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有吉弘行ミステリー〜有吉はなぜ極度の潔癖症になるに至ったのか?

怒り新党』は有吉弘行マツコ・デラックス、そして夏目アナの3人だけの純粋なトーク番組。視聴者の怒り心頭なメールをもとに3人がトークを繰り広げる、ラジオやテレビの原点とも言える構成だ。
そして実はそれをプレイングマネージャーとして絶妙なさじ加減でコントロールしているのが有吉弘行だという事実がある。
構成作家であるそーたには『QJ』(Vol.100)の「テレビ・オブ・ザ・イヤー」の座談会の中でこう明かしている。

そーたに: (僕らは)ひたすら視聴者からのお怒りメールを読んでるよ。もう、数が数だから異常に時間がかかるけど。で、ピックアップしたのを有吉がチェックする。あんまり細かく言えないけど、キャッチャー・有吉なんで。
都筑: ほとんど言ってるじゃないですか(笑)。
そーたに: あの番組では、有吉はプレイングマネージャー的にゲームを作ってる。

この日、読まれた怒りメールは「(食事で)『一口ちょうだい』と言ってくる人に腹が立ちます」といったいつものように他愛のないものだった。

たとえば唐揚げ定食の唐揚げ定食の唐揚げが5個から4個になってしまうだけで、こちらのテンションは下がってしまいます。定食なら唐揚げ以外にお味噌汁やお新香でお米を消費することができますが、唐揚げ丼の唐揚げを1個取られてしまった場合、お米と唐揚げの食べる配分を考えなおさないといけないので非常に困ります。

と続くメールに有吉は「丁寧だけど内容はバカ」といつもの含み笑いを浮かべながら言う。
この時はこのメールがきっかけとなってまさかゲームを作っているはずの自分のコントロールが効かなくなって深層心理が暴かれることになるなんて有吉は知るよしもないのだった。


マツコは笑いながらもこのメールに共感を示す。
それに有吉も同調。そしてさらにその理由にもうひとつ加える。

有吉: あとは俺、「潔癖症」だからね。絶対ダメ。

この何気ない有吉の一言にマツコが食いつく。
マツコは訊く。「鍋は?」と。
有吉は答える。「鍋はね、百歩譲ってっていうか、どうも大丈夫」と。
そして最大の謎となる一言をついに発するのだ。

有吉: 最大の障壁は(手作り)おにぎり。おにぎりはダメ。

コンビニで売ってる工場で作ってるようなおにぎりでないと食べられないのだと。
ここにさらにマツコ。「『おいしいおにぎり屋さん』みたいな(ところは)?」と突っ込む。

有吉: これが難しい所でさ、「プロ」と認めた日には大丈夫。お寿司屋さん、おにぎり屋さん。「あなたはプロだ」と。それは大丈夫。

「おんなじだって!」と笑いながら驚くマツコに有吉は「違うのよー。友達の母ちゃん……、汚っねー」と言う。

有吉: ホント地獄で。野球部の時ね、友だちの母ちゃんがね「有吉くん、この弁当食べなさい」って。(震えながら)一口も箸進まないの!

と、「おにぎり以外もダメ」であることを告白する。

有吉: 他人の弁当の匂いがまずダメなの。他人のお母さんが作った弁当の匂い。ラジオでそれホントか?って検証しようとして、俺の後輩の奥さんが弁当作ってくれたの。それでラジオの現場で弁当食べてくださいって。開けるの。その匂いで吐きそうになっちゃって放送にならない(苦笑)。

マツコはこのイメージとはかけ離れた有吉の不可思議な食に対する潔癖症っぷりに驚きつつ「イメージダウン!」と叫ぶのだった。


有吉は自己のこの食事理論がどこからくるものなのかを自ら分析していく。
元々は、「好き嫌いが多い」ことから発生しているのではないか、と。
好き嫌いが多いから自分の母親は甘やかして有吉の好きなものしか弁当に入れない。しかし、他人の親は当然ながら有吉の好き嫌いとは無関係に作る。それが耐えられない。

