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松本人志と「大日本人」とこの後


松本人志の「大日本人」プロモーション行脚でもっとも印象的だったのは意外なことに「SmaSTATION」だった。
それは香取慎吾が、「お笑い芸人」としては大好きだけど、「映画」という舞台に行ってしまう松本に対しての戸惑いと不安を感じるという、大多数の松本人志ファンの立場に立ってかなり率直な質問をしていたからだろう。


まず「映画は撮りません。映画でやれるのは「お笑い」ではなく「喜劇」なんです。喜劇とお笑いは全然違う」という松本自身の著作「愛」(1998年)からの言葉を引き合いに出し、香取は「僕は松本さんの事が好きです。一番最初の会見を見たときにショックだった。松本人志という人は一度本に書いたり、口にしたことを嘘をつくというかそういうことは凄く嫌いな人なのではないか?」と問う。

松本「なるほどね……。僕ね、めっちゃ嘘つくよ(笑)。いや、芯はちゃんとあるけどね。
でもぉ、それは映画でお笑いやると喜劇になってしまうという考え方はあったけども、映画でホントに面白いことをもしかしたら伝えられるかもしれないぞ、と思った場合、わざわざ過去の自分の言ったことにとらわれてる場合でもないっていうのはありますよね。
……なんとか今、逃げ切った感じ(笑)」

そして映画の内容についての質問に移る。「何故ヒーローものなのか?」という問いには「結局は“幼児性”だと。やっぱり自分で自分を“幼稚”やなと思うし、でもその幼稚さの中にテクニックが加わった時に、凄い面白いものが出来るんじゃないかなあって」と答える松本。
香取が撮影の状況を聞きながら「映画のスタッフとはぶつからなかったか?」と訊く。

松本「いや、ぶつからないよ。新しいことやるときには俺はホントにスッゴイ謙虚に、基本的には向こうの言うことに全て従うようにしてるんで」


「この後も映画作りますか?」の問いには、

松本「だから一本目がどうなるかって事もあるし、とにかくね、なんとか初日の感じで赤字は逃れたみたいよ。逃れられそう。
だから(2本目が見えてきた)かなぁ……。あとは黒字になった分次につぎ込めるから」

番組冒頭でも「今日の客入りを見てホッとした」と語っていたように、不安を隠そうとしない(隠し切れない)松本人志の姿はとてもチャーミングだと思う。恐らく、松本はその映画の内容から興行的にも一般的な評価の面でも“負け戦”は覚悟しているだろう。しかし、好きなことをやって、莫大な制作費をつぎ込んでもらった以上、自分が「裸の王様」のような立場になることをある程度受け入れたのだと思う。それは彼が“丸くなった”結果かもしれないが、むしろ逆に、松本が“戦う”ための彼なりに導き出した手段なのだと思う。

松本「でも……毎回こんな感じじゃないと思うよ。(2本目は)すっごい単館(上映作品)みたいな、そんな感じかも。
僕ねえ、ちょっと冗談抜きでいろんな事やりたいからAVとか撮ってもおもろいかなって。2本目。ポルノに挑戦とか。そんなこともやってみたいなあって。「そんな体位で!」みたいな。これは誰も手つけてないところかなって。
あと、なんか時代劇をドキュメンタリーで撮ってみるとか。あの、時代劇なんだけどカメラが何故かある。「今から討ち入りに行ってきます」ってカメラ目線で言う、とかね。
まあでもそんなんは、映画じゃなくてもドラマとかでもできるかもしれへんしね」

と、とにかく意欲的な松本の姿が印象的。

松本「ホントのこというと俺は出演はしたくなかったから……。映画監督だけをやってみたかった。
それを吉本に言うと、それではさすがに金は出されへんって。そこはすごいシビアな大人の話で……」

ここから読み取れるのは「大日本人」は「働くおっさん劇場」などに出演しているような素人(に近い)俳優で撮りたかったんだろうな、ということ。
どうしても松本が演じると、ある種の「意味」が生じてしまう。特に今回のような「フェイクドキュメンタリー」という手段をとるとなおさらだ。それを嫌ったのだろう。

