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タブーを笑え! 笑う障害者たち

ブログ

『バリバラ〜バリアフリー・バラエティー〜』をご存知だろうか?
僕もこことかこことかここで紹介しているが、NHK教育テレビの番組『きらっといきる』の中の月一コーナーである。
これは作り手も司会も演者も、障害者*1が中心となった日本のテレビ史上初の障害者バラエティ番組だ。
そんな『バリバラ』が12月4日2時間特番『笑っていいかも!?』として放送された。
そしてこれは想像していたより遥かに「教育テレビの本気」を感じさせてくれる濃密で凄い2時間だった。もちろん色々なことを考えるきっかけになったし、なにより素晴らしいのは、障害者云々無関係に、抜群に面白いことだ。何度爆笑したことか。


たとえば「日本一面白い障害者を決める」という企画『SHOW−1グランプリ』。
そこに登場した脳性まひの障害を持つ2人、周佐則雄、DAIGOによる「脳性マヒブラザーズ」によるコント「お医者さん」。

医者: 次の患者さん、どうぞ。
患者: はい。
医者: どうされました?
患者: ちょっと体調が悪いんですよ。
医者: 体調が悪いんですか?
患者: たぶん、風邪だと思うんですね。
医者: 風邪ねえ……。で、症状は?
患者: 手が動かない。体も震える。うまくしゃべれない。
医者: ちょっと早口言葉で「生麦生米生卵」って言ってもらっていいですか?
患者: なまむぎ、なまごめ、なまたまごー。
医者: もっと早く!
患者: なま□△○*×○〜
医者: わかりました。あなた風邪じゃなくて脳性まひですね!
患者: いやいや風邪だと思いますけど
医者: ちなみにその症状はいつからですか?
患者: はい、子供の頃から……、
医者: 絶対脳性まひです!
患者: 風邪だと思います
医者: 脳性まひです!
患者: 風邪です!
医者: 脳性まひ!
患者: 風邪!
2人: ああああーーー!
医者: 分かりましたよ。ちょっと胸見るんで服脱いでください。ちょっとこの人やっかいだわー。
患者: (脱ごうとするもなかなか脱げない。)
医者: 服脱げないんですか?
患者: 時間かかるの
医者: 時間かかるってどれくらいかかるんですか?
患者: 2時間半!
医者: かかりすぎです! じゃあ次、血液検査します。注射しますから。
患者: 注射? 僕、痛いのイヤ!
医者: イヤって、落ち着いてください。腕出してください。
患者: しょうがないなー。
医者: しょうがないって自由人だなぁ
患者: (腕を出す)
医者: じっとしててください!
患者: 風邪で震える!
医者: 脳性まひでしょ!
        (略)
患者: やっぱり私は脳性まひか。

これを見たゲストのカンニング竹山は言う。
「同じ芸人の立場から言わせてもらうと、お前らキタねえよ!どれだけ武器生かしてんだよ! 爆笑したよ!」


 ◆ ◆ ◆
番組のブレーンのひとりである司会の玉木幸則もまた脳性まひの障害を持っている。玉木は番組の趣旨をこう説明している。

玉木: 僕らが目指しているのは障害がある人とない人の心のバリアフリー障害者は「頑張ってる、大変そう」なイメージだけになっちゃうんやけど、それはちょっと違うやろってことで、お笑いからバリアフリーを考えようっていうのが今日の企画です。

ゲストの竹山と構成作家鈴木おさむは健常者の見方を代弁する。

竹山: ずっと(障害者に)「面白い」って思っちゃいけないって学校とか小さい頃から言われてきたんですね。そういうふうに誤解みたいなのがあったと思うんで。
鈴木: いろんな番組で、障害者が出る番組だと、すべて何かをして感動する方向のものしか流さないじゃないですか。で、僕も物心ついた時からそういう番組しか見ていなかったので、障害者の人の考え方がすごいネガティブなんじゃないかって(偏見で)思っちゃうんですよね。そこがベースであって、だから障害者の人が「かわいそう、頑張ってる」っていうのは、そこがあるからそういう意見になっちゃうんだと思うますね。

