「おかしさ」を「可笑しさ」に変換するプチ鹿島の『うそ社説』

「東京ポッド許可局」をご存知の方なら、プチ鹿島についてもよくご存知だと思う。
あるいはトークイベントで上祐史浩鳥肌実貴闘力山本太郎戸塚宏などの濃厚な相手と渡り合う姿で知った方も多いかもしれない。
知らない方も以前書籍化された『東京ポッド許可局』の「局員語録」の中からいくつか彼の言葉を引くだけでも彼がいかに鋭い視点を持った批評型芸人であることが分かるだろう。

「半信半疑っていう状態が精神状態がいちばんベスト」
「江頭(2:50)さんをどう見るかっていうのが女の一つのバロメーターになるんだよね」
「ギャンブルやってると、自分との対話に最終的には気付く」
「野暮なことをやってるんだから。それを芸にしてんだから」

そんなプチ鹿島が『うそ社説』なる電子書籍を上梓した。
ここではプチ鹿島は「時事芸人」という絶妙な肩書きを名乗っている。それについて本書の「はじめに」で以下のように解説している。

私はこの本で「時事芸人」と名乗っていますが、何もジャーナリスティックな、社会派を志向しているのではありません。私が尊敬する高田文夫先生の言葉に「いまを語ることができるのが芸人」という言葉があります。私は(勝手ながら)高田先生の教えを遂行しているだけなのです。だってビートたけしさんが「あの出来事についてどう言うだろう」というワクワク感はみんなにありますよね。それは社会派ではなくエンタメとしての楽しみだと思うのです。

プチ鹿島は「おもしろい」の意味が拡大されている、と言います。それはネタ番組などを見てゲラゲラ笑うという「おもしろい」はもちろん、特に3.11以降「いま何が起きているか知りたい、共有したい」という熱が高まっているのを実感している、と。そういった内容のネット番組やトークイベントなどをお客さんは難しい顔をして聞いてるわけではない。楽しんで集中しているのだと。「つまりエンタメが広がっている」。


プチ鹿島は3.11以降の「非日常どころか非常事態」に陥って重くなった空気の中「そろそろ芸人らしく、いや、自分らしく、こんな状況だけどスキあらば周囲が和んでくれるようなつぶやきを発信してもいいのではないか」とツイートを始める。

復旧作業には途方もない力がいると思うが、日本にはいま、「やたら力持ちで」「やたら時間があって」「名誉回復をしたい」大男の集団がいる。相撲協会よ、いまこそ立ち上がれ。

八百長問題で揺れる相撲界に引っかけた3月14日のこのツイートは大きな反響*1を呼んだ。
本書の第1章はこのようなツイートがまとめられている。


第2章はプチ鹿島が作り出している「ネタ」である「うそ社説」。
鹿島は新聞を「大御所の師匠」、社説をその「小言」だと思えば「ボケ満載」でおもしろい、と言う。

社説って、いつも上から目線ですよね。いつも世を憂いていますよね。なんでも意見しちゃう感じは大御所の小言と思えばいいのです。(略)
絶対に安全な立場から何が起こっても「遺憾に思う」。
絶対興味が無いであろう地球の裏側のことでも「いかがなものか」。
そして「こうするべき」と決まって言い出す。
しまいには「〜したい」と勝手に締めくくる。
世の中の森羅万象に意見してご満悦な師匠。

「うそ社説」はそんな社説の「文体だけでなくいかにも言いそうなこと」をパロディにしたプチ鹿島の「ものまね芸」である。

新聞に対して「おかしさ」を感じたら「可笑しさ」に変換すればよいのです


そして第3章には上杉隆との対談。これも興味深い話ばかり。
本書は電子書籍ですがiPhoneAndroidなど端末を選ばず読めるそうです。
オススメです!
購入は「BinB」から。
『うそ社説 菅直人半減期は長いのか』プチ鹿島http://binb-store.com/index.php?main_page=product_info&products_id=12576

*1:ちなみに8割方は楽しんでいたが、残り2割はガチの反応だったそうだ。その中には「お前の意見はダメだ」と口汚く罵倒するものもあったという。その発言の主をたどると日本語を教える大学教授だっとという香ばしい味わい深いエピソードも。