2008年テレビ関連本ベスト5

お笑い番組を振り返る前に、2008年に発行された書籍を振り返りたいと思います。
きりがないので、雑誌系は入っていません。

「テレビの笑いをすべて記憶にとどめたい 笑TV爆笑シーン採録2006~2008」著:松田健次

今年発行された自分が読んだテレビ関係の本の中で一番素晴らしかったのはこの本。
この本がどんな本か説明しようとすると、もう「テレビの笑いをすべて記憶にとどめたい」というタイトル通りです、という他ないです。
実は「てれびのスキマ」の自分なりのひとつのコンセプトは「記憶の記録」というもので、まさにこの本のようなものを目指して立ち上げたのです。しかしながら、自分にその能力はなく、今のような形になりました。だから、松田健次にはものすごく共感するとともに、ものすごく嫉妬も覚えます。
これだけでは、この本の魅力や凄さが伝わらないと思うので、本書を絶賛した水道橋博士の言葉を引用したいと思います。

著者は黒子に徹しているが、俺は、仕事を通して、その"異能"を熟知している。


例えば、ラジオのパーソナリティが10人いれば、十人十色の個々の思考やギャクセンスを、本人が喋るのと同じスピードで書ける人だ。


そして、この本は、テレビの笑いの定点観測の記録本。


このジャンルの金字塔は、ナンシー関の一連の著作があり、誰もが、この追随者とされてしまう。


しかし、松田さんは、テレビのバラエティだけを見るという、偏ってはいるが、膨大な(5500本のお笑い番組!)視聴時間を通し、絶妙な抽出力で、旋風のように過ぎ去る、"笑い"を定点観測している。
そのファーカスの合わせ方は、広角であり、決して、自分の趣味や、好みで語ろうとはしない。
その意味では、公平なる笑いの神の、俯瞰の視点を持ち、現在のテレビにおける笑いの、景観を見渡せる高みに達している。


読者の誰しもが、テレビの笑いに関して、「こういうアプローチがあるのか」と思わされるだろう。

とにかくページをめくるたびにお笑いが好きで良かったと、心底幸福な気分にさせてくれます。
手放しでお勧めします。

「赤めだか」著:立川談春

赤めだか
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立川 談春
扶桑社
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<関連記事>談志の言葉

「笑いの現場―ひょうきん族前夜からM‐1まで」著:ラサール石井


この3冊は、上記の関連記事で引用していない部分にこそ、個人的には非常に魅力を感じます。
それは例えば、立川談春の弟弟子志らくへの嫉妬。
あるいは、サンドウィッチマン富澤が、相方を伊達にこだわった理由と、伊達が同意するまでの揺れる思い。
さらには、コント赤信号がリーダーと呼ばれるようになった経緯や伝説のコント「ササニシキ」誕生の秘話など……。
まだ誰でもない売れない若手芸人が、いかにして売れていこうかと模索し、試行錯誤していく情熱が描かれている青春譚としていずれも一級品です。

hon-nin列伝 セキララなオンナたち」著:吉田豪

麻生久美子のインタビューを例に出すまでもなく、類まれなインタビュー技術で聞きだした、壮絶な女性芸能人たちの半生は、本当に凄まじい。
特に濃厚で病的な荻野目慶子や広田レオナは必読。


次点は、「あらびき団公式パンフレット」。
当たりハズレの差の大きい番組データ本の中で、これは個人的に好み。
どうでもいい情報がどうでもいい感じで乗っててこの番組らしくていい。