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名脇役たちそれぞれの演技論

2月13日に発売された洋泉社のムック『バイプレーヤー読本』。
そのタイトルのとおり、ドラマや映画、舞台で活躍する名脇役、渋くて味のある個性派俳優たちに焦点をあてた本です。

バイプレーヤー読本 (洋泉社MOOK)

洋泉社 (2015-02-13)
売り上げランキング: 1,612

第1章の「バイプレイヤーファイル」では、戸次重幸、手塚とおる佐藤二朗小市慢太郎、川原和久、眞島秀和×山中崇大倉孝二緋田康人津田寛治という、僕を含めたある種の趣向の人たちにとっては垂涎の、錚々たる名脇役たちのロングインタビューが収録されています。
その中から、演技論を語っている部分の一部を抜粋してみました。

戸次重幸

宇宙犬作戦 DVD-BOX1戸次重幸は、大泉洋安田顕が所属する「TEAM NACS」のメンバー。ドラマでは『1リットルの涙』でのヒロインの担任教師役を皮切りに、朝ドラ『瞳』や『ザ・クイズショウ』、『裁判長っ!おなか空きました!』、『すべてがFになる』など数多くの作品に出演。『宇宙犬作戦』ではドラマ初主演を果たしています。

芝居って、ほんと面白いと思います。みんなで素敵なウソをついていきましょうっていう、ひとりではできない総合芸術ですもんね。
           (略)
僕は自分を「憑依型」ではなく、「操作型」と呼んでいるんですけど、頭の中に“小っちゃい戸次”がいて、ハードである僕を動かしている、というイメージなんですね。もちろん、気持ちがないと素敵なウソにならないので気持ちも大事なんですけど、その気持ちをどう外にあらわすかという訓練も必要で。

手塚とおる

太鼓持ちの達人~正しい××のほめ方~ Blu-ray BOX手塚とおるは、「劇団健康」を経て、様々な舞台に出演。『救命病棟24時』からテレビドラマに本格的に出演し始め、『半沢直樹』の悪役・古里役で大ブレイク。その後『ルーズヴェルト・ゲーム』の野球部監督役を経て、現在放送中の『太鼓持ちの達人~正しい××のほめ方~』で主演に抜擢されました。

僕の芝居の過剰さがリアルじゃない、と言う人もいる。でも、僕にはその“リアル”の意味がわからない。実はみんなが思ってるほど、人って淡々としてないんですよ。過剰に生きようとしているし、過剰に食べようとしているし、過剰に愛そうとしている。過剰なものが人間なんだと僕は思っていて。だから僕はそこをできるだけ過剰に演じたい。それが僕にとっての“リアル”なんです。(略)人はいつだって過剰に生きている。その過剰さをどう表現できるかが、僕にとって今いちばん大きなテーマですね。

佐藤二朗

裁判長っ!  おなか空きました! DVD-BOX 上巻 豪華版【初回限定生産】佐藤二朗は、自ら劇団「ちからわざ」を旗揚げ。「自転車キンクリート」などに参加し、舞台経験を積んだ後、堤幸彦に見出され『ブラックジャックⅡ』の医者役でドラマデビュー。その後、『勇者ヨシヒコ』シリーズなど福田雄一作品をはじめ数多く作品に出演。『拝啓トリュフォー様』で地上波ドラマ初主演。

佐藤二朗だからこうなる、“©佐藤二朗”みたいな芝居がもしかしたらあったのかなとは思います。
           (略)
その作品の質をあげる芝居がしたいってことですね。それにはやっぱり、その役が本物に見えるということが大事で、たとえば、『人間の証明』(04年)で刑事役をやったときも目指したのは、「こいつ誰? 本物の刑事?」と思ってもらえるような芝居。だから、わざと下手な芝居をしたんです。それからもうひとつ、「こんな人いるかも」とか「こんなこと言うかも」っていう、“かも”の感覚を大事にしています。(略)「こんなヤツいるわけない」と思ったら一瞬で観てる人は引いちゃうけど、その手前の微妙なところに面白さがあると思うんですよね。

小市慢太郎

救命病棟24時 第3シリーズ DVD-BOX小市慢太郎は、「劇団M.O.P」に参加。映画『張り込み』に主演し、本格的に映像作品に進出。
救命病棟24時』の第3シリーズに医者役で出演し広く知られるようになりました。他にドラマでは朝ドラ『まんてん』『てっぱん』、大河ドラマ龍馬伝』『八重の桜』や『クロコーチ』『信長協奏曲』などに出演。

「やるぞ!」という能動的な感じじゃなく、メイクして衣装着て、その場に行くと、なんかくるんですよ。昔は、自分のなかで考えて作りあげてやってみたこともあるけど、「なんかちゃうなあ」と。まず監督のお話を聞いて、役をイメージして「この人は、どういう服を着るんやろ」と思って現場行くと、衣装が用意されていえ、それを着ると、そこからインスパイアされて「ああ、なるほど」となる。ヘアメイクさんも小道具さんも同じで、それぞれのプロが、それぞれの思いやイメージを持ち寄ってくれて初めて「自分」が出来上がるんです。

