だけでも見ようかなぁ」と迷ってるような人や、すでに見て終盤に向けて気持ちを高めていきたい、というような人向け(というか大半は自分用の記録のため)のエントリです。

*1:それこそ映像作品でしかできない表現!

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