2010年テレビお笑い界を振り返る(芸人・タレント編)

前回は番組単位で振り返りましたが、今回は芸人・タレント個人単位で振り返ります。

MVP

オードリー DVDオードリー
2010年MVPを一組だけ選ぶなら難しいですがオードリーといっていいのではないでしょうか。本当に、2010年働きまくりました。ピンの仕事も多い中、コンビだけのテレビ番組出演本数が最多という驚異的記録。さらに『ANN』をはじめとしてラジオでも大活躍、CSでも『カスカスTV』などで、ライブイベントでも圧倒的な存在感を見せつけました。何よりコアなお笑いファンからごく一般的なお茶の間層まで全方位的にその魅力が伝わっているのが凄いです。すでに2周目はもとより3周目、4周目まで回り完全にテレビの主役となったと思います。ゼロ年代に続いた長いお笑いブームの最大の功績のひとつに、「オードリーの発見」というものが挙げられるのではないでしょうか。ごく近い将来持つことになるであろう地上波での彼らの冠レギュラー番組が、ゴールデンになるのか深夜になるのか、あるいはその両方になるのかが、その後のオードリーを占う上で興味深いところだと思います。


フットボールアワー後藤
そして、2010年MVPに匹敵する大躍進を果たしたのがフットボールアワー後藤でしょう。『やりすぎコージー』での「ギター後藤」いじりあたりを境に、もともと持っていた実力が覚醒。周りの芸人も彼の活かし方を完全に把握したのにあいまって、いじられる側にまわっても、いじる側に回っても抜群のフレーズとドヤ顔で各番組を席巻していました。特に上半期は『マルさまぁ〜ず』、下半期は『雑学王』でのエースといっていい活躍は目をみはるものでした。
マツコ・デラックス
芸人ではありませんが、芸人以上に芸人らしい異形感で強烈な存在感だったマツコ。抜群の批評性と有吉にも通じる「防御力」の高さ(巧みなシフトチェンジ)、そして言葉だけでなく、強烈な顔芸といくつもの武器を持って、凡百の毒舌コメンテーターと一線を画す活躍を見せてくれました。
RG
フット後藤の躍進っぷりはお笑いファン万人が認めるところだとは思いますが、個人的にはRGの躍進も印象的です。
かつて「ハッスル」というプロレスイベントでエースの一角として活躍していたHGのお荷物として本気の嫌悪感からブーイングを浴び嘲笑を受けていたRG。しかし、次第にそのブーイングし甲斐のある振る舞いにファンは彼にブーイングすることが快感になり、彼もそのブーイングをエネルギーに自らのポテンシャルを高めていきました。やがて、彼はメインクラスの選手として、トップレスラーたちと戦い、大きな声援を集め、「ハッスル」のヒーローの一人になっていきました。それは奇跡のようなおとぎ話のような一人の英雄譚だったのです。
それと同じことが、1年くらい遅れてバラエティ界に起ったのです。彼はついに『アメトーーク』でも「RG同好会」なる企画で取り上げられると、年末の『M-1』では大事な大事な前説を任せられるまでになったのです。
年明け、吉本芸人が総出演するテレビ東京の『6時間笑いっぱなし伝説』ではオープニングアクトに抜擢。逆にHGがRGを真似たコスチュームで出演しているのを見て東野は「まさに人生すごろく」と称しました。


・その他
有吉、ブラマヨは相変わらず大活躍でした。南原の復活、バナナマンさまぁ〜ずバカリズムの活躍も目立ちました。芸人以外では田原総一朗武田鉄矢が再び注目されたことが大きなトピックだったと思います。
アンガールズ田中、アンジャッシュ(渡部&児嶋それぞれとも)あたりは来年さらに注目すべき芸人ではないでしょうか。

新人王

ピース
2010年の(あくまでもテレビでの)新人王がピースということに異論を挟む余地はないでしょう。
綾部の現在のバラエティ番組が求める資質に合わせた確実なトーク力。そして、又吉の独特な存在感も次第にテレビサイズに適応していきました。
『キング・オブ・コント』『M-1グランプリ』と2大コンテスト番組それぞれで決勝にも進出。吉本のゴリ押しと揶揄されがちですが、決勝でその実力を見せつけました。
正反対の個性が今後どのような化学反応を見せるのか、特にこれから2週目に入っていくであろう又吉がどんな新たな引き出しを見せれるか楽しみです。


・その他
ハライチ、ねづっち、楽しんごがそれぞれ爪痕を残していったと思います。芸人以外では戦場カメラマン渡部陽一の活躍が目立ちました。
2011年は当然『M-1』でインパクトを残したスリムクラブが各番組で試されることになるでしょう。こちらも楽しみです。

ベストフレーズ2010

ベストフレーズといえば例年有吉の独壇場でしたが、2010年は、ここに後藤も躍進。数々の名フレーズを産み出していました。
そんな中でもっとも印象的だったのは、『しゃべくり007』で漫才を手短にやるように振られて後藤が言った

短い漫才なんてないんだよ!

