社会風刺と笑い

先日放送された『探検バクモンSP』は「沖縄入門」と題して「知っていそうで知らない沖縄」を特集。
バラエティ番組として初めて米軍嘉手納基地に潜入したりと貴重な映像が放送されていた。
その中で現在では、スリムクラブやガレッジセールなどを輩出する「沖縄の笑い」についても触れられていた。
まず三線片手に沖縄と日本を痛烈に風刺した照屋林助が、その第一人者として紹介される。
そして現在その遺伝子を受け継ぐお笑い集団として「お笑い米軍基地」の映像が流れる。


「お笑い米軍基地」は沖縄の演芸集団FECが手がける舞台(公式HPはこちら)。沖縄の米軍基地などの社会問題を「お笑い」というメスで斬るスタイルだ。
たとえば番組で流れたコントはこんなようなものだ。
タイトルは「ジャパネットおきなわ」。

社長: 今回皆様にご提供する商品はこちら。沖縄の「アメリカ軍普天間基地」です!
アシスタント: ちょーーと社長、これ基地再編で話題の商品じゃないですか!
社長: そうなんですよ。これまでは米軍基地のほとんどを沖縄が独り占めしていたので今回特別に本土の方に分けてあげようと思いましてねー。
アシスタント: さすが、社長!
社長: 今回はこの普天間基地に、たまに墜落して炎上するCH53大型ヘリもつけちゃいまーす!
アシスタント: おお!
社長: さらに今回だけ!海兵隊6000人もつけちゃいましょーう! お値段たったの8000億円! もちろん消費税・送料はいただきません。送料は別途国民が負担します!
アシスタント: みなさん、今すぐお電話を!

企画・脚本・演出を務めているのは小波津正光(まーちゃん)。
芸人になるために上京していた頃、米軍基地に隣接する沖縄大学に米軍ヘリが墜落炎上。沖縄で大きな問題になった。しかし、全国紙の一面はアテネ五輪の聖火が点灯のニュース。
それに怒りを感じ、漫才のネタにした。
アテネでは聖火が燃えているが沖縄ではヘリが燃えている」と。
それがきっかけになり「基地を笑うため」に沖縄に帰る決意をした小波津。

小波津: 初めは怒りしかなかったんですけど、僕ら芸人からしてみたらオイシいと思ったんですよ。これを俺らがネタにしないと誰がやるんだ、と。
俺は沖縄の人間。どっちかっていうと基地があることに慣れてしまってい部分もあると思うんですよね。本土のニュースで流れるのは「沖縄米軍基地反対!」ってやってる姿ばっかり流れるけど、実は「反対!」って言っていながら、基地の中で働くことに憧れていたり、「反対!」って言った後に、基地の中のお祭りに遊びに行ってみたり。矛盾なんです。でも僕らは矛盾と感じていない。(基地がある歴史が)60年以上あるから、その矛盾が同居している

彼らのコントの映像を見た上で、その話を聞いていた爆笑問題太田光は自身も「社会派」と言われることもあるとおり、共感を示しつつ、社会風刺の笑いの本質とある種の課題を語る。

太田: 俺も社会派っていわれて、それこそ世の中の事件を取り扱ってコントをやってたの、最初は。
で、俺達もそうなんだけど、笑っちゃうと一つ済んじゃう笑い事にしちゃうと一個なんか成立しちゃう。でも根本の問題の解決にはならない。(略)安心もするけど、ちょっと思考停止だよね。
「笑い」ってことは一つ許容するってことじゃん。だからお前がやってるさ、ジャパネットおきなわ。あれはひとつの許容なんだよ。受け入れてるの。笑いにして許してるんだよ、実は


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