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『アメトーーク』がどうしても譲れなかったこだわり

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いまやバラエティ番組を代表する番組となった『アメトーーク』。
クイック・ジャパン82号」によるとこの番組には、作り手にとって、どうしても譲れないあるこだわりがあったのだという。
そのこだわりを実現するために、プロデューサーの加地はある工夫をした。
それは「スタジオロケ」という収録スタイルである。


ところで辻稔という方をご存知だろうか。
めちゃイケ』や『内村プロデュース』、『ロンドンハーツ』など数多くの番組を担当するカメラマンだ。
本番中、時折、演者からその名を呼ばれることからもその信頼度の高さが伺え、彼のブログを読んでもお笑い番組や、芸人に対して深い愛情を持っているのが良く分かる。 
そんな辻が前述の「クイック・ジャパン82号」における特集「TV of the Year 職人の視点」の中でインタビューを受けている。
日本のバラエティ番組におけるカメラマンの重要性について「QJ」は以下のように指摘する。

90年代以降のバラエティ番組は、「カメラワークの時代」と呼んでも過言ではない。
演者の動きは演出はもちろん、その場の空気にも即座に対応して、まったく新しい笑いを生み出すカメラワークはバラエティ番組の可能性を飛躍的に高めた。


そんなカメラマンの中でも日本を代表するひとりである辻が、笑いを生み出すカメラワークを得たきっかけはどのようなものだったのだろうか。

『とぶくすり』という番組のトークコーナーで、岡村(隆史)くんの口が臭いってことが話題になったときがあって、そのときに僕が口元をアップで撮ったんです。そしたら岡村くんが嫌がって口を隠して、じゃあってことでいったんカメラを引いて、手をどかしたらまたアップにするというのを何度もやったんですよ。そのときのディレクターだった片岡飛鳥さんが面白がってくれて、さらに片岡さんの指示で別のカメラも連動して何台もで岡村くんを攻めて……。その瞬間、「あ、これは確実に俺たち技術チームが笑いを作ってる」って思いました。岡村くんという演者を中心に、ディレクターやカメラマン、スイッチャーも含めた自分たちが彼を面白くしているんだと。そうやって生まれる笑いもあるって気づいたんですね。

片岡やナインティナインとともにカメラマンとして成長していった辻は、「自分が関わる番組を『作品』としてずっと残しておきたい」と言う。「どこが良いのか悪いのかを自分なりに研究して、良いところは違うパターンを考えたり、悪いところはどうやって直そうとか……」と試行錯誤を繰り返す。

バラエティ番組のカメラマンにはいろんな能力が求められるんですけど、考えたり思いついたりする頭と、空気や気持ちを感じるハート、そしてそれを映像として表現する腕(技術)の三つが、三つともないとだめだと思うんです。どれかひとつでも欠けたらダメ。
          (略)
演者さんを好きになるっていうか、こんな風に撮ったらもっと面白いんじゃないか? っていうことは常に考えるようにしてます。

こうして、演者に対する想像力とディレクター的な視点を持ってキャリアを積んでいくうちに「ロケは辻」という業界の評価を不動のものにしていく。


加地プロデューサーが『アメトーーク』を「スタジオロケ」という扱いで制作するように考えたのは、辻稔をカメラマンとして迎えるためだ。
実は、局内のスタジオ収録では、様々なしがらみがあり、辻のようなフリーのカメラマンは参加しづらいのだという。だから加地はわざわざスタジオを貸してもらいロケという形で収録するスタイルにし、辻を起用した。
結果、実際にはスタジオで収録されているにもかかわらず、『アメトーーク』にはスイッチングがないのだという。全パラ収録=全部のカメラが収録するスタイルになっている。
制作部から技術への指示はなく、全体のバランスを確認するために辻が他のカメラマンに指示を出す。制作部はその分、演出に集中できる。

おかげさまで普通のスタジオ収録だったら絶対に撮っていないような場面、たとえば有吉くんが笑いながら何気に自分の靴紐を直した姿とかもグループショットのカメラが撮影してて、宮迫くんが有吉くんに細かく突っ込んでも映像でフォローできるようになっている。
このスタイルは、あの番組独特の笑いに繋がってると思うんです。

「カメラマンには辻を」というこだわりが、当初の思惑を超えた効果をあげ、『アメトーーク』ならではの笑いを生み出すことになったのだ。