「天下を獲るためには手法を一回更新しないといけない」吉田尚記のアイドル論

10月から始まったフジテレビの新番組に『アフロの変』があります。
これは、ダイノジ大谷ノブ彦、レキシ・池田貴史という異色の組み合わせのMCに℃-ute岡井千聖を加えた3人が、「様々なジャンルの変なモノを紹介する」という番組です。
プレゼンするのはMC陣に加え、各界の最先端的な人たち。f:id:LittleBoy:20141028170515p:plain

そして初回に登場したひとりが、「よっぴー」*1こと吉田尚記でした。アイドルファンで知られるニッポン放送のアナウンサーです。ですから吉田が紹介するのはもちろん、アイドル。℃-uteの岡井を目の前にし、恐縮しつつも「これから天下を獲るグループ」として℃-uteでもハロプロでもないアイドルグループを紹介すると言うのです。
吉田はまず、その前提となる持論を発表します。

吉田: アイドルは天下を獲るためには手法を一回更新しないといけない

そして、アイドル界全体のことを解説し始めるのです。この吉田が振り返る近年のアイドル史がとても興味深かったので、記録しておきたいと思います。

アイドル志願時代(ハロプロ~)

吉田: 昔アイドルってアイドルをやりたいわけじゃないけど可愛い子がスカウトされて何となく嫌々アイドルやってるっていうのが代名詞だった。
池田: お姉ちゃんやお兄ちゃんが勝手に応募しちゃったみたいな。
吉田: そうそう。
岡井: そうだったんだぁ。自らオーディション受けてますから。
吉田: そこです! ハロープロジェクトが起こしたのはそういう革新なんですよ。アイドルを志願の時代にした。アイドルっていうのはやる気のある人にしかなれない職業になったんです、その瞬間に。

この後、℃-uteの岡井について「江戸幕府における勝海舟みたいな人」だというような話に脱線*2してしまったため、吉田が次の仕事(アイドルと一緒に出演するニコ生の番組)に行かなければならない時間に。そのため予定していた話を全くせず、初回から番組の構成を大幅に変更し、それを次回に持ち越すという展開になるというハプニングが起こってしまいます。
で、2回目の放送。吉田は復習的に「志願時代」をまとめます。

吉田: アイドルというのが、何となく選ばれてしまう時代から、自分が志願してなるものに。オーディションの過程もすべて放送されてたわけですよ。志願しないとなれなかったっていうのがそこで初めて始まりまして、この時にアイドルの質が変わるんですよ。どう変わったかと言うと、今までは「えーやる気なーい」とか楽屋で言ってるっていうイメージがあったじゃないですか。それとはまったく逆で、『やる気がないものは去れ』って時代になったんです。だから今のアイドルは全員が本当に“いい子”しかいないんです。アイドルをやりたいと思ってアイドルをやっている。

アイドル接触時代(AKB48~)

吉田: で、次に来るのがAKBなんですけど、AKBも初めは大規模なオーディションがあって、って普通のアイドルだった時代も結構長いんですよ、ブレイクする前に。そこで、レコード会社を移籍した時に、握手会を大規模にやるっていう戦略を取り入れた
池田: そのときは珍しかったの?
吉田: (握手会自体は)あったんですけど、あの規模であれだけの回数をやるっていうのはなかったんです。この瞬間にアイドルは「接触」という新しい時代に入るんです。

アイドルコラボ時代(ももクロ~)

吉田: AKBが時代を作ったまたちょっと後に、ももいろクローバーZが出てくるんです。ももクロも一番はじめ、今でも言ってますけど「私たち、今会えるアイドル」ですから。一番はじめは「会える」戦略だったんです。だけど、そこまでだったらAKBと同じなんで、天下は獲れない。では、どうしたかというと、そこからいろんな人たちとコラボレーションを始めるんですね。まさかこんな人たちと組むとは思えないっていう方たちと次々組んで、ももいろクローバーZはライブをやって、そもそもアイドルに興味がなかった人たちをどんどん取り込んでいったんです。
でも、ももクロの時にアイドルの魅力に気づいてくれた人がたくさんいるのも、すべてはハロプロだったり、AKBの人だったりの人たちがアイドルの魅力を拡張してきたからなんです。