川原和久

相棒シリーズ X DAY [DVD]川原和久は「劇団ショーマ」の立ち上げに参加。「演劇集団キャラメルボックス」などの客演を経てドラマ『秋の一族』に出演。
その後、『相棒』シリーズの伊丹刑事役でブレイク。伊丹を主人公にしたスピンオフ映画『相棒シリーズ X DAY』で映画初主演を果たしています。

小手先の芝居、思いつきの芝居はなるべくやらないで、キャラクターを肉づけしていきたいと。
           (略)
なぜそう演じたのかと聞かれて、「理由なんてないよ」って答えるのもカッコいいと思うんですけど。でも、僕はやっぱり芝居に“理屈”をつけたいんです。

眞島秀和山中崇

心中エレジー スペシャル・エディション [DVD]眞島秀和は、自主映画制作を経て李相日監督の『青~chong~』でいきなり映画デビューで主演。ドラマには『ゲゲゲの女房』や『フリーター、家を買う。』『クロコーチ』などに出演。現在も『まっしろ』に出演中。
山中崇は「NODA・MAP」などに参加。山下敦弘監督の映画『松ヶ根乱射事件』で注目を浴び、ドラマでは『闇金ウシジマくん』などに出演。朝ドラ『ごちそうさん』の室井さん役で人気に。
なお、眞島と山中は同じ事務所で1学年差ということで仲の良い間柄だそうです。

眞島: なにも考えずに役に入っていくこともあるし、気分を高めてから入ることもあるので、僕は本当にそれぞれですね。“なにも準備をしないで現場に立つ”ということが役作りの場合もあるし、相手役の方によっても変わりますね。
山中: “こういう風にやったら面白いかな”っていうのは考えて撮影に行きますけど、僕も現場での空気を大切にしますね。(略)あんまり頑固に自分の考えを持ちすぎちゃうと、相手や監督の意見と違いすぎたときに困っちゃいます。
眞島: 準備はするけれど、いかに現場で“準備したものを捨てられるか”っていうことだよね。

大倉孝二

ダブリンの鐘つきカビ人間 2002年版 [DVD]大倉孝二は「ナイロン100℃」に入団後、舞台を中心に活躍。映画『ピンポン』の佐久間(アクマ)役で強烈な印象を与え、大河ドラマ新選組!』や『ぼくの魔法使い』など三谷幸喜作品や宮藤官九郎作品を始めとして数多く出演。『ココリコミラクルタイプ』などのバラエティ番組にも出演。現在は『怪奇恋愛作戦』に出演中。

やっぱりね、タクトを振る人のやりたいことに沿うことが大事だと思うんですよ。それは映像でも舞台でも同じだと思うんですけど。とはいえ、一方では、期待どおりになんかやってやるものか、みたいな気持ちもあって(笑)。

緋田康人

ダメジン デラックス版 [DVD]緋田康人は「ラジカル・ガジベリビンバ・システム」在籍中に住田隆とともにお笑いコンビ「ビシバシステム」を結成。その後、脱退し、俳優に転身。ドラマ『木更津キャッツアイ』で美礼先生(薬師丸ひろ子)をストーキングする教頭役で、『半沢直樹』の小木曽次長役で、それぞれ強烈なインなパクトを与え、『ごめんね青春!』などに出演。

現場に臨むまでは、とにかくおぼえること。どういう状況になっても次のセリフが言えるようにすることです。うろおぼえだと、急に変わったときにそっちに気をとられてしまうので、セリフがとんでしまわないように、とにかくおぼえることを必死にしています。「役作り」というより、「おぼえる」!

津田寛治

警視庁捜査一課9係 season2 [DVD]津田寛治北野武監督の『ソナチネ』で映画デビュー。その後、北野作品の常連に。また竹中直人監督の『119』や森田芳光監督『模倣犯』、黒沢清監督『トウキョウソナタ』など数多くの映画に出演。
その後、数多くのドラマにも出演。2015年4月からスタートするドラマ『食の軍師』の主演が決まっています。

舞台では“伝える”芝居も大事ですけど、映像の場合は“感じる”ことがいちばん大切なんです。つまり、観客にどう伝えるかよりも、そこでおきていることをいかに感じるか。セリフ言うときの思い、相手のセリフを聞いているときの思い、自分が演じている人物は、今どんな気持ちでここに立っているのか。なにかを表現しようという意識すら捨てて、“感じる”ということが求められるんじゃないかと思います。


と、さわりだけでもめちゃくちゃ面白いインタビュー。他にも俳優を志すきっかけや、苦労時代の話、ターニングポイントになった作品でのエピソードなどなど興味深い話が連発ですので、必読です!

バイプレーヤー読本 (洋泉社MOOK)

洋泉社 (2015-02-13)
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ちなみに第3章の「バイプレイヤー大研究」では僕も2本コラムを書きました。
僕が書いたのは「芸人俳優」と「ミュージシャン俳優」についてです。
「芸人俳優」では、森繁久彌ビートたけしといった芸人×俳優の歴史をざっくり振り返りつつ、伊東四朗板尾創路などの名脇役を、「ミュージシャン俳優」は岸部一徳、浜野謙太、星野源中村達也あたりを中心に紹介しつつ、及川光博もねじ込みました。