1980年の矢沢永吉

「メジャーレーベルを捨てた矢沢永吉の新作が音楽ビジネスを変える!? 」(日刊サイゾー)といような理由もあってか、ここ最近様々な媒体で露出をしている矢沢永吉。
個人的にこれまで、ほとんどそのモノマネでしか接したことはなく、興味の対象からは外れていました。
が、今回のキャンペーンでの彼の言動に一気にその魅力の虜になり、心を鷲掴みにされてしまいました。今頃。
特に「SONGS」でのそれは、「矢沢永吉の人生相談」(はてなでテレビの土踏まず)にまとめられているとおり素晴らしいものでした。
「矢沢永吉が語る金と音楽」(メディア見廻り組)「Rolling Stone」2009年9月号での吉田豪でのインタビューの抜粋。こちらもまた最高。
また、「ほぼ日」での糸井重里との対談「ヤオモテ、OK」も現在連載中ですが、間違いなく面白い。
これらは来月に還暦を迎える矢沢の現在の生の言葉の数々です。


そんな中、先日、NHK教育で29年ぶりに再放送された「若い広場」。
この番組では、それまでテレビにほとんど出演してこなかった30歳の矢沢永吉がロングインタビューを受けています。
その言葉は、現在の矢沢と比べてもその軸に全くブレがないのにびっくりします。
もうその全てが、矢沢節のいい言葉ばかりで切る部分がほとんどないけど、どうしてもテキスト化しておきたくなったので長くなりますが引用します。

瞬間的にいつもインスピレーションを大事にしたいわけね。
「A Day」。
レコードタイトル「A Day」、あ、いいな、と思ってね。
それで、おかしなもんでそういう自分で瞬間的に思ったことを決めるでしょ、やってるうちにその気になっちゃうんだよね。その事の方が僕は大切だと思ってるわけ。
すべてが直接的、直接的
自分に素直でありたい、自分を愛したい、ということだけ信じてれば、全部がつながると思ってるから。
           (略)
僕自身が大事にしなきゃいけないのは、さっき言った、一番直接的で、自分がなにが欲しいか、ってことだけはっきり選びたいしね、あ、今度はこれがほしいとかね。
何がしたいか、ってことだけいつも忘れないで。自分は最高だって信じてるし。
そうよ、自分が一番かわいいもん
だから、保守的なかわいいじゃなくてね、自分が一番、自分を愛してるし、そこだけよ。
後は不思議なもんで、汗かくってことだけ本気でやってれば、どっかで絶対接点があるって思ってる。
思ってるのね! また、思わないと寂しいからやってられないじゃん。
寂しいからね、そうでも思わないとやってらんないですよ。未来がね。

そうね、欲しいもの、無いね。
だから物質的なものは別にないね。そうじゃなくて、自分を満足、幸せになりたいのね。
幸せになりたいってことだけすごく大事に考えてる。
だから、今欲しいものは、って訊かれたら、そう! この次のアルバム、どうにかしたいなぁ、ってことだね。
だから、おんなじこと。繰り返しでしかないんですよ! 
でもね、繰り返ししかないって僕言ったけど、やり続けていくことの方がいかに大切かっていうことを言いたいし、思うし。ね。
やり続けるってことはね、やっぱり、自分を守ることだと思うね。自分がやっぱかわいいからね、自分を愛したいから、
やっぱり、勝ち続けていかなきゃいけないし。

(負けたことなんて)そんなもん死ぬくらいありますよ。
一番ひどい時は、ありましたよ。佐世保ね。
九州の佐世保に行った時。僕はソロになって間がない時。
その日に限ってシチュエーションがバッチリよ! 
雨がザンザン降るし、蓋開けて見たらキャパが1500人くらいかな、それくらい入るところに(客が)200人くらい。
しかも、それが、俺、楽屋で一番悔しかったことは、
「これはまずい」ってことで、ウチのスタッフがタダ券を配りに、雨の中ね、町ん中、駆けずり回った。それを俺は聴いたわけね。
聴いたときね、もう悔しくて、悔しくて! 
僕はステージの上に上がったとき言いましたよ。
「いらっしゃい」200人ちょろちょろって来たお客さんに。
はっきり言った。
「俺、今悔しいんだ。こんなに才能がある俺が、佐世保へ来て、こんなに侮辱されたことはない。だから今日来てる200人のお客さんは、あんたたち、幸せだよ」俺、はっきり言った。「なぜか言おうか。矢沢の、こんな素晴らしい矢沢を見れたな。これは俺のプライドだ」って言ったわけ。
「だから俺はどこまで歌えるか分からないけど、素晴らしい歌を歌うからさ、最後まで楽しんでいってください」って帰ったの。そん時にスタッフに「リメンバー・パールハーバー」って言葉があるじゃん。
自分の中で勝手に、韻を踏む*1のが大好きな男ですから、「リメンバー・佐世保」。
決めるぞ! 
2年後かな、落とし前つけましたよ。
超満(員)だよ。ばっくり
ただ、全部一貫してそうして来たってことだけですか。簡単なことよ、
偉くも何にもない。ただ、負けず嫌いだってことだけかね。
それと、いじける暇がなかったってことと。それともう一つは、さっき一貫して言ってきてる事ですけど、僕はやっぱり自分を愛してるの、自分が幸せになりたいと思ってるの。
そんだけのことです。

