太田光を育てた父親の肖像


11月22日に放送された「ボクらの時代」のゲストは風吹ジュンと向田和子(向田邦子の妹)、そして向田邦子の大ファンである太田光
その向田作品を語りながら、話題は父親像へと向かっていきました。
そして、太田が語った彼の父親の姿は、太田光を紐解くうえで非常に重要なものではないかと思うので、ここに書き留めておきます。

親父は寺内貫太郎的なああいう人じゃなくて、いっつも情けないことばっかりいう親父なんですよ。
ただね、自分の父親ながらカッコイイなと思った瞬間があって、
それは母親と3人で家族旅行なんですけど、
ウチの親父は車が好きで、運転するのが好きなんですけど、下手糞なんですよ。
必ず僕が酔って、山道をこう行ったら、前の車が止まったんですよね。


だからこっちも止まって、何やってるんだろうって見たら、
前の車と、もうひとつ前の車の奴ともめだして、
一番前の車の奴が、これ(ヤクザ)もんの奴で「テメエ、このヤロウ!」って。
接触事故というよりは、なんか気に入らなかったことがあったのか知らないけど、
バコバコ殴ってるんですよ!
それで、しばらく見守っていて、
ウチの親父が、こう見てて、車が行き去った後に、
「あぁ、怖かったなぁ」って言ったんですよ(笑)。
それで「俺なんかブルブル震えちゃってさ」って言ったんですよね。
そこは僕にとっては、ああ、こういう親父は好きだな、って、その時思ったんですね。


ウチのお袋は「情けないわね、あんた」って言って、
ワアーって車の中で笑ったんですよ、家族3人で。
なんだろうな、面白いな、この親父って、子供心に思いましたね。


父親は戦争に行く世代よりちょっと若いんですよね。
その時の、当時の戦争の話もたまにしてくれて、
「俺、ヤでさぁ」っていう話をするわけ。
「だってさ、ああいうタマとか当たったら絶対痛いだろ!」って言うんですよ(笑)。
そういう話をしてくれたのが、親父、正直だなっていうのと、
そういうのでいいんだっていうか、いいんだっていうのもなんだけど、
いわゆるマッチョみたいなフリしてる連中は、無理してるな、こいつって。
やっぱ日本人っていうのはどっか負けてるっていうのがあって、
無理してアメリカみたいにマッチョみたいなフリしてもしょうがねえだろ、って
なんかそれが僕は根っこにあるような気がします。

なんか、この話を聞いて、今の太田の立ち居振る舞いの美意識*1の在処を見た気がしました。

*1:何をもってカッコイイとするのか