3人目のさまぁ〜ず、あるいは「モヤモヤさまぁ〜ず2」における大江アナの立ち位置


いまや度々ゴールデンタイムで特番が組まれるようにテレビ東京を代表する番組のひとつである「モヤモヤさまぁ〜ず2」。
その人気の要因の一つには、間違いなく大江アナの存在があるだろう。
もはや3人目のさまぁ〜ずといっても過言ではない大江麻理子のこの番組における役割と立ち位置について、「クイック・ジャパン80」での伊藤プロデューサーを交えた対談で語っている。


さまぁ〜ずは大江アナについて以下のように語っている。

大竹 (大江は)受け皿の幅が広いです。この番組だからなのか元々持ってるものなのか。余裕があるというかね。
三村 あるね〜。あと正直者なんですよ、大江は。占いの人に「あなたはこういう体験をしたことありますよね?」とか言われても、「ないです」って。少しはお前、話合わせろよって。
一同 (笑)
大竹 「体調が良くないんじゃないですか?」「いや、良いです」って。徹底的だったね。
三村 全然屈しない。むしろこっちがね、「大江、ちょっとあったろ?」ってフォローしてる。
大江 「こういう性格ですね?」って言われても、そうじゃないと思ったので……。リアリティ重視です。
    (略)
大竹 あと、好奇心がありますね、チャレンジ精神が。
三村 うん、ある。後先考えないでやってる時あるよね。それがいずれ下ネタに繋がるって、俺の中では分かってやってるのに、大江は分かってなくてやっちゃう。股広げる機械に乗っちゃうんだよね。

大江 でも、私はセクハラを受けている感覚はないですよ? 私が鈍いだけかもしれませんけど。
三村 ……大江を見てると、なんかいじめたくなるんだよね。
大江 ええっ!?
三村 なんかいじりたくなってくるっていうか。ただ、「これ下ネタだな」って、大江が気付く時と気付かない時があるんだよね。
伊藤 無理矢理やらせたことはないんですよね。下ネタをやるかやらないかは、大江次第。
三村 やってる時は大江が気付かない時なんだよね。こっち的には「ラッキー♪」って。
    (略)
三村 大江はほんと真面目ですよ。清楚な、田舎から出てきた真面目な人、というイメージがある。
大竹 上品な、ね。だからいいんですよ。下ネタいっくらでもやりそうな、イケイケ風の女の人だったらそうなってないです。
三村 俺ね、めちゃめちゃバラエティの匂いのする女の人だといかないです、逆に。そこでのっかられてもね、なんかちょっと……俺が面白くない。
一同 (笑)
大江 私も、品がないセクハラだったら絶対に怒ってると思うんです。そんなことないですからね。さまぁ〜ずさん自体に品があるんだと、はい。

では、最初からそういった意図で彼女を起用したのだろうか?


当初、伊藤Pは、大江の役割をテレビとして極めて常識的に「軌道修正役」として考えていたようだ。

伊藤「やんちゃ度で言うと(さまぁ〜ずの)お二人とも同じ位やんちゃなんですよ。例えば三村さんが何か言っちゃったり、やっちゃったりしたことに対して、大竹さんはあんまり修正せずに逆にカブせちゃってる。修正役に大江をと思ったんですけど、全くそれも機能しないという危険な状態です(笑)」

しかし、伊藤がこう語るようにその目論見は大江の心境の変化とともに崩れさる。

大江「私も、最初の頃はちゃんと仕切らなきゃって、番組アシスタントとしての生き甲斐を持ってたんです。でも途中から、そうでもなくなりまして。今はもう、街へ出て面白いものを探すのが楽しくて仕方がなくって、いっつもキョロキョロしてる役です」

さまぁ〜ずも伊藤も口を揃えるように大江は真面目で勉強熱心。だから、伊藤は、どこまで計算してやっているか分からなくて怖い、と言う。
大江は「クイック・ジャパン77」では「モヤさま」の魅力について以下のようなことを書いている。

(「モヤさま」の人気の)ひとつめの理由は「人間の言動にちゃんと意味のあるものはそんなにない」ということがわかるからだと思います。(略)身の回りにあるモヤモヤに、たいした理由はないのです。モヤモヤを晴らしてみたら、理由がひどくて更にモヤモヤしてしまうという、モヤモヤスパイラルに陥るわけです。
ふたつめの理由は、「モヤモヤしっぱなす」ということにあるのではないかと私は考えています。(略)お二人には「モヤモヤしたままにしておいて後々までモヤモヤを引きずる」という楽しみ方があるようです。
     (略)
もうひとつの理由は、「とても平和」だからではないでしょうか。モヤさまの笑いは、人を傷つけません。色々な街の色々な方々とふれ合って、仲良くなりながらモヤモヤを紡ぎだしていくのでギスギスすることがまずありません。ただ、ギスギスしないようにモヤモヤを指摘するという作業は決して楽なものではないはずです。さまぁ〜ずさんは街の方に出会うとまず、かなりの緊張感を持って相手の「ここまでは大丈夫」という領域を探っていらっしゃるのではないかと思います。その「大丈夫ライン」を瞬時に探り当ててしまわれるので、番組の根底には安定した安心感がある気がします。
     (略)
もしかしたら私たちは今まで「テレビはこうあるべき」という先入観に縛られて、自らテレビの可能性の幅を狭めていたのかもしれません。きれいに見せよう、作ろう、ということを追求するあまり偶然の産物や人間が本来持ってる間を削り落してしまい、しかもそれを良しとして疑わなかったのかもしれない、ということにモヤさまを観ていて初めて考えが至りました。

この的確な分析から大江が今の自分の立ち位置を自ら築いていったことが伺える。


こうして、大江アナは単なるアシスタントからさまぁ〜ずのパートナーへと、完全にこの番組になくてはならない存在となる。
それをハッキリと示すように三村は語る。

さまぁ〜ずの)二人きりでも成立はさせると思うんですよ、普通に。でも、なんだろうな、ロケ行く時とかって、やっぱワクワクしたいじゃないですか。だから、「明日『モヤさま』か……大江いるし行こうかな」くらいの感じで。

この「感じ」こそ、「モヤさま」の最大の魅力なのではないか。

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