なんでもっと自分を愛さないんだって僕が言うのは、もっと自分の財産守れ。
自分の財産ってなにも、銭の財産じゃないの。
精神の財産かも分かんない。自分のプライドも、自分の財産でしょ。そうでしょ。
そういうこと全部含めて、1個の主張を持つってことも自分の財産ですよ。
だからもっともっと自分のことを最大限責任持たんと。

僕は、よく僕の周りにいる連中にも言うのね。
「お前ら、真ん中通るな」って言うの。「2等賞はダメだぞ、1等賞になれ」。
それで1等賞はどうしても獲れないってはっきりわかったらもう辞めろって。ビりになれって。
真ん中は疲れるよ
でも、いいね、
真ん中のほうが安定していて堅いっていや、堅いのかも分かんないね。敵も少ないし。中傷されることもないし。
ただ、僕は考えた。
僕の理論ね、「ゼロ」っていうのがあって、こっちがプラスの世界、で、こっちがマイナスの世界。
これ、メモリがあるわけ。
1,2,3,4……、マイナスの方も1,2,3,4……。
5のプラスをチャレンジしようと思ったら、絶対、マイナスの5が背中合わせに付き纏っているんだって言っても言い過ぎじゃないくらい、世の中はね。
ほいで、10を望もうと思ったら10の敵がいる。それで、俺は敵作るのは嫌だ、ゼロでいい。っていうとプラスもゼロだ。
さてあなたはどっちがいいって。選択権は自分にあるんだから。
そったら俺、考えた。
そうだな、ガキの頃は人間として生きていても行動力も発言力もない。てことは何十年かな、男として発揮できるのは。そしたら30年間くらいしかない。オジンになってたらもう隠居だしね。ホントに動けるのは30年くらいしかない。
だったらやりましょうよ、ってことになるじゃん。
泣いても笑っても30年くらいしかないんだから、あとは死ぬだけよ、って話になったら、僕はプラスの10を獲ろうと思った。
ほったらまぁー、僕の理論あってたよ
まぁ、マイナスの10が増えた、増えた。ぼっこぼっこいたよ

「宿った」っていう自信じゃないのね。僕の言ってる自信は。
いわゆる、せめてものそう思ってやってないとやってらんないよっていうことですわ。
              (略)
特別な仕事を僕らはやってるわけでしょ。
タイムカードを押してちゃんと仕事をやってれば首にならずに済む、それで退職後も恩給が出るってことをやってませんからね。
これも水商売ね。
タイムカードの世界じゃありませんからね、やり続けるだけですよ。
だから、自分の仕事に俺は才能あるんだと。日本人って少ないね、なんか素晴らしいですねっていうと「いや、そんなことないです」って。
そんなことないっていうんなら歌うな!って、僕の理論
だから宿したんじゃないよね、暗示かけちゃう。
「俺は才能があるんだ。素晴らしいんだ」って。思わない限り、やってらんないもんね。
で、自分がちょっと僕はっていうやつに人の前出て歌う資格ない。
              (略)
自分に自己暗示をかけてもいいから、自分は天才だって言い切れるアーティストになろうと思ったの
銭だっておんなじね。俺は金が欲しいって言い切れるアーティストになろうと思った

昔から銭が欲しいって言ってた。それはお金のお金じゃないのね。
金が欲しいって言うのは何が欲しいと思います、札って限度あるです。朝昼晩3食っていうのも決まってるわけ。
それでも金が欲しいって矢沢は言ってる
いわゆる、安心感がほしいんですよ。
安心感と底辺、ベーシックなものをちゃんと持ってれば、自分の魂を売ることもない。
だからホントに自分が感じたものと、自分がしたいものと、いいと思うものを絶対、そん時に思いっきり汗をかいて出したい、それを徹底的にするためにはね、
底辺を固めなきゃなんないのですよ。
それで僕は金が欲しいって言ったわけ。
金がないとしたくない仕事も受けなきゃなんない時がある。
自分の信念を曲げてでもやんなきゃならない仕事もあるでしょう。
そういうアーティストはあまりにも自分がかわいそうだ。
だから僕は1日でも早く金を儲けようと思った。
自分をまとめるために。底辺を作るために。
っていうことですよ。

(スーパースターってつらそうと言われると嬉しいけど)誰が押しつけたわけでもない。自分が望んでやってきた。
そう! 広島から出てきた時、誰よりも有名になりたいと思った。
誰よりも金持ちになりたいと思った。誰よりも大きくなりたいと思った。
そう! 自分が蒔いた種ですよ。
それで、そのことだけ一点を見つめてダーーってやってきたね。
うん、おかげ様である程度金も持った、ある程度名前も持った。来た時に一番大切なものを忘れてきた気がしてきた。自分で。
そう、「芸能人」っていう僕にとっては不名誉なものを背負ってる、後ろに
でも、自分が蒔いた種。自分が望んできたことなんだよ。
でも、人間汚いね、矢沢、汚い男だ
自分が望んで、自分がやってるくせに今度は、それを勝ち得たら、今度は自由をくれって言いだした。
そしたら周りが僕に言った。「矢沢しょうがねえだろ、有名税だ」って。「うん、ホントは自分もよく知ってる」
だから勝ち続けていかなきゃなんないんだ、ここまで来たら。ってことになるね。

*1:ママ