香取「視聴率は気にしますか?」


松本「昔よりは気にするかなあ……。昔はホントに気にしてなかった。この5年、10年でやっぱりある程度は気にしないと一緒に番組作ってるスタッフに対して失礼なんじゃないかっていう気が。ちょっと大人になったのかな。多少考えるね。やっぱその番組でご飯食べてる人もいるわけやから。
そりゃやっぱ続いた方がいいし、ある程度は意識しないと、まあ、数字とるためにそればっかりにいくっていうのは違うと思うけど」


香取「コントがやりずらくなってきた?」


松本「確実に昔よりも規制は厳しくなってるし、クレームみたいなのも増えてるみたいやから……」


香取「じゃあ、このまま映画に行ってしまうのか?」


松本「あのね、それは自分で決めるもんじゃないような気がするね。周りの人が決めるというか、どうなっていくのか俺も楽しみにしているというか。自分で選べる感じではないね。
でもね、昔は「そんなこといわれたらテレビで面白いことなんてできへんやんけ!」ってちょっと不良芸人になりかけたこともあったんやけど、でも規制が厳しいからその合間を縫って法ギリギリみたいな、そんなところで笑いをやっていくっていうのも、それはそれで楽しくはあるけどね。何でも好きなことやっていいぞっていうと意外とお笑いって苦しくなっていくから。ちょっとくらい規制があるほうが実は楽しいかもって最近思うようになってきましたね」


番組は視聴者からの質面メールを紹介していく。
「俳優・香取慎吾」のイメージは?」という質問から、松本自身のドラマ出演の話題へとつながっていく。

松本「でもねえ、香取君やっぱ、器用すぎる。俺はもうちょっと素のおっさんみたいなのが好きやから、そういう素人みたいな人を(演出)するのが好きやから……。器用すぎると、負けてしまうから、俺が。あの、演技が巧い人って、俺は恐いのよ。だって俺、演技できへんもん。(この映画は)自分がやりやすいようにやってるから(よく見えるの)であって、俺がもし月9でも出たらボロボロやで。見てられへんと思う。大根すぎて」


香取「昔、中居君とドラマやりましたよね? あのドラマはどうしてやったんですか?」


松本「(笑)なんやそれ!批判か?
あれは、今までにないドラマをやってみたかったのよ。一生懸命真面目にやる所はやって、でも1シーンはアドリブで遊べる所を絶対作ってくれって。そしたら俺、やってみたいって。だから中居君も凄い上手かったから、半分決めて半分はもうお任せみたいな。すごいだからドラマをやったっていう意識は正直本人の中にはないんやけどね」


香取「今後(ドラマ出演は)ありますか?」


松本「どうかなあ?100%ないっていいきれるのは恋愛ドラマはないね。でもそれ以外は100%ないとは言い切れないね。やっぱ笑える部分がなかったら嫌やけど、笑える部分があるのなら完全否定はしないかなあ」


「相方浜田雅功の今後の映画出演はあるのか?」との質問に。

松本「(浜田とは)コントとかの方がいいかなあ。最近妙に一人でやってる感じが印象ついてしまってだからまた映画じゃないかもしれないけどダウンタウンでなんかやりたいなって。なんかダウンタウンで新しいことを


香取「二人はずっと一緒ですか? ダウンタウンはどうなるんですか?」


松本「でも、俺は「映画監督」になるるもりはないし、この先、もしなんぼか撮ったとしてもそれだけっていうバランスは絶対悪いから、テレビの仕事はしたいと思うし、やっぱり好きやから、お笑いが好きやし、やっぱり二人でやっていくことは必要かなあ」


香取「過去に解散を考えたことは?」


松本「いや、それはないかな……。なんかそっちの発想にはいかないね」

大日本人」を境にして「ビジュアルバム」完結以降、止りかけていたかのように見える松本人志あるいはダウンタウンが、再び劇的に動き始めるのか。その期待感だけでワクワクしてしまう。