ビートたけしと石橋貴明が総合司会を務める『日曜ゴールデンで何やってんだテレビ』では1月20日に「貴明が浅草で徹底取材!ビートたけしが出来るまで」として浅草時代のビートたけしを、27日に「貴明が六本木でみた!ビートたけしの歴史」として、漫才ブーム以降からフライデー事件直後のビートたけしを島田洋七とともに振り返っていてとても貴重で興味深いものだった。
そして27日放送回の後半には“芸能人が持ち込むいわくつきの品々「ワケアリ商品」を査定する”「日曜質店」に爆笑問題がゲスト出演。ビートたけし、石橋貴明、爆笑問題という関東芸人の巨頭3組が揃い踏みした。
そこに太田光が持ち込んだワケアリ商品が、立川談志、北野武、太田光の3人のサインが並んで書かれたサイン色紙だった。ちなみに3人のサインの上部にはモザイクが。たけしはその“放送禁止”の円形のマークを指し「お日様マークだろ?」と笑った。
そして太田は、このサインが書かれた時のことを話し始める。
太田: たけしさんと談志師匠がずーっと10年くらい……、
たけし: 会ってなかったよね。
太田: 談志師匠が(病気で)だんだん元気なくなってきてて。僕は当時談志師匠とラジオ番組やってて、たけしさんの話はよく出るんですよ。たけしさんに会いたいですか?って聞いたら「まぁ会いたいっちゃ会いたいけど…」って照れながらも会いたそうな感じだったんですよ。で、たけしさんと番組やった時に「師匠が会いたそうですよ」って言ったら、そん時のタケちゃんが……、
田中: タケちゃんって!
太田: (たけしさんの)一言がカッコ良かったんですよ。「たけしさんと会えば師匠は元気になると思います」って言ったら「じゃ、おいらが怒られに行くか!」って。うーわっ! かっこいい! と思って。
たけし: (照笑)
太田: 「じゃあ是非会ってくださいよ」って言ったらたけしさんが「お前が席設けてくれよ」って。「俺は無理ですよ!そんな2人に囲まれて何も話せないし」って言ったんですけど、そんな機会めったにないな、と思って、ウチ帰って。それで談志師匠にも「たけしさんが食事したいって言ってます」って伝えて、たけしさんにも伝えて会ったんですよ。3人だけですよ!
田中: マネージャーさんとか誰も居ないわけでしょ?
太田: そうですよ! そん時、談志師匠が、僕は時間より30分早く行ったら、それよりさらに30分早く師匠がいた(笑)。おれ、焦って! まだ来てないだろうと思ったら「師匠いらしてますよ」って。だから師匠はよっぽど嬉しかったんだと思うんです。たけしさんと会えることが。(略)その後、たけしさんが仕事終わりで30分後に来て。
貴明: 10数年ぶりの……。
太田: 10数年ぶりの再会! 2人とも照れちゃって何にも話さない!
田中&貴明: (爆笑)
たけし: (無言で肯く)
太田: 困っちゃって、おれも! どうしたらいいんだかって! それで、ちょっとずつ昔話とか、たけしさんが落語のことを「師匠、あれどうなんですか?」って師匠が教えるっていうような会話を、僕もう横でこんな幸せなことはない! ビートたけしと立川談志がいるわけですから。ずーっと聞いてて。そしたら師匠が途中で「オレね、さっきから小便したいんだ」言うんですよ。「小便したいんだけど今行くかどうか迷ってる」「師匠、それは行ってきたほうがいいんじゃないですか?」って言ったら「いやー、でもたけしが来てくれて太田もいて、こんな楽しいことはない。それをオレが小便に行くことで中断するのが忍びない」って言うんですよ。「いやいや!それは師匠、行ったほうがいいですよ、ねえ、たけしさん!」って言ったらたけしさんは別に何も言わずに黙ってるんですよ。「取りあえず行ってきてくださいよ」って言ったら師匠が「オレはやっぱり我慢することにする」
田中: (笑)
太田: 「この空気を変えたくない」って。「そうですか、じゃあ…」って話し始めたらたけしさんが「師匠すいません。ションベン行ってきます!」
一同: (爆笑)
田中: したかったんだ、たけしさん!(笑)
太田: あんたも我慢してたのか!って(笑)。2時間ぐらい話しましたっけ、あの時?