アイドル完璧時代(TPD~)

大谷: その先なにがある?
吉田: そこで、僕がオススメしたいのが、“オリジナルメンバーが0人でただいま9人で活動中”の『東京パフォーマンスドール』。

ようやく本題です。吉田は「これから天下を獲るグループ」として新生・東京パフォーマンスドールを挙げるのです。

大谷: いましたねえ。昔のグループじゃないですか?
池田: 篠原涼子さんとか?
吉田: そうです。篠原涼子さんとか穴井夕子さんもそうです。一回、東京パフォーマンスドールは幕をおろしていたんですけど、去年名前を復活させて大規模オーディションをやって新たなメンバーをまた選んだんですよ。だから全員10代。今までアイドルの復活ってなかったじゃないですか。ドリームモーニング娘。みたいに卒業されてもう一度モーニング娘。の歌を歌っているみたいなことはあったんですけど。まったく違ったメンバーが、同じ名前を背負って現れて「東京パフォーマンスドール」って名乗ったんですよ。ここだけでも新しかったんですけど、ライブが驚異的なんです。アイドルのライブってどんどん高度化してるんですけど。

そこで吉田は東京パフォーマンスドールのライブ映像を紹介します。

東京パフォーマンスドール(Tokyo Performance Doll)/PLAY×LIVE『1×0』ANCORE EPISODE 1&2 Official Digest - YouTube

吉田: これPVじゃなくて劇場で生でやってます! プロジェクションマッピングです。後ろにプロジェクションの映像が流れていて、それと生のダンスがコラボレーションしてこういう状態のステージを作ってるんですよ。ライブパートだけじゃなく、一番はじめのレギュラー公演から前半が舞台、芝居の演出で、後半がダンスっていう構成でやってたんですよ。
池田: (北島)サブちゃん?
吉田: そうそうそう(笑)。基本一緒*3です。人前でやることの最終形じゃないですか。歌と演技と両方やってみせるっていうのを一番はじめからやったんですよ。まだアイドルとして経験をまったく積んでいない人たちが、1cmでも立ち位置がズレたらプロジェクションする場所がズレちゃうような、ものすごく厳しい難しいステージをやってるんです。
アイドルの色んな所が高度化していって本来アイドルって未完成じゃなきゃいけないし、スキルがあんまりなくても、可愛げとかそういうもので許されるものだったんですけど、今回、東京パフォーマンスドール手法として新しいのはアイドルとしてハイスキルなアイドルなんですよ。完璧なんです
大谷: (今の)モーニング娘。'14なんかもそうですよね?
吉田: それこそ、℃-uteみたいなアイドルが10年やっているうちにもうパフォーマンスとして劇団四季かよってレベルまで来てるわけですよ。
岡井: いやいや、そんな、そんな。
吉田: パフォーマンスとして純粋にスゴいものなんで、女の子たちが憧れて見に来るパターンもドンドン増えてますし。℃-uteは特にそうです。
岡井: この前、北海道にライブに行った時に、自分たちがジャニーズになったみたいに(女の子たちから)「キャー」って言われて、こんなに女性のファンが増えたんだって実感しました。
大谷: アイドルを女性が見る時代なんですよ。

と、ひとしきり熱くアイドル史を解説し、東京パフォーマンスドールのスゴさを紹介し終わると、よっぴーはやはり今回もアイドルとの次の仕事のため退出していくのでした。



ちなみにハロプロ以前の、特に70年代~80年代のアイドル史についてはクリス松村が思い入れたっぷりに書いた『「誰にも書けない」アイドル論』がかなり面白かったので、オススメです!

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*1:『オードリーのANN』的には「よっひ」

*2:この話もとても興味深いものでしたが。

*3:北島三郎明治座などで行われている公演も第1部が「国定忠治」などの芝居。第2部が「ヒットパレード」と呼ばれる歌という構成