番組では、「障害者が笑わせる」映像を見ての様々な意見を紹介している。健常者はもちろん賛否両論の意見を語っているが、障害者もまた賛否両論だ。

「本人さえ納得してやりたいことをしてれば、別に何とも思わない。いいと思う。すごい」
「障害で笑いをとることは賛成できません。障害を笑いにしてしまうと、その障害の人、みんなを笑ってしまうことになる」
「障害そのものが見せ物的になったりとか、そういう見られ方、受け取られ方をしかねないところもありますので、そのへん、上手いこと出来れば、障害者全体のイメージを変える力がお笑いにはあるかな、って思いますので、一定の配慮は必要かなとは思います」

これに対して、全盲の落語家・桂福点や全盲で肢体障害を持つミュージシャン山下純一らはこう意見を交わしている。

福点: 自虐ネタであろうが、アリやと思うんですよ。笑いっていうのは、下から上へ突き上げるような、力を押さえつけてる者が、力を奪ってるものを攻撃できるわけ。パワーがある。私は、こうなってほしい、という思いを社会にメッセージとしてのせたいって思って、それを笑いにしてるんですよ。チャップリンもそういうところありますよね。これが逆に上の者が下に対してやると、それは「見下し」「さげすみ」になる。下から上にいくのは「風刺」になる。私はそのパワーをね、自分の障害を持ってる中から、自分の経験とかから、それを打ち出すって言うのは、障害者の笑いの真骨頂やないかなって思うんですけどね。
鈴木: うちの奥さん(森三中大島)は俗にいう「ブス」っていうアレじゃないですか(笑)。で、やっぱり単純に「ブス」っていわれる女の人も、この10年変わったと思うんですよ。ていうのは、こんだけ「ブス」っていわれる女の子が芸人としていっぱいテレビに出てくると、単純に選択肢が拡がってると思うんですよ。それと一緒で、障害者がみんなで笑いにしたり自分たちがおもしろがることで、みんなの選択肢がすごく拡がるんじゃないかなっていうのはホントに思うんですよね。
山下:「笑わせる」っていうのはそれなりの技術が必要。そのあたりも今から厳しくのしかかって来るはずなんですね。だから芸をされる方も腕が問われてくる。「かわいそう」とか「笑っていいの?」と思わせてるってことはまだ腕が足らない。「笑ってもうた」まで持っていったら勝ちだなって。
僕はね、子供の頃、友達と遊んでてこれはやりすぎたなあって思ったことをひとつ言っておくと、目が見えない友達が遊びに来て、その時に、こいつ寝とるから寝てるうちに(いたずらで)「第3の目」描いたるか、って言って額にマジックで描いた、悪ノリしてね。落書きってよくあることじゃないですか。でも、目の見えない人に落書きして、その後、朝起きてそのまま帰ったんですよ。絶対気づかないじゃないですか。目が見えないんだから。周りの人が言わんと気づかないのに、それをやってしまったということにすごく心痛かったです、これは。だから、相手がそれに気付いてやめろよって言って初めて面白いのに、ただのノリでやってしまった。
福点: 子供の時、松葉杖の障害者と自分の白杖で「巌流島の決戦」をやったことがある(笑)。やってるうちに「これちょっとええかな?」とか「これくらいいけるな」とか、「先週の義足飛ばしはやめような」とか、「それやったら義眼のはじきはええのんか?」とか、いろいろ子供なりに考えるんですよ。そうしてるうちに「これはあかん」「ええんちゃう?」っていうのが出てくる。健常者同士の遊びの中でも「ごまめ」って知ってます?大きい子と小さい子がドッジボールする時、小さい子はどうしてもすぐに当たってしまう。だからしばらく当たってもノーカウントにしようっていうルール。で、私、「永久ごまめ」になりかけたことあるんですよ。(目が)見えてないから。せやけどやってるうちに友達連中「これ、おもろないで」「どうしよう?」「3回までOKにするか?」とか、友達同士でルールを改善するんですよ。一緒に遊べる方法ないかって。これがエエと思うんですよ。だから子供の時から障害ある人もない人も一緒に安心して遊べる社会がない方がおかしい
だから『バリバラ』っていうのが初めてね障害者と遊ぶことを(テレビ)画面から出したんじゃないだろうか。だから、戸惑いもあるんじゃないだろうか?
横須賀*2: こういう番組が何回も何回も続いていくと効果が薄れていくと思うんですよね。こういうの初めてやからみんな「おお」って思うんやけど、同じものを続けていくと普通になってくる。そうすると作る側は、続けたいって思いがあれば、過激化していかざるおえないと思うんですよ。そうすると一線を越えてしまう。だから作る側はそういうことも意識しながら作っていっていただきたいなと思ってます。