たけし: うーん、そうだね。なんかね、だから生きてる時に訊きたいこと、まだいっぱいあったな…。
この3人の会食はたけしがフランスで北野武監督として芸術文化勲章「コマンドール」を受賞したばかりの時に行われた。
太田: 師匠が「なんだ、あんなフランスの勲章もらって喜びやがって!」って言うわけですよ。「やー、アレ持ってると税関通れるんですよ」みたいな冗談をやりあってて、悪口言うじゃないですか、談志師匠が。「調子乗ってるんじゃないよ」みたいな。言ってたのにたけしさんがトイレ行った時に俺に「やっぱアイツすげえな」って言ったんですよ! 「アイツさ、元々、フランス座いたんだぜ。それがフランスで勲章!?」
たけし: (笑)
このエピソードを聞いた時のたけしの嬉しそうな笑顔ったらなかった。
そして冒頭に太田が手にしたサイン色紙誕生の経緯を語る。
太田: それで最後に談志師匠が「ちょっと今日の記念によぉ」って言って色紙3枚。また可愛いんですよ! 師匠が鞄の中にね、
貴明: 自分で持ってきたの!?
太田: 自分で持ってきたんですよ! 色紙3枚持ってきてるんです。「3人で書こうよ」「お前らも書いてさ」って言って。師匠が「どうする? オレが書いてもいいけどそれぞれのコレ(“お日様マーク(笑)”)にするか?」って言って(笑)
田中: くだらねーな! くっだらねー!(笑)
太田: おれとたけしさん「いや、師匠書いて下さい!」って。
たけしも自宅に大事に「飾ってある」というそのサイン色紙に書かれた3人のサインの字はいつになく緊張して書かれているという。
そしてたけしのサインは「ビートたけし」ではなく「北野武」。
その理由をたけしは「談志師匠と話してる時はやっぱり『北野武』だよな」と語る。
太田: ホントカッコ良かったですよ、2人が。
貴明: それをセッティングしたっていうね!
太田: そう! 俺が奢ったんです!
貴明: オーー! それ、領収書もらっておけば良かったね!
太田: エヘヘ。コイツら、俺が(おごった)!
田中: コイツらじゃねえ!
太田: アハハハ! もう一生の自慢ですね!
田中: それ優しさですよね。コイツに奢らせるっていう。
たけし: それが分かってたら、おみや持って帰ったんだけどさ、
太田: アッハハ!
たけし: もしかして俺の払いになるかも分からないからさ、ちょっと構えちゃった(笑)
すべてが粋なこの会食は、その別れ方も格別に粋だった。
太田: 帰りがまたカッコ良かったんですよ! たけしさん、ロールスロイスじゃないですか。イヤミなくらいのロールスロイス。真っ白の。
たけし: (苦笑)
太田: それで、師匠は電車なんですよね。
田中: あの人、電車好きだからね。
太田: 「オレも電車できたからタクシーで帰るから」って言って。「お前先行け」ってたけしさんに言って。それでたけしさんがロールスロイスに乗って駐車場から店の前まで来て、談志師匠がたけしさんを見送る、という。それで談志師匠が「なんだコレ! インチキだろ、こんなの!」って言うわけですよ。そしたらたけしさんがまた「ちょっとバッタもん買いました」っていう冗談を交わして。そしたら周りにいた若者がびっくりですよ。いきなりたけしさんと談志師匠が出てきたもんだから「あーー!」って言ってみんな大騒ぎで。それでロールスロイスで、たけしさんが「じゃあ、失礼します」って颯爽と去っていく後ろに向かって「このインチキ野郎!」って談志師匠が罵声を浴びせるっていう(笑)
一同: (爆笑)
たけし: 俺、聞こえて止めて降りて行こうと思ったの。「なんだコノヤロウ!」って。でもさすがに出来なかったな(笑)。
太田: あれは涙出るくらいでしたね、あの光景は。
田中: その後、じゃあ談志師匠はタクシー乗って帰ったの?
太田: そう。談志師匠をタクシーで見送って、おれはすぐ、しょんべんしに……。
一同: (爆笑)
太田: おれが一番我慢してた! (トイレなんて)行けないですから!