ビートたけしとフライデー事件(3)


■事件勃発


「大変だよ! 殿が捕まった!」
朝早く、井出らっきょから電話を受けたつまみ枝豆は、不審がりながらも言われたままテレビをつけると「たけし逮捕」を伝えるニュースが流れていた。
枝豆とらっきょは自分たちだけが行けなかった悔しさと、記者会見でフライデー記者たちが「こうやって痣ができた」などとやっているのを見て頭に来て記者会見場に乗り込もうとしていた。
その時である。
「おう、悪かったな」たけし本人から電話がかかってきたのだ。「悪いけど、辛抱してくれよ」
間一髪のタイミングだった。


たけしの自宅に集まったのは11人。
たけし軍団」の柳ユーレイ、大森うたえもんガダルカナル・タカグレート義太夫、ダンカン、そのまんま東松尾伴内*1、「たけし軍団セピア」のサード長嶋、キドカラー大道大阪百万円、おぼっちゃまである。
彼らは、タクシー3台に分乗して講談社に午前3時ごろ到着。
当時編集部には、編集長の須川、風呂中次長、増子ら10名が残業していた。
須川編集長はたけしの姿を確認するとすぐに隣接する大塚署に駆け込み通報。
たけしは先頭に立って編集部室に乱入*2、出入り口に置いてあった傘を手に持ち、それで机を叩きながら「増子はどいつだ? 増子を出せ!」と怒鳴る。
たけしの近くにいた副編集長武田に「興奮しないで下さい。ここは編集部ですから外へ出て話をしましょう」と言われると、たけしは傘を振りかざそうとするが、軍団に制止され傘を落としたため、素手で顔面を殴打する。これを契機に軍団も素手、傘、消火器などで暴行を開始。
編集部員らに対し、無差別かつ一方的に激しい攻撃を加えた。
たけしは「増子はどいつだ」「俺は皆と一緒に刑務所に入る覚悟で来たんだ!」などと叫び増子を見つけると、さらに暴行を加えた。
約10分後、大塚署員が駆けつけ暴行の現行犯でたけしとたけし軍団は逮捕された。
たけしはこの時、刑事に「手錠は要らないですよね」と軍団を気遣った。
「悪かったな、おまえら」階段を下りながら軍団に小声で言った。「土方をしてでも、お前らの面倒は一生見るから」


以上が「フライデー事件」の一応の顛末である。
しかし、ここからこの事件は奇妙に歪んだ波紋を投げかけることになる。
むしろ、この事件の本質はこの後にこそある。
                                  (つづく)

*1:※当時軍団で参加しなかったのは井出らっきょ(愛人の家にいて連絡がとれなかった)、つまみ枝豆(連絡の電話が受話器をとった瞬間に切れ留守だと思われた)、ラッシャー板前(痔の手術で入院中)の3名

*2:そのまんま東はこの時の模様をネタとして「怖いからエレベーターに最後に入ったら、扉が開くと先頭になってしまった」などと語っている