 ◆ ◆ ◆
番組では、先に紹介した「SHOW−1グランプリ」の他にも障害者大運動会「バリバラ大運動会」や「日本初(?)の障害者ドッキリ」などのコーナーに挑戦している。

・障害の度合いによってハンデが決まる「ハイハイダッシュ」
視覚障害者が挑戦する「障害物競走」
聴覚障害者がジェスチャーで、言語障害者が言葉で、脳性まひで体が震えてしまう障害者がイラストで伝える「伝言ゲーム」
・車椅子で水鉄砲で相手の的を撃ちぬく「ビショビショ大合戦」

などが行われた「バリバラ大運動会」。
参加者のひとりは「学生時代からずっと体育祭とか運動会とかでは、応援ばっかだったから実際はほんまにやってみたかった」という。
玉木は「障害者の運動会的なものはこれまでタブー視されたというかもう無かった世界。でもやりたかった。結局、どこまで行けるのか、それを見て本当に面白いと思ってもらえるのか? ということで今回挑戦してみた」という。
そして「バラエティの王道。だからどうしてもやりたかった」という「障害者ドッキリ」。
ザブングル加藤をターゲットに障害者がドッキリを仕掛けるというもの。
この構成に参加した鈴木おさむは「これに関して、面白いっていってくれる人もいれば反論もあると思うんです。それを含めて終わった後にいろんな人の意見を聞いてみたい」という。


 ◆ ◆ ◆
これらを見て(読んでもらって)、いったいどう感じただろうか?

鈴木: 最初からやらないとなにも生まれないと思うんですよね。「とりあえずやってみよう!」って。
真面目なVTRを見て語り合うことは簡単だと思うんですけど、こうやって面白いものを作り、見て、じゃあ、障害者と僕らの距離を語ることがすごいなーと思います。

玉木は言う。

玉木: 僕ね、ごっついこだわってることがあって、たとえば体を使って笑かすとか、自分の言葉を使って笑かすっっていうのも、あくまでもその人自身で、笑ってもらいたくてやってることであって、似たような障害の人が同じ感覚かっていうとそうではない

当然だ。当然だけど僕らはそれを見失いがちだ。
同じようにハゲてる人だって、それをネタに笑ってほしい人もいれば、触れてほしくない人もいる。障害者だってそれは同じなのだ。

横須賀: お笑いのパフォーマンスって言うのはそういう「かわいそう」な障害者とはある意味反対のことが提示されるわけですよね。そこで、自分自身が持ってる常識が揺らぐ可能性が出てくる。私は思うんですけど、心のバリアフリーっていうのは健常者の方が障害者に対する意識を変えてもらうのが目的だと思うんですけど、そのためには「揺らぐ」。そのひとつの手段として「笑い」は有効なんじゃないか

最後に全盲の落語家桂福点はボケを挟みつつ言う。

福点: 笑いのTPOを探し始めなきゃいけないところに来たんじゃないかと思うんですよ。

それは障害者云々に無関係にずっとメディアに横たわっている大きな課題ではないだろうか。


そして、この番組に出演している障害者たちは口々に言っている。

感動するな!! 笑ってくれ

※過去の放送は『きらっといきる』公式ホームページで一部観ることができます。
こちらから→ http://www.nhk.or.jp/kira/post/baribara.html

*1:「障害者」という形容についてはいろいろな意見があるようだが、このエントリ内では番組の表記「障害者」に合わせます。

*2:横須賀俊司。自身も障害を持つ障害学者