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「『大タモリ年表』第2弾公開」 タモリのデビューと『徹子の部屋』

タモリ タモリ学


本日、イースト・プレスが運営するWeb文芸誌マトグロッソ」に「タモリ年表」の第2弾が掲載されました。
ちなみに「大タモリ年表」についての詳しい説明はこちらに詳しく説明しています。
簡単にいえば、3月26日に発売される『タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?』に掲載予定で作ったけど、あまりに膨大になったため、収録できなかったタモリの年表です。

第1弾は「タモリ前史」ともいえる1945年~1974年、誕生からサラリーマン時代まで。

『タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?』特別付録 大タモリ年表 #1| Matogrosso

そして本日掲載された第2弾は「いいとも!前史」ともいえる1975年~1980年、デビュー直後のカルト芸人時代です。

『タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?』特別付録 大タモリ年表 #2| Matogrosso


さて、この時期のタモリの活動はあまり記録に残っておらず、調べていくと謎や通説との矛盾がたくさん出てきてしまいます。
その中で、僕が一番の疑問だった部分を僕なりに考察した経緯を「水道橋博士のメルマ旬報」の「芸人ミステリーズ」に「特別編」として書きました。これは今回掲載された第2弾の年表を読む上で知ってもらっておいたほうがより楽しめると思うのでブログ用に一部修正して再録します。

「芸人ミステリーズ」#33「特別編」タモリのデビューと『徹子の部屋

まずタモリのデビューとその直後の「定説」をまとめるとこうです。

タモリのテレビデビューはテレビ朝日(当時NET)のお昼の生放送(『アフタヌーンショー』)で、赤塚不二夫の番組だった。
・放送時期は1975年の夏休みの終わり頃。
・その放送を見ていた黒柳徹子が牧師を演じたタモリの面白さに驚き、赤塚不二夫(もしくはテレビ局)に電話で問い合わせた。
・それがきっかけとなりタモリが『徹子の部屋』に出演。これがタモリにとってテレビ2回目の出演である。
・その出演時はまだタレントとして生きていくことを決めていなかったので「森田一義」名義で出演した。

これらは毎年年末に恒例となっている『徹子の部屋』にタモリがゲスト出演する回で、ここ数年、黒柳徹子から繰り返し語られることです。特に「テレビ出演2回目が『徹子の部屋』でそれがほぼ素人時代だった」というのはタモリのデビュー前後の特異な出世スピードをよくあらわすエピソードのひとつとして有名です。
また、タモリ自身も文藝別冊の『赤塚不二夫』追悼号のインタビューで以下のとおりほぼ同様に振り返っています。

アフタヌーンショー」という番組の夏休み特集で「漫画ができるまで」という企画をやる、と。赤塚さんをはじめ漫画家が何人か出て、こういうふうに漫画ができるという内容で、ぼくはコーナーの合間に登場して何かを説明する牧師役でした。それが最初のテレビ出演なんだけど、なんたって夏休み特集だから8月終わり頃の生放送だったんです。
(略)
で、「アフタヌーンショー」の後、黒柳徹子さんの「徹子の部屋」に呼ばれて。それがまた一ヶ月後くらいだった(後略)。
(『赤塚不二夫 (KAWADE夢ムック 文藝別冊)』より)


しかし、これらの証言にはいくつか疑問点が残ります。
まずタモリのデビューした番組ですが、これはおそらく『土曜ショー』の誤りだと思われます。
1975年夏の『アフタヌーンショー』のテレビ欄をつぶさに見てみましたが、そこに赤塚不二夫が出演した形跡はありませんでした。しかし、1975年8月30日の「土曜日」の正午からの生放送『土曜ショー』に「マンガ大行進!赤塚不二夫ショー」という記載がありました。タモリの「8月終わり頃の生放送」という証言にも合致します。石ノ森章太郎も出演者として名を連ねており、「漫画家が何人か出て」というのも合っています。おそらく、当時のテレ朝のお昼といえば『アフタヌーンショー』というイメージは強いことから、番組名に関してはタモリさんの単純な記憶違いなのではないでしょうか。


徹子の部屋』にタモリが初出演したのは、1977年8月11日と言われています。実際、『徹子の部屋』20周年特番でタモリがゲスト出演し、過去の映像や画像を振り返った際、77年に出演した当時の写真が「タモリ初出演」として紹介されています。出演回数を計算しても77年が初出演というのはほぼ間違いないでしょう。で、この日の朝日新聞のテレビ欄を調べてみると「居候入門学・Mrタモリ」となっています。
森田一義」名義ではないのです。
ちなみに当時タモリは「タモリ」「タモリ一義」「Mrタモリ」など名義が固定されていませんでした。
「77年8月」がテレビ出演2回目というのもあり得ません。少なくても『空飛ぶモンティ・パイソン』(テレビ東京)が1976年4月9日~9月24日に放送されており、タモリはこの番組にレギュラー出演しているからです。
だとすると「森田一義」名義で出演した『徹子の部屋』は名義違いにより20周年特番の時は発見できていなかったのでしょうか。しかし、そもそも『徹子の部屋』が開始したのは76年2月です。75年8月にデビューして、その直後に『徹子の部屋』出演という証言と大きく食い違います。