漫才師のプライドがにじみ出たグッと来る名フレーズでした。
後藤はこの他にも

戦争ってね、これほど無意味なものなのよ(雑学王/第1次おける戦争*1で)
これは恥ずかしい……。心のちんちん丸出しですわ!(雑学王)
これがいたら、各都道府県にカッパいますよ(タレント名鑑/「モノマネ芸人いる?いない?クイズ」でどう考えてもネタな名前の芸人について)
そんなところに夜空無いわっ!芸人報道ミサイルマン西代が「ちんちんの小さい奴らの星になりたい」という発言に対して)

など名フレーズを連発していました。


以下、その他の芸人の名フレーズを一人1フレーズに厳選(有吉だけ2個)して列挙していきたいと思います。
(長くなるので畳みます。)

●「(インドとかに行って)人生観変わったとか言うヤツは、日本でたいした人生送ってないんですよ」(有吉/アナザースカイ)
●「だって、ここから起こる波風なんてさ、レッドカーペットの馴れ合いでしょ? ボクがトシとったせいなのかもしれないけど、なんだろ、ライブの最後のコーナーなのかな?」(有吉/ロンハー)
 「格付け」でしずる、はんにゃ、フルポンのやり取りを見て。
●「言葉って人を傷つけるためのものじゃない。人を幸せにする芸人になりたい」(フルポン村上/ロンハー)
 その有吉の攻撃に対してポン村上の決死の一撃。
●「俺2年前入院しててんけどこんなこと一個もなかった 俺ADの子の色紙2枚ぐらいもらっただけやで」(有野/めちゃイケ
 めちゃイケ』岡村復帰回で感動に寄り過ぎた流れを変え、「笑い」を救う一言。
●「えー、『レッドカーペット』も終わりまして、、、遂にひとりぼっちになりました(苦笑)。言うたらお笑い番組唯一の邪道なね、気持ちは常にタイガー・ジェット・シンのような、パンツの中に栓抜き入れるみたいな気持ちでお笑い番組やってましたけどもあれよあれよとですね、ベビーフェイスの番組たちが倒れていって気付いたら反則レスラー一人だけがリングに立ってるっていう(笑)」(東野/あらびき団
 あらびき団』のOPでネタ番組が次々終わっていくことに関して。
●「(岡村さんは)孤独を覚悟した人」(マツコ/めちゃイケ
 岡村隆史を表して。
●「(竹山は)面白いと思います。なんですか?竹山さんのその顔は。オイシくないって顔は。ってことは俺には面白くないっていってほしいんだろ?面白くないって言って欲しいんだったら世間だってそう言うよ。人に面白くないって言われて商売してるの、この人!」(有野/アリケン
 しゃべり場」で「面白くない芸人断トツ1位」と有吉に言われ切れる竹山に対して。
●「面白いか面白いかじゃなく、やるかやらないかです!」(RG/キリウリ)
 RGの提案に対して「それ面白いか?」と問われて。
●「勝算がなくても挑んでいくのが男ってもんでしょ!」(ケンコバ大日本アカン警察
 勝算はあるのか、と問われて。
●「結婚とは好きなひとが年老いていくのを見られる権利」(土田/アメトーーク
 「嫁大好き芸人」にて嫁が老けていくことについての話題で。
●「お前の股の方が汚いよ」(鳥居/ロンハー)
 「格付け」で小森純に「髪の毛が汚い」と言われて反撃。
●「お笑い現場検証はNOです!」(岡田圭右ガキの使い
 「ハイテンションベスト10」で。
●「そういうなんでも笑いがなくちゃいけないみたいな考え方、古いねん!」(コカド/リンカーン
 「説教先生」にて。
●「あれ?この人が『哲学』なんじゃない?」(伊集院/ニッポンの教養)
 爆笑問題田中を表して。
●「キサマからあの地獄絵図が始まったんだからな!覚えとけよ!俺のこの気持はこの現場だけで終わらねえからな!お前に関してだけは色んなもの引きずってやる!」(山里/ゴッドタン)
 「大声クイズ」で鈴木拓に数々のムチャぶりを受けて。
●「諦めました!」(江頭/アメトーーク
 謎かけをムチャぶりされて「整いました!」のフレーズで潔く言い放った一言。
●「どエラいことになってしまった…お二人の心中お察しします」(ウド/アメトーーク
 「実はツッコミがしたい芸人」の惨状を振り返って。
●「武器っていうのは置きたい時に置けるものや!」(吉田/ブラマヨとゆかいな仲間たち)
 若林にコンプレックスが武器になって羨ましいと言われて。
●「なんで自分の知ってること世界のすべてと思ってるんですか?」(小杉/ホンマでっか!?ニュース)
 磯野貴理に対して。
●「コップの中の嵐にすぎない」(博多大吉/アメトーーク
 アメトーーク』での活躍について。
●「俺なんにもしてないでしょ、いつもどおり!」(鈴木拓/オモバカ)
 今田に「全部お前のせい」と言われて。
●「僕はこの若林として生きてるだけなんですよ」(若林/ロンブークリスマスSP)
 「雨男」である自分に対して。
●「伝えたいことゼロですからね」(春日/検索ちゃんネタ祭り)
 オードリーの漫才を見た太田の「バカ漫才だね」の感想に対して。
●「いやー、でも仕事してるなぁー」(岡村/めちゃイケ
 命の湯に浸かりながら。
●「だから今の若手がね、5勝3敗ですわ〜とか言ってる奴は、売れねぇ〜よ!8戦全勝しなくてどうする!ヘッへ」(三村/お笑いさぁ〜ん
 若手時代のライブでの自分たちの無敵ぶりを述懐しながら。 
●「そのうち俺、ダウンタウンのおもんない方って言われそうやわ」(松本/ガキの使い
 浜田が天然ボケを連発することに対して。
●「俺ね、頭の中で(出場したシミュレーションして)『M-1』2年連続優勝してる」(さんま/さんまのまんま)
●「(万が一、落ちて怪我したら)『すみません、勝手なことして』と叫んでください」(紳助/オールスター感謝祭
 危険そうなゲームのルール説明で。
●「設定が甘いね」(タモリ笑っていいとも!
 テレフォンゲストのガチャピンに対して。

*1:http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/20101218#p1