検証!「男祭り」はいかにして「Dynamite!」に勝利したのか?
大晦日の格闘技決戦は「PRIDE男祭り」が大方の予想に反して「K-1 Dynamite!!」に対し瞬間最高視聴率、平均視聴率ともに上回るという記録をマークした。
この勝利は、過去2年間蓄積された、長丁場の放送枠だからこその利点を活かした巧妙な戦略が見て取れる。
今回は実際に放送されたタイムテーブルを振り返り、その視聴率獲得に向けたノウハウを探ってみたい。
まず、フジテレビ側は視聴率のピークを小川vs吉田ではなく、金子戦に持っていくことを当初から想定していたのが分かる。
小川vs吉田は、紅白のユーミン、K-1の曙vsボビーにぶつけることで、視聴率は食い合うのは目に見えている。そこで、最高視聴率を稼ぐため、金子戦にいかにチャンネルを合わせてもらうかを念頭にして番組を構成している。
実際の試合順は以下の通り。
①金子vsベネット②近藤vs中村③トンプソンvsシルバ④瀧本vs菊田⑤アレキサンダーvsナツラ⑥ヒョードルvsズール⑦ヘンダーソンvsブスタマンチ⑧五味vsマッハ⑨桜庭vs美濃輪⑩ミルコvsハント⑪シウバvsアローナ⑫吉田vs小川
これがどのように編集されているのか。
まずは18時台*1。
18:00 前フリ(小池栄子、浅草キッドら)〜OP 02 小川vs吉田 煽り① 06 CM① 07 実況席(高田、ジャニーズの亀梨、山下コメント) 10 カード紹介 15 CM② 18 小川vs吉田 煽り② 24 CM③ 25 桜庭vs美濃輪 煽り①(桜庭vsケンシャムVTR) 28 CM④ 31 五味vsマッハ 煽り①(五味vsアゼレドVTR) 35 CM⑤ 37 提供読み 40 CM⑥ 42 ヒョードルvsズール 煽り① 44 実況席コメント 49 CM⑦ 51 実況席〜高田の控え室映像 52 CM⑧
そして、19時またぎに高田登場のOPに入り本格的に中継が始まる。
18:55 OP映像 56 高田タップ 59 高田褌姿で太鼓 19:00 選手登場 05 シルバvsトンプソン 煽りV 09 CM① 11 選手コール〜ゴング 16 試合終了 17 中村vs近藤 煽りV 18 2Rから 25 CM② 28 3R 36 試合終了 36 小川vs吉田 煽り③ 38 CM③ 40 ヒョードルvs藤田VTR 47 滝本vs菊田 煽りV 49 CM④ 51 選手コール〜ゴング 20:02 CM⑤ 04 3R〜試合終了 11 小川vs吉田 煽り④ 13 CM⑥ 15 グォン・サンウ リングイン 16 シウバvsミルコVTR 24 金子賢 煽り①〜控え室映像 29 CM⑦
ここまでで注目すべきはCMの多さである。18時台には8回、19時〜30分間に7回CMを入れている。
あと、意外なことに金子賢に関する情報を制限するかのような構成である。小川vs吉田関係の煽りが4回入ったのに対し金子は1回のみ。これはどのような効果を狙ったのか?
さて、ここからがフジテレビの今回勝利の要因となった時間の使い方である。
20:31 ジャニーズコメント付きの前フリから 五味vsマッハ 煽りV 35 マッハ入場*2 37 五味入場 39 CM①
ここで一旦CMが入るがここから実に約58分間ノーCMで中継されていく。
この勝負の時間帯の最初にこのカードを持ってきたのは、フジの「PRIDE」というコンテンツそのものに対する自信の表れとも取れる。一般的にはほとんど無名の両者の試合にもかかわらずこの日初めて入場から全て放送したのは、実際の会場の「熱」を伝えたかったからだろう。結果、視聴率も試合が始まると上昇を続け20%をこえることに成功している。
20:41 「君が代」斉唱 42 選手コール〜ゴング 49 試合終了〜表彰式 51 五味マイク 54 選手退場
さらに21時またぎには桜庭、美濃輪の登場。
前戦とは全く違う種類の「熱」が画面から伝わる。
20:55 ジャニーズコメント付きの前フリから 桜庭vs美濃輪 煽りV 58 美濃輪入場 21:00 桜庭入場 04 試合開始 15 試合終了 16 選手退場 17 金子入場 19 金子vsベネット 煽りV 21 ベネット入場
桜庭戦後すぐ、金子の入場シーンが流れる。通常、煽りV→入場という流れだが、あえてここで入場から。チャンネルを替えるタイミングを与えない。
21:24 選手コール(途中、ベネットがファールカップをつけ直す) 25 ベネットの態度に島田怒る 26 試合開始 30 金子タップ 33 選手退場〜吉田、小川控え室映像①
金子の試合開始はちょうど裏で武蔵vsサップの試合が終わり、次の魔裟斗戦へのつなぎの時間帯。結果、格闘技中継両局を通じて最高の瞬間視聴率27.7%を獲得する。
これを見ると、五味vsマッハから、桜庭vs美濃輪とつなげ、その間チャンネルを変えるタイミングを最小限に抑えた末、ピークを金子戦に持っていった戦略が見事にはまった格好である。
このピークを過ぎると通常のCMの入れ方に戻る。
21:33 ミルコ入場
34 ミルコvsハント 煽りV
37 選手コール
37 CM①
39 1R
50 CM②
52 2R
57 CM③
59 3R
22:07 判定〜吉田、小川控え室映像②
20:39から21:37まで一切CMが入らなかったにもかかわらず、その後はラウンドごとにCMが入る変貌振りが面白い。
22:08 ヒョードル入場(冒頭のみ) ヒョードルvsズール 煽りV 09 選手コール〜ゴング〜試合終了 14 吉田、小川控え室映像③ 15 CM④ 16 シウバ入場(冒頭のみ) 17 シウバvsアローナ 煽りV 18 選手コール〜1R 30 提供読み〜3R 37 判定 39 実況席(高田)コメント 41 吉田、小川控え室映像④ 43 小川vs吉田 煽りV 46 CM⑤ 47 小川入場 51 吉田入場 54 CM⑥ 56 選手コール〜ゴング 23:03 試合終了 05 小川マイク 08 吉田返答 10 小川「ハッスル」 11 吉田マイク 12 選手退場
これを見ると戦略を練りに練っている金子戦までの時間帯とは対照的に、小川vs吉田はオーソドックスに煽り映像を多用することでニーズ喚起し、視聴につなげていっている感じ。
このように同じ番組の中であるにもかかわらず、全く違ったアプローチで視聴率をとりにいくフジテレビの戦略はとても興味深い。
また、この後、あからさまに(視聴率的に)捨て時間を作っているのも面白い。
23:13 アレキサンダーvsナツラ 煽りV 14 CM① 16 1R 19 CM② 21 ジャニーズライブ番宣 22 ダンヘンvsブスタマンチ(大幅カット) 25 CM③ 26 五味vsマッハ(再) 31 CM④ 32 金子vsベネット(再) 35 CM⑤ 36 小川vs吉田(再) 38 番組終了