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木皿泉がベールを脱いだ


木皿泉といえば、現在活躍する脚本家の中で、最も重要な人物のうちの一人(一組)だ。
やっぱり猫が好き「すいか」野ブタ。をプロデュース」「セクシーボイスアンドロボ」など個性的な作品を発表している脚本家だ。
しかし、その重要度に反比例するかのように「神戸在住の男女の共同ペンネーム」であること以外、ほとんどがベールに包まれている。
しかし、ついに「小説TRIPPER 12/30号」で「脚本という表現」という特集の中で、ロングインタビューを受けている。
自分が知る限りでは、最長で、しかも写真入りの大変貴重なインタビューだと思う。


木皿泉というのは元々男性の方のペンネームで、彼は漫才作家でテレビの構成もしていて、すでに有名だった。
女性の方が、NHKのラジオシナリオコンクールで賞を取り、その打ち上げで二人が初めて出会った。
その頃ちょうど男性が受けていたNHKの単発のテレビドラマの脚本を一緒にやらないかと持ちかけてその関係がスタートしたのだという。
当初は、同じワープロを使って、お互いが書いた上から、どんどん書き足していくというやり方で脚本を書き上げていった。

(女) 「最初は私の直観で始まるんです。こんな感じの話にしたいという。すると、彼がそれならこういうテーマが使えるとか、こんな世界観でいこうとか、どんどんアイデアを出してくれるわけです。で、あーだこーだと話し合った後、彼はいろんなところからネタを仕入れてきて、資料をコツコツ揃えてゆく。その間に私はゆるやかな骨組を考える。構成というほどカッチリしたものではなくアドリブを挟み込める余地のある枠組。これでいけそうだなと確信が出来たら、私がガーッと書きはじめます。途中、詰まっても原稿は見せない。口で、詰まっているところを説明する。ここが不思議なんですが、彼は原稿を読んでないのに実に的確で思いもよらない突破口を教えてくれるんです」

こうして始まる彼らの脚本作り。ところで木皿泉は『野ブタ。をプロデュース』や『セクシーボイスアンドロボ』など原作付きのものも多い。

(女) 「原作者が一番大事にしていることだけは絶対に外さないでおこうと自分では思っているんですが。観ている人は、そうは思えないでしょうね。私は、その人のオリジナリティは、ストーリーにあるとは思ってないんです。細部にある。でもそれは構成し直した途端に意味が消えてしまう。だから書いた人のエネルギーが一番感じられるところを探して、そこんとこだけは外さない、というか、そこんとこに共感できない原作物は引き受けません」


二人は共同執筆について問われ以下のように答えている。

(女) 「彼は、ここは面白くなるとか言って、わずか数行に、ものすごく時間をかけるんですよ。言葉をとても大切に選んでゆくんですね。笑いって、こういう地道で繊細な作業がないと生まれないんだと、ものすごくびっくりしました」
(男) 「ボクはコツコツやるタイプ。この人は、ガーッとブルドーザーみたいにやっていく人です。ボクは男だからでしょうか。少しでも論理的におかしいところを見つけると、そこでハタと筆が止まってしまう。でも、この人は平気なんですよ」
(女) 「私は、お客さんにバレなければいいと思っているんです。見ている人が気づかなければOK。ドラマを見ている人の気持ちが止まってしまうようなウソは絶対にダメ」

二人のこうしたタイプの違いがドラマに絶妙な立体感を与えていく。

(女) 「私しか書けない内容は、この世にはないんです。でも、私達にしか出来ないやり方というのはあるんだろうな、と思うわけです。それは日々改良を重ねてきた工夫だったり、二人でつくってきた言語感覚だったり、そういうものは教えたくても教えられないものとして私達の体に残ってるわけです。それが個性なのかなぁと思うんですが」
            (略)
(男) 「いかに人に伝えてゆくか、というのが我々の歴史であり個性です」


この他にも「私達が書きたいのは、セリフじゃなくてシーンです」とか、何故、彼らの作品には“いい雰囲気”の大人たちが出てくるのか、など興味深い話が満載で、ドラマファン必読のインタビューである。

(女) 「本当は『すいか』の基子を最後にもっと上のステージに引き上げるつもりだったんですよ。でも結局出来なかったんですよね。 (略) 今いる位置をちょっとだけずらして、ほんの少し生きやすくなっただけ。でも今はそれでいいのかなと思っています。別に飛ばなくてもいいかって。地べたで生きやすい方法を見つける方が、今の人には必要かなって。お話の中の人を、いかに自由に生きてゆけるようにするか。私達が書けることって、それだけですよね」


ところで、彼らのの新作を心待ちにしているドラマファンは僕も含め多いと思う。そんな方々に朗報である。3年越しの劇場用アニメの脚本が最終段階に入っているのだという。
他にも「愛と暴力」の話というアクション映画の脚本も執筆中とのこと。
果たしてどんな作品になるのかものすごく楽しみだ。


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