「あれは生命の最大の肯定」タモリが絶賛した小沢健二

いよいよ一週間後の3月26日に『タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?』が発売になります!(しつこい)

そんな中、明日の『笑っていいとも!』のテレフォンショッキングのゲストは小沢健二
『いいとも』テレフォンショッキングの小沢健二といえば、樋口毅宏さんの小説『さらば雑司ヶ谷』でそのときの会話が引用され、登場人物の口を借り、タモリさんを「絶望大王」と称し、樋口さんが『タモリ論』を書くきっかけになった回が有名です。
ちなみに書き終わった後で気付いたんですが、『タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?』では、本編のまとめといえる最終章の『タモリに「タモリ」とは何か?』を除けば、最後の章になるのが『タモリにとって「希望」とは何か?』で「絶望大王」と「希望」で対比になっていて面白いなぁって思いました、勝手に。


で、その件のタモリ小沢健二の会話は1996年1月29日のテレフォンショッキング中でした。

小沢: タモリさんねぇ、僕の作品をびっくりするぐらい理解していただいていて。ありがとうございました。
タモリ: いやいや、とんでもない。最近ね、ホントに歌の歌詞で「あぁ」ってなった人っつうのはね、この人しかいないのよ。
小沢: あはは(笑)。それがだから、何か僕はホント、そうだなぁ…、音楽とかは全然年の差とかは何にもないんだろうなって思っていて。で、絶対この世代に向けてとか、そういんじゃない…。僕は少なくともそういんじゃないですから。そしたらタモリさんがああいうことを言ってくださってホント嬉しかったですね。
タモリ: あれはねぇ、本当に驚いたのよね、最近では。

ここでタモリが絶賛するのが小沢健二の「さよならなんて云えないよ」です。

さよならなんて云えないよ - YouTube

タモリ: あそこの歌詞は、あれは鹿児島で作ったんだっけ?   
小沢: そうなんです。
タモリ: 車でよく作るんだよな。車で思いついたら車停めて書いてるって。
小沢: へへ(笑)。
タモリ: あと、蕎麦屋で思いついて箸袋に書いてるって。
小沢: そうなんですよ、箸袋に(笑)。
タモリ: なんで蕎麦屋で思いつくの?
小沢: なんででしょうね。お蕎麦屋で人生ってなんだろう?って考えてるんですよ(笑)。あと、蕎麦屋の箸袋って、僕ひとフレーズずつしか思いつけないんで、ホント集中力ないと思うんですけど、蕎麦屋の箸袋くらいしか書けないんですよ。
タモリ: それでちょうどいいんだ?
小沢: ちょうどいいんです。だから遅いんです、作品ができるのが。すみません。

そして具体的な歌詞を挙げ、タモリはその歌詞を絶賛していきます。

タモリ: でもね、よく考えられた作品だよね。あのね、まぁいろいろ優れてるんだけども、俺が一番驚いたのは鹿児島で車でできた作品で『道を行くと、向こうに海が見えて、きれいな風景がある』。そこまでは普通の人は書くんだけれども。それが『永遠に続くと思う』というところがね,それ凄いよ。凄いことなんだよ、あれ。
小沢: ホンっト、ありがとうございます。良かったなぁ、ちゃんと…。ボクは何かね、聴いてて、何ていうのかな……。たとえば、今お昼休みで、『笑っていいとも』で“ウキウキウォッチングしてる”ところと、何ていうか、“人生の秘密”とは、“生命の神秘”とか、“永遠”とか、そういうのがピュッとつながるような曲が書きたいんですよね。それで、だから…。んー。
タモリ: だからまさにあのフレーズがそうなんだよね。あれで随分…、やっぱり考えさせられたよ。
小沢: ありがとうございます。
タモリ: あれはつまり“生命の最大の肯定”ですね。

その部分の歌詞を正確に引用すると以下の通り。

左へカーブを曲がると 光る海が見えてくる
僕は思う! この瞬間は続くと! いつまでも

さらにタモリ小沢健二への賞賛は続いていきます。

小沢: ものすごい硬い話になっちゃった(笑)。
タモリ: そこまで俺は肯定できないんだよね。
小沢: んー。そうなんですか。でもボクもねぇ、そんなわかんないんですけど。でも何か、たとえば大学とかで勉強したりとか、あと普段嫌なことあったり、いいことあったりするんだけど、そういうのがギュッとこのぐらいまでは結構ありましたって、いちいち報告するようなものが書きたいなって思って。
タモリ: なるほどねぇ。個人的な話になって悪いんだけど。
小沢: いえ、すみません、笑えるような話じゃなくて。
タモリ: いいのいいの、笑えるような話じゃなくったって。で、しかもそういう凄いことを簡単に何の嫌味もなく書けるっていうのが一番凄いことなんだよ。人間の能力で一番凄いとは複雑なものを簡単にポッと出すことなんだよね。簡単なものを複雑にやるのが一番バカなんだよね。
小沢: あははは。
タモリ: よくいるじゃない。あれ一番のバカなんだよね。
小沢: ですね、複雑なことをそのまま複雑に「人生の~♪」「生命の肯定~♪」なんて歌ってたってしょうがないわけで、やっぱり僕としては『痛快ウキウキ通り』みたいなことにしたいし。
タモリ: それがスゴいことなんだよね。
小沢: そういうふうでありたいなぁと思ってます。ありがとうございます。
タモリ: いやいや、期待してますよ。いつも観てますからね。
小沢: ありがとうございます。なんか、すみません。お昼休みっぽい話じゃなくって(笑)。
タモリ: いや、いいんだ。だいたいあのことは本に一冊書けるくらい内容のあることなんだから。だから大学行って勉強したことが凄いことになってるんだよね。
小沢: うーん、それを反映しようとは思ってますけどね。それはでもボクは大学であり、誰かは空手をやってたのかもしれないし、誰かはスポーツをやってたのかもしれない。あとタモリさんはずっと『いいとも』をやってきたのかもしれないし、その中のことをボクはたまたま曲にするのであり…っていう。なんかすごい真面目ですね~(笑)。
タモリ: ふふ(笑)。

ちなみにこの「さよならなんて云えないよ」の歌詞を読み返すと
「教会」「坂」「猫」「海」……、
と“タモリ”を思わせるワードが頻出しているのがとっても印象的です。

刹那
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