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「ボーイズ・オン・ザ・ラン」〜童貞作家寺坂直毅(イマヒガチルドレン)の恋

「現在日本でお金でおっぱいを見せる女性は何人いるのか?」という調査に名乗りを上げたのは放送作家、寺坂直毅(27歳)。

この男、今回のリサーチに並々ならぬ情熱を持っていた。なぜなら彼は童貞。
「なんで27歳にもなって童貞なの?」の問いに「一番大きい理由はタイミングだと思います」と言い、長々と童貞らしい理屈っぽい発言をする。
童貞である彼は、成人雑誌ですらあまり見たことがない、性に対して潔癖な考え方の持ち主で、おっぱいで稼ぐ人への嫌悪感が人一倍強い。
なんでおっぱいを出すのかの理由を探るため直接おっぱい産業で働く女性に取材を試みる寺坂。
この取材の過程で一人の女性と出会ったことで、この企画の様相が大きく変わっていくことになる。


(注:ここから重大なネタバレを含みます!)
それが、ヘルス嬢のさおりという女性だ。

彼女の話を聞くうちに、彼女に歌手になる夢があることや、田舎が近いこと*1などを聞き次第に打ち解け、彼女に惹かれて*2いってしまう。
彼女がお金でおっぱいを見せることへの嫌悪感、そんな彼女に男として意識してしまう特別な想い。
相反する感情が寺坂を苦しめる。
ここまでが前編。


後編では「最大のおっぱい産業」であるアダルトビデオ業界へ取材。
そこであるAV監督に話を聞き、AV女優のおおよその人数を教わった時点で、当初の企画は一応の終了となった。しかし、この作品の真骨頂はその後日談にあった。
AV監督への取材の中で、「おっぱいを(好きでもない人に見せるのは)罪ではないんですか?」と食い下がる寺坂に、監督は「胸を出す女性は好きにならないんですか?」と問う。すると寺坂は、溜めていたヘルス嬢さおりへの想いが関を切ったようにあふれだす。

寺坂は最後につぶやく。
「でもまだ怖いんですよ」


監督はそんな寺坂を見かねて一人の元AV女優を紹介する。
それが伝説のAV女優夏目ナナである。

この二人の対話は実に胸に迫る名シーンだった。
夏目ナナの愛が、童貞の心を解きほぐしていく。


話を聞くうちに夏目ナナが「いや、私エロの感情ってなかったですね。めっちゃ嫌いやってん、エロが」と言うと「それは僕の今の感情と一緒ですね」と途端に饒舌になっていく。

寺坂「僕はいろんな人に取材をしてきたんですけど、実は経験がないんですよ。童貞なんですね。あそこも出してないんですね、女性の前で」
夏目「出してみたら?」
寺坂「えぇ〜、そんなの無理です」
夏目「なんでなん?」
寺坂「絶対見せられないです。で、本当に胸を出すっていうのが罪悪感というか、罪というか、そういうふうに思っていて……」
夏目「あのぅ、うち、お母さんが結構堅い人だったんで、女の子は赤ちゃんを産む為にセックスをするから、それ以外でやっちゃいけないっていうのを植え込まれてて」
寺坂「そうです! そのとおりです!」
夏目「結構その男の人と付き合うときも、ああ、この人とまたセックスせなあかんのかって、じゃあ、付き合うのやめとこっていう観点で、結構付き合う、付き合わないを見てたりとか」
寺坂「それは正しいですね(嬉)」
夏目「正しいですか? いやでも、私それ間違ってるって気づいたんですよ」
寺坂「えーー、だってどう違うんですか?」
夏目「あんね、人間怖いでしょ?」
寺坂「大嫌いです(即答)」
夏目「そうでしょ。それはね、セックス嫌いと一緒なんですよ」
寺坂「へぇー、そうなんですか」
夏目「私もそうで、セックスってね、なんなんだろうって考えたことがあって、あれってね、人間のコミュニケーションやと思う、私」
寺坂「はぁ〜」

夏目ナナは、親身になってどんどんと核心に迫っていく。

夏目「おっぱい見て興奮しないですか?」
寺坂「うぅぅぅん」
夏目「しますよね? きっと自分を抑え込んでる部分があると思う。……何でなん?」
寺坂「何か悲しくなるんですよね」
夏目「私、そんな寺坂さんを見て悲しいわ」

寺坂「何でですか?」
夏目「何でそうなったん?」
寺坂「いや、それはですね……」

そして、ついに心の奥に閉ざされていた過去が明かされていく。

寺坂「中学までは多少元気で普通の子と同じように生活をしてたんですよね。
中学2年のときに同級生の幼なじみにイジメられまして、強く蹴られたりしても何も言わず泣いてたんです、家で。
そしたらある同級生の男の子が「お前のことが好きなんだよ」って言われまして、僕は、男に告白されまして、ホントに学校というか人がなんか怖くなって、一切それから高校卒業するまで誰一人ともしゃべらなかったんです。
こうやって1対1で女性と話してること自体が正直僕は緊張して怖い」

夏目「私も寺坂さんと一緒であんまり自分が傷つきたくない人種」
寺坂「僕、憶病なんですよ」
夏目「うん、私も凄い臆病。寺坂さんタイプはやっぱり似てる所があるから…」
寺坂「ですよねぇ〜!」
夏目「(笑)」
寺坂「僕ははっきり言ってそう思ってます、さっきから」
夏目「だからなんかこう『バン!』って壁を破らないとちょっとずつとかいうタイプじゃないかもしれないですね」


手坂「あの……、あの是非ですね、あなたの胸を見せてもらえたら……」
夏目「ダメです!」

土下座までして懇願する寺坂。
「だってそうじゃないですか。私はそれだけのギャラをもらってお仕事をしてきたんですよ。この身体を武器にしてきたわけですよ。だからそれは今までDVD買ってくれたお客さんにも失礼だし」と安易な寺坂の要求を毅然と断る夏目。
そして、夏目は寺坂の固まってしまった心を開かせるひとつの方法を思いつく。


夏目「私にその神々しいポコチンを見せてください。お願いします」
寺坂「それはちょっと、ホントに、あのぅ〜、僕、真性包茎なんですよ」
夏目「(笑)」
寺坂「だから…」
夏目「どんなんか興味ある」
寺坂「いやぁ、もうホントに」
夏目「むいてあげる(笑)」
寺坂「わーー、ちょっとホントに」
夏目「あははは」

寺坂に足らない勇気。それのことによって出来てしまった分厚い壁。
それを打ち破るきっかけとして、夏目は彼の最も恥ずかしいものを覗きこむ。

寺坂「27年間生きてきてこんなことはもう、何かパッと光が見えたというか」
夏目「なんかなりそうでしょ?」
寺坂「なんかいろんな人に、ちょっと変わったんですよって言いたい、言って回りたいくらい(涙目)」
夏目「ふふふ(涙目)」
寺坂「凄い壁を破った感じはしてますけどね」


このあと、寺坂はヘルス嬢さおりに再び逢いに行く。
そして、自分自身の想いを告白する。
その結果も含め、この珠玉のドキュメントは、DVD等、映像でご覧ください。

*1:ここでも寺坂はデパートの話へ持っていく

*2:彼女は決して美人でもないし、発言もちょっとバカっぽい。歌も特別上手くはない気がする。たぶん、彼が彼女に惹かれた理由は、ただ単に初めて面と向かって自分と間近で話してくれた女性だった、という童貞をこじらせてしまった人にありがちな理由ではないかとは思う。