「バカッター芸人」太田光の“後悔”

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恥ずかしながらエゴサーチャーと化して、Twitter、ブログ、ブクログ読書メーターAmazonなどに書いて頂いた感想を賛否問わずまとめました。一応だいたい時系列で並んでいるかと思います。結果、ほとんど「否」の意見もなく大変ありがたいのですが、賛否関わらず漏れていたりしたらお知らせ下さい。(逆に勝手に載せるなっていう場合も)

後悔

太田: 僕はね、心の中で「口は災いの元」って思った回数、世界一多いと思う。

爆笑問題太田光といえば、暴言を吐いたり余計なことを言ったりしてたびたび問題を起こしたり、その場の空気がおかしくなってしまうことが多い。
そんな時、見てる方としたら、また「“偽悪的”なことをしてるんだな」「あえて問題になると分かっててやってるんだろうな」と思ったりするのだが、実はそうではなく、本当にその場がウケると思ってやっていて、問題になったり変な空気になると“後悔”しているというのだ。
それが『ストライクTV』の最終回、伊集院光千原ジュニア小島慶子古坂大魔王土田晃之友近らが出演して行われた「太田への公開ダメ出しSP」で明かされた。

古坂: 無意識なんですよね?
太田: 無意識じゃないんですよ。あのね、ウケると思って言うんです。
古坂: ん?…アッハハハハ。
太田: これは、みんなが楽しんでくれるだろうって100%思ってるんです。言う時は。で、言い終わらない内にそうじゃないって気付くんです(笑)。
小島: 気がついてるんだ?(笑)
太田: 気がついてます。だから言い終わった時には落ち込んでます。そういう場合は。ホントに言ってる途中で後悔が始まってますからね。
小島: ええ! 意外!
太田: もう少しで後悔先に立つんですけどね(笑)
小島: アハハハ。
田中: 立て、早く

不粋に野暮に生きる

そういった自分の芸風を太田は「バカッター」などと一緒だと自嘲する。

太田: 僕はねぇ……素人なんですよねぇ……。
田中: あははは。
伊集院: 出た、衝撃の告白。
太田: よく成人式で暴れてる映像あるじゃないですか。あれ観て、こいつら何なんだよ、と思ったんですけど、ふと、テレビでオレがやってるの、これだなって(笑)。気がついたんです。よく、事件現場でピースしてる奴いるでしょ?ああやってテレビに出てきたんです。それでここまで来たもんですからだから最近のバカッターとかを全然否定出来ないんです。僕はアレの代表みたいなもん(笑)
田中: バカッター芸人!(笑)

これを微笑みながら聞いていた千原ジュニアは急に真剣な顔をして語り始める。

ジュニア: なぜそういう芸風になったかっていうのをすべて計算され尽くしてるところがすごいんです。
太田: え?(照れ笑い) 何を?……なんの魂胆なんだ?
ジュニア: あのね、たけしさんの『時効』っていう本があるんです。その「あとがき」を書いてるんですよ。そこに「太田光は芸人としてこうあるべきだ」「なぜオレはこうなったか」っていうのが綴られてるんですよ。これは、ホントに芸人は全員読んだほうがいい! あれ素晴らしいですから!

照れくさくなって笑うだけで何も言えなくなる太田。

この本のタイトルは“時効”だが、ビートたけしという人が犯した罪に“時効”などあるわけがないじゃないか、と私は思う。もしも、それを“悪”と呼ぶならば、私を含めた多くの人に、この人は“悪”を教えた。その行為に、“時効”があってたまるもんか、と。

その太田光が書いた『時効 (ソフトバンク文庫)』の「解説」はこのように始まる絶対に全文を読んで欲しい名文だ。

ビートたけしという“本物”がいるから、自分が“偽物”であるとことをつきつけられてしまう、という太田。だから「偽物が本物に近づくための唯一の手段」である「学習」をするしかない。

だからこそ私は、“真顔”にならざるを得ない。“真剣になることに対して照れる”のは、その照れた姿が様になるのは、本物である人だけだと私は思う。“ビートたけし”に“照れ”は似合うが、私が“照れ”ても無様なだけだ。言葉を変えればそれは“粋”ということである。“粋に生きる”ことが許されるのは、本物だけだ。私には粋に生きることは許されない。不粋に、野暮に生きることだけが私の道だと思っている。そしてそれこそが、“ビートたけし”が絶対にやらないことで、唯一私が“ビートたけし”の亜流であることから解放される可能性を感じられる突破口であると思っている。

ヒリヒリした関係

太田はそうやって不粋で野暮な存在であり続ける。
たとえばそれは伊集院光小島慶子の“犬猿の仲”という確執を執拗にいじり続けるということだ。

太田: これはね、小島慶子さんっていうのはTBSラジオでものすごい頭角をあらわしたんです! ところがそれを許さないのは伊集院
伊集院: (笑って首を振る)
太田: 伊集院はラジオの王様なんです。これはニッポン放送時代から延々続いて、今はもう圧倒的な強さを誇ってるんです、深夜ラジオの中でね。誰も抜けないんです!
伊集院: 太田さん、5万あげるからもうやめてくれる?
太田: (笑)。このラジオの王様、伊集院。何がウケてるか、分かりますか? (たっぷり間を開けて)人の悪口
一同: (笑)
太田: いや、みなさん、これは知っといてもらいたい。是非、聴いてみてください。テレビの伊集院とラジオの伊集院はガラッと違います! これはねえ、言われたくないところをグイグイ来るんです! ところが、この小島慶子、真っ直ぐな人間です。やるとなったら一生懸命やるわけです! そうするとねえ、深夜から見てる伊集院が突っつきたいところがいっぱいあるわけです。それをチクチクチクチク深夜の伊集院は突くわけですよっ
伊集院: (笑)
太田: 小島がこんなこと言ってたぞ!って!
田中: ハッハハハハハ!
小島: えーーっ、マジで?
伊集院: オレが言ってたのは悪口とかじゃないんです。正々堂々といけすかねえトークをするやつだなって(笑)。
太田: ほらほらほら!
小島: えーーーーーーーっ!
田中: あーーあ
太田: これですよ! これが僕的には面白いわけですよ。
小島: すごい衝撃!
太田: でしょ。僕はそういう関係、ヒリヒリした関係が好きなんです!
田中: ハッハハ。
小島: じゃ、“犬猿の仲”って半分合ってたんじゃん(笑)。

伊集院が小島慶子を「いかすかねえ」と思っていたことを知らなかった小島慶子は、太田のこの発言で知ることになるのだ。知らなくても良かったことを知ってしまった小島慶子は太田に「余計なお世話だ、バカヤロウ!」と叫んで、ちょうどタイミングが良いのか悪いのか最終回のこの収録を別の仕事の都合で途中で退出していった。


太田の「ヒリヒリした関係が好きなんです!」という言葉は、先ほどの『時効』の「あとがき」での言葉、そして冒頭の「後悔」と併せて、お笑い芸人としての太田光を考えるうえで重要なポイントではないかと思います。
有吉弘行のツイッターのフォロワーはなぜ300万人もいるのか 絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』の中で太田光を扱った「爆笑問題太田光の偏愛、あるいは太田光を変えたもう一人のタケシ」という章は、まさにこの部分について、ビートたけし以外に太田に多大な影響を与えたもう一人の「タケシ」との関係、そして相方・田中との関係を通して考察しています。
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