ゴッドタンという聖域


テレビ東京さんから「ゴッドタンMAJIUTA THE LIVE 完全版」を献本して頂きました。ありがとうございます!
その内容についてはこちらで、もう付け加える必要のないほど詳しく魅力的なレビューがされていますので、その面白さは十分に伝わっていると思います。
ですので、こちらでは、このDVD自体の内容ではなく、前から書こうと思っていた「ゴッドタン」という番組そのものについて出演者、スタッフの証言*1をもとに振り返ってみたいと思います。


と、その前にこのDVDを観て感じたことをひとつだけ。
今回のDVDは、そのライブの臨場感を出来る限りそのまま伝えるために、(たぶん)ほぼノーカット。テロップ処理もほとんどありません*2
だから、見比べると、テレビ放送での編集がいかに一般の視聴者に対し見やすくなるように工夫されているか*3がよく分かって面白いです。
あともうひとつ。
やっぱりこの番組のひとつのアクセントになっているのは松丸アナだなぁ、と。特典映像での雰囲気なんかを見て改めてそう思いました。
この番組は「プロフェッショナルな手作り感」が肝だと思いますが、その雰囲気を体現しているのは実はこの人じゃないかと思います。
大江アナや大橋アナに隠れがちですが、バラエティアナとしての魅力は大きく、なおかつ意外な批評眼と表現力は見逃せません。
たとえば、「お笑いパーフェクトBOOK 」の“芸人マジ歌”アンケートで、「マジ歌芸人の音楽にそれぞれ新たな“ジャンル名”をつけるとしたら?」という問いに、他のレギュラー陣の誰よりも見事に答えています。
劇団ひとりに対しては「カミングアウトブルース」、日村は「パクリポップス」、ケンドーコバヤシ*4には「ゲリラバラード」と。そして、極めつけは、東京03の角田への

負け犬ロック


さて、「ゴッドタン」は、「ワルふざけの最高峰」あるいは「バカの聖域」などと言われてる。
プロデューサーの佐久間氏は、この番組を「ゆるくない“お笑いサークル”」と形容している。

スタッフもほかにいろんな仕事を持っている人たちが、わざわざ寝る間を割いて作っている番組なんですよ。「この演者の笑いが好きだから」という理由だけで。だから、ムリして嫌なことはやらなくてもいいだろ、という思いはありますね。これは演者とスタッフに共通していることなんですけど「これは『ゴッドタン』っぽくないから止めよう」という認識はなんとなくありますね。(「QJ(Vol.75)」より)

だから、最初低視聴率だった「マジ歌」などは、他の番組なら続くはずのない企画だったにも関わらず、続けていくうちに、芸人たちのその場のノリとアイデアがどんどん積み重なって、看板企画にまで成長していきました。

一番大事にしているのは現場の空気感です。現場の奇跡に期待するわけじゃないけど、現場で面白いものが出てきたら作ってきたものを全部捨てる。(「QJ(Vol.82)」より)

構成作家のオークラは、「ゴッドタン」は他の番組や舞台とは違う作り方をしていると証言している。

今まで舞台などでは、いかに成立させるかを考えてネタを作ってきたんですが、『ゴッドタン』では成立してないものをやろうという気持ちがあるんです。ちょっと破壊的なことをやろうって。セオリーとしてやらなきゃいけないをやらないことで、新しいものが生まれる瞬間があるんです。(「お笑いパーフェクトBOOK 」より)

僕らは、この番組で何度も奇跡が起きる瞬間を目の当たりにしている。
そうして、「キス我慢選手権」や「マジ歌」といった看板企画が生まれていった。
おぎやはぎ矢作もこの番組について「毎回、面白いと思ったことをやってるだけ」と言う。
松丸アナも「いつも収録が終わると変なテンションになるんです」と他の番組とは違うと話す。
準レギュラーのバナナマン日村はその高揚感をこう表現している。

”番組やってる感”があんまりなくて、飲み屋で遊んでたことを本気でやってる感じ。収録が終わって帰ると泣きそうになったり……。
あの時のあのノリをやり抜いたんだ、って……。
男性スタッフが考えた企画ってのが丸出しですよね。ゴッドタン全体がそうなんですけど、基本、センスのある男の子の悪ふざけなんですよ。(「週舌ゴッドタン」より)

出演者、スタッフが“お笑いサークル”のように自分達が好きなものを、ぬるま湯にならない絶妙な緊張感で一流のプロフェッショナルとして、真剣に取り組み実現させていく。

面白いテレビを見れば、明日もがんばれる人がちゃんといると信じて、そういう人たちに向けて「これ面白いでしょ!」というものをやり続けたいですね。僕がそうでしたから。テレビが死ぬほど好きで、テレビばっかり見てましたから。最近「テレビがダメだ」という雑音が耳に入ってきますけど「あれ、みんなテレビ好きじゃなかったっけ?」って。やっぱり「テレビが好き」って気持ちは忘れちゃいけないと思うんですよね。(佐久間P「QJ(Vol.82)」より)

*1:「ゴッドタン」って何故か、雑誌などに特集されることが極端に少ない。その面白さ、重要さに比べて。当然「QJ」などで巻頭特集しても良さそうなのに。

*2:LAからの生中継というテイでVTR出演した秋山の部分は歌詞を中心にテロップ入り。これは会場でも同様。

*3:たとえば、「マジ歌」のお笑い的要素において、いかに「牛乳」が大きな役割を果たしていたかが分かります。「“マジメに聴きたいけど聴けないようなルール”を乗っけたら面白いんじゃないかと(佐久間P)」考えられたルールは“笑ってはいけない”状況を作り上げました。この状況が大きな笑いを起こすことは「ガキの使い」をはじめとして数々の番組が証明しています。さらに、設楽の巧みな笑いの誘導、コントロールや香田晋らの牛乳こぼし芸が加わることで、大きな相乗効果を生んでいます。

*4:そういえば、今回、大満足の「マジ歌ライブ」で唯一不満だったのがケンドーコバヤシの不在。スケジュールの都合や、秋山が担う役割と被るなどの理由があるのかと思いましたが、やっぱりケンコバの魅力をもっとも活かしている東京の番組ってこの番組だと思うから。