谷川俊太郎「新約聖書」

初めにことばがあった。
そのことばは「いてっ」というものであった。ヨネは助太郎の足を踏んづけてしまったのである。
二番目にもことばがあった。
そのことばは当然のことながら、「あ、すみません」というものであった。
で、三番目になにがあったかというと、ヨネと助太郎の目と目があったのである。