有吉: “我が家の味”が嫌いなの

ここでマツコが「あんたどうするの? オンナの料理は?」と質したことで有吉のこの潔癖が実は複雑であるということ、そしてその心理の奥が次第に垣間見えてくる。

有吉: それはまた別なのよ〜。

彼女の手料理はセーフ」だと言うのだ。

有吉: 一番この仕事やってて困るのが、旅モノのロケとか行って、お世話になった人の家でパーティ。地獄ね。
マツコ: 食堂だったりレストランだったらいいのね?
有吉: うん! 汚っねえ食堂でいいの。ゴキブリとかが歩いてる食堂でいいの。
マツコ: な〜にが違うのー?
有吉: 他人ん家のパーティも、そこの家のボスが漁師さんだったらOKなの。農家も大丈夫

そして夏目がした質問がこの潔癖症の謎を一気に解決へと導びいていく。

夏目: マツコさんが作られた料理は?
有吉: これがちょっと微妙だねー。……基本ホントにダメなのは「よそのババア」。よそのババアが一番ダメなの!


その答えにそれまで混乱していたマツコがある推論を閃いたのだ。

マツコ: わかった! 「お母さん」なんだよ! 究極のマザコンなんだよ!

「かもしれないね」と恥ずかしそうに笑う有吉。

マツコ: だから、違う同級生のお母さんが嫌なのよ。(他人の)お母さんがイヤというよりは有吉さんのお母さんが大好きすぎるから他のババアが作った料理なんていうのは「敵」なんだよ!

「あー、そうか……」と頷く有吉。

マツコ: じゃあ、これは? 「友達の家のお父さんが作った料理」。
有吉: お父さんは、、、これ、意外とイケるのよw
マツコ: ほらっ!! 絶対そうだって!
有吉: なんだろうね(照れ笑い)。そうだね、、、マザコン……。
マツコ: うわー、イメージダウン! 私コレ今までで一番面白い(笑)。

「自分でも不思議だったからだいぶ解明できた」と有吉。

マツコ: 「マザコン」って言葉がいいのか分からないけど、本当にお母さんとの関係性が、たぶん、もっとも重要な関係性なんだよ。全人間関係の中において
有吉: そうかもしれないね。
マツコ: でも、そう考えるとステキなことよね。「お母さん以外の料理は、お母さんを裏切るから食べられないんだ!」っていうね。
有吉: いや、でもアレよ。自分の彼女とかに「おふくろの味と違うから(イヤ)」とかはないのよ。
マツコ: 違うのよ、むしろ違うのよぉ(ニヤリ)。そんな後から入ってきた小娘にさ、大切なお母さんの味を再現されたら余計イライラするタイプよ(笑)。
有吉: アハハハハ! いやー、マジかー(笑)。そうなのかぁ…。
マツコ: それ以外考えられないよね。潔癖とは違うよね。
有吉: そうか、そうか……。

「丁寧だけど内容はバカ」という他愛のない怒りメールからまさか普段見せることのない有吉の深層心理を垣間見えることになるとは。まさにこの番組の組み合わせの妙が生んだ、この3人のトーク番組ならではのダイナミズム。

夏目: え、何が一番好きなんですか、お母さんの料理で?(笑)
有吉: うっるせえなー、黙ってろよ(笑)。俺をイジるんじゃねーよ

イジられ始める有吉。
それを拒否しなんとか反撃の一手を打ちたい有吉。

有吉: でも、それで言うと母ちゃんが飲んでるペットボトル、俺すげーイヤよ。
マツコ: (考えこむ)……神聖なモノだからじゃない!?
有吉: どうしてもそうしたいんじゃない(笑)。
マツコ: 聖母マリアと間接キスするようなものだから……(笑)。
有吉: アハハハ!