とすると黒柳徹子はウソをついているのでしょうか?
それこそ考えにくいことです。そんなウソをつく必要はないから。
だとしたらやはり記憶違いという可能性が高い。その中で「黒柳徹子が牧師を演じたタモリの面白さに驚き、赤塚不二夫(もしくはテレビ局)に電話で問い合わせた」という印象的なエピソードの記憶がすり替わることは考えにくいでしょう。とすると、タモリが「森田一義」名義で出演したのは同じ黒柳徹子の番組でも『徹子の部屋』ではない可能性が高いのではないかと思いました。
実は『徹子の部屋』には前身番組と言える番組がありました。
それが『13時ショー』です。黒柳徹子はこの番組のメイン司会を務めています。
この『13時ショー』はトークショー中心のワイドショーだったようです。
この番組と記憶違いをしている可能性が高いんじゃないか、と僕は推測しました。
75年8月の直後ということは75年9月だろう、そう思ってテレビ欄をまた見直すといきなり
「9月8日:珍芸スターお笑い大行進」
などというそれっぽいラテ欄。その後も、月に何本かは「素人芸人のネタ合戦」などの文字が書かれているのです。おそらく、タモリ黒柳徹子からの直接の電話により出演したのは『徹子の部屋』ではなく『13時ショー』ではないでしょうか。


しかし、これだけでは確証というわけにはいきません。
他に何かないか、と資料を読み漁っていると、気になる記述を発見したのです。
それは山下洋輔の著した『ピアノ弾き翔んだ』に書かれていました。
言うまでもなく山下はタモリを「発見」した人物。山下がタモリの凄さを行きつけのバー「ジャックの豆の木」で吹聴したことから、その店のママA子女史の発案で「伝説の九州の男・森田を呼ぶ会」が結成されてタモリが上京し、その後テレビデビューしたことはあまりにも有名な話です。そして、このA子女史が“社長”、山下が“常務取締役”となってタモリのマネージメント事務所「オフィス・ゴスミダ」(「ゴスミダ」はもちろんタモリのデタラメ韓国語に頻出するフレーズ)を設立したのもまたタモリファンにとってはお馴染みかもしれません。名前からも分かるとおり、マネージメント事務所といっても“お遊び”の一貫。本気で仕事を獲ってくるといった類のものではありませんでした。
けれど、この「オフィス・ゴスミダ」が2度ほど実際に“仕事”をしている、と山下は本書で述懐しています。その2度目は京都大学の学園祭。(この経費がほとんど持ち出しになってしまったことで「オフィス・ゴスミダは自らの非力を認め解散」し、タモリ高平哲郎に任せられることになったという)
そして注目すべきは一回目の“仕事”についての記述です。

一回目は仕事というよりもつきそいだった。10チャンネル*1の素人芸能合戦のような昼間の番組に出られることになったのだ。この番組の司会者は黒柳徹子女史であり、女史は少し前に赤塚不二夫氏の推薦で初めてテレビの画面に出たタモリを見て絶賛し、すぐにテレビ局に電話した程だった。
(『ピアノ弾き翔んだ』より)

この証言はタモリの2度目のテレビ出演が『13時ショー』であることを裏付けているのではないでしょうか。
というわけで僕なりの結論をまとめるとこうなります。

タモリのテレビデビューはテレビ朝日(当時NET)のお昼の生放送『土曜ショー』「マンガ大行進!赤塚不二夫ショー」。(→ほぼ確定)
・放送は1975年8月30日。(→ほぼ確定)
・その放送を見ていた黒柳徹子が牧師を演じたタモリの面白さに驚き、赤塚不二夫(もしくはテレビ局)に電話で問い合わせた。(→確定)
・それがきっかけとなりタモリが『13時ショー』に出演。これがタモリにとってテレビ2回目の出演である。(→たぶん)
・その出演時はまだタレントとして生きていくことを決めていなかったので「森田一義」名義で出演した。(→ほぼ確定)


もちろんだからといってタモリの特異性が損なうものではありません。『徹子の部屋』に実際に出演した77年当時でもタモリは一部ではカルト的な人気を既に獲得していましたが、ほぼ新人には変わりありませんから。
けれど、こういう「どうでもいいこと」にも出来る限りこだわって調べて『タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?』は書かれています*2
それでは最後にやきそばかおるさんがまとめられている「タモリさん発言集340選」よりタモリ名言のひとつで締めたいと思います。

「一見、どうでもいい話題をじっくり掘り下げていくと、やっぱりどうでもいいんだよね」


※こちらは「芸人ミステリーズ」傑作選です。4月3日発売!

*1:テレビ朝日、当時NET

*2:と言っても上に書いたようなことはほとんど本文中には書いてませんが