荒川洋治『心理』より
高橋源一郎がここで紹介している萩原朔太郎賞を受賞した詩。
あんまり感動したので孫引き。
『アフガニスタン文学』の存在を調べた
伝える本は、かけらもなく
クシュハールハーン(一七世紀)
ラフマーン・バーバー(同)
ハーミッド(一九世紀)という詩人の名前しかわからず
アメリカ同時多発テロは
数カ月もたてば忘れるとぼくは直後に思った
忘れるあとのことを必死に考えれば
『アフガニスタン文学』を自力でさがしだし
それを記憶に残すことだけが重要だと思った
ぼくは詩や小説のことは忘れないのだ
本屋さんにどんな本が置いてある
子供は生まれて最初に何を読む
それだけでも知りたいと思うとき
ぼくは日本で最初の『アフガニスタン文学者』
になろうと思ったのだ
(「美しい村」)