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田中裕二の稲川怪談批評あるいは、稲川淳二の騙され力

ブログ

TBSラジオ爆笑問題カーボーイ』では「妙に変だな〜」という人気コーナーがあります。
これは稲川淳二の怪談話の語り口をパロディーにして、まったく怖くない話をすると言うものです。
いまや同番組の看板コーナーのひとつに成長し、ついにスペシャルウィーク企画として2月16日深夜の放送では稲川淳二本人がゲスト出演しました。
そこで、このコーナーの趣旨説明を兼ねて、田中が稲川淳二の怪談話の特徴を説明したのですが、それが見事な批評になっていたので記録しておきたいと思います。
田中は、稲川淳二の典型的なホテルでの怪談話を例に語っていきます。

稲川さんの怖い話ってね、これだけ怖い体験をされてるのに
まずホテルに泊まって、その時点でまず今日も出そうだって思わないところがすごいんです。
普通に「疲れたから寝ようかなぁ」って。
「布団に入って寝てたの、私。そしたら電話がリーンと鳴ったんだ」
夜中に電話が鳴って今までの話を聞いてたら9分9厘、霊ですよね
ね、ね!
なのに「誰だろうな、こんな時間に」ってまず疑わないところが稲川さんのすごいところ。
「眠いなぁ」って全然怖がってないんです。
「出たら、フロントかなぁと思ったら女の人が出てなんかうーうー言ってるんだ」
そこでままだ気づかない
普通こんだけ経験してれば、もう霊だって思うじゃない。
「電話を切って、そしたら部屋にノックが。やだな、こんな時間に。ヤダなー」(笑)
そんな状況じゃないハズなのに!
絶対霊じゃないかと思うんだけど、忘れちゃうんだ。こんな怖い体験してるのに。
「出たら、若い女の人が立ってるんだ。髪の長い。誰だろうなぁ」
誰だろうじゃないでしょ、もう霊でしょ!
「そしたらフワーと部屋の中入ってきたんだ、私の耳元で囁くんだ、なに言うのかなぁと思ったら、『お前を殺してやる!』って言うんだ。そこで私、気付いちゃった。この世のモノじゃないって」
遅いよ!

目の前で起きていることをありのまま受け入れ、それを最後まで信じてしまう。
もちろん「実際にあった怖い話」という体といえども、話芸なのでそういう話の組み立てをしているのでしょう。
しかし、稲川淳二はこの後、怖い話に限らず、ありのまま信じちゃう、疑わないというスタンスで、実際に何度も騙されてきたと振り返り、短時間の出演時間の中でも数々の騙され話を、例の話芸で次々と紹介していくのです。
それをコーナーのネタハガキを超えちゃってると爆笑しながら聴いていた爆笑問題。彼らが、怖い話だけじゃなくて、「騙された話」だけで何かやるべきだ、と興奮するほど、いちいち面白く、なおかつ豊富。
思えば、番組中に明かされた、芸能界に入ったきっかけや、そこから出世していく様も、稲川淳二の、目の前で起きていることをありのまま受け入れるところから生まれ、結果成功していったようなものでした。
もうここまで来ると、もはやそれを「騙され力」と呼んで肯定しても良いような気がしてきました。