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西加奈子という救い

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1月15日、西加奈子が『サラバ!』で第152回の直木賞を受賞したことが発表されました。

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西加奈子といえば又吉直樹若林正恭光浦靖子といったお笑い芸人にもファンが多いことで知られています。
またテレビなどで見ると、たとえ小説を読んだことがなくても、その愛らしい人となりと語り口で一発でファンになってしまう魅力がある人です。
最近も、『SWITCHインタビュー達人達』で椎名林檎と対談し、その魅力を発散させていました。(こちらは、2月7日に直木賞受賞記念ということで再放送されるそうなので未見の方は是非!)
直木賞受賞直後の1月17日には「人生で一番チヤホヤされてます」と愛らしい笑顔で『王様のブランチ』に出演。

西: 猫と一緒に住んでて猫がいてくれることが凄くいい。リラックスもするし、何か厳しい目で見てる感じもするし(笑)。時々めっちゃ見てるんですよ、パソコンの画面。そういうのが凄く助かります。作家と猫は相性いいと思います。

と猫好きエピソードを披露しつつ、最後に祈りを込めた言葉で締めくくっています。

西: 『サラバ!』ももちろん読んでいただきたいんですけど、素晴らしい小説はいくらでもあって本屋さんにいけば絶対に大切な一冊に出会えると思うんで、どうかみなさん本屋さんに行って本を買ってください

ということで、『SWITCH』以外のここ最近のテレビ出演や雑誌などでの芸人との対談などを振り返ってみたいと思います。

絶望するな。僕達には西加奈子がいる。

ダ・ヴィンチ(2014年12月号)』の又吉直樹西加奈子の対談によると、二人の出会いは、2009年の「太宰ナイト」だったそうです。
それ以前から又吉は西の小説の読者でした。きっかけは又吉が『夕暮れひとりぼっち』*1という短編小説を書いたとき。その編集者から薦められたのです。

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又吉:「西さんのこと好きそうですね」って言われたんです。共通するところがあるって。で、読んだら、全然レベルちゃうわって。
西: いやいや。又吉さんのその短編『夕暮れひとりぼっち』、めちゃくちゃおもしろかった。知れば知るほど「こんなすごい人おんのや!」と。

いまや『文學界(2015年2月号)』に書いた中編純文学小説「火花」で大きな注目を浴びた又吉ですが、既にこの時からその片鱗を見せていたのです。

西は『炎上する君』を刊行すると、まだほとんどライブにしか出ていない、いわゆる“売れない若手芸人”だった又吉に帯文の執筆を依頼したのです。

又吉: もったいなくて「僕はブログに書きますから、帯はほかの方に頼んでください」みたいなお返事をしたら、「知名度とか関係ないねん」って。めっちゃ嬉しかった。
西: 「読者としての僕を満足させながら、芸人としての僕を不安にさせる」という言葉をいただいて。本当に嬉しかった。

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そして、その『炎上する君』が文庫化した際、又吉は解説を書いています。ちなみに『舞台』はこの解説文に触発されて書かれたそうです。

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また又吉は文庫化に際して解説と併せ、以前の帯文を改めています。それがこの言葉です。

絶望するな。僕達には西加奈子がいる。

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作家サミット

西加奈子は、2014年8月30日と9月6日の『王様のブランチ』で2週にわたり、朝井リョウ中村文則川上未映子、和田竜、川上未映子とともに集まり「人気作家サミット」なる企画が行われていました。
西がイジられたり、ツッコんだり、常に笑いの中心に西がいる、というような愛されキャラがよく分かる放送でした。
この中の西と朝井と中村は以前から集まっている仲だそうです。

朝井: 西さんがパーティピーポー的に人を集めてくださって。
西: アホみたいやん!
朝井: アホとは言ってないですよ(笑)。

そして、いまや西加奈子のトレードマークとなった「おだんご頭」について。

朝井: 西さんは、そのおだんごで目立ちますよね。
西: もうめっちゃイジってくんねん!
川上: その髪型以外の髪型する?
西: するするする!
中村: (おだんごの位置が)上か後ろだよね?
川上: 元気だってとき、上なの?(笑)
西: 上時代は終わったの。新聞社の人に取材していただいて、(記事の)最後にちょっと(記者が)自分の意見書かはるやん。そこに『「私、小説が好き。」と言って笑った西さんの頭上でおだんごが揺れた』って(笑)。めっちゃイジられてるやんと思って。そっから封印して、後ろにズラしたの(笑)。

この後は、中学生から寄せられた質問に5人で答えていく形式。
作家でツラいことは?

西: バイトとかしてたときは、飲食業やったら、テーブル拭いて絞って、パンってやったら今日終わり!って感じがあったんやけど、ずっとヌル~っと仕事って感じがする。仕事終わったって感じがなくて。打ち上げみたいなのがしたい。打ち上がらないよね? 打ち上がった時はもう、次の小説が進んでるから。

作家で良かったこと。

西: ネガティブなことだけじゃなくて、自分がちょっと疑問に思うこととかを無視して生きてきたところがあって、たとえば先生とかに理不尽に怒られても「何やねん、腹立つなぁ」で終えてた。「なんであの先生は?」とか「そもそも先生って何?」っていう疑問をすっ飛ばして、生きやすく生きてきたと思うの。でも作家になったら無視できないというか。ツラいニュースとかも見いひんほうがツラくないから見ないようにしてきた気がする。でも作家になったら見て、考えようってなったからそれは良かったと思う。
朝井 こういうとき、西さんは良い答え言うんですよ(笑)。

作家の収入について聞かれて。

西: ぶりっこするみたいやけど、やっぱり好きなモノを書けるなって思う。お金がなかったら好きなモノ書けないかもって思うから、お金が入ったらしばらくは好きなモノを書けるって思う。
朝井: 売れる売れない関係なく?
西: そうそうそう。
川上: また可奈子が良いこと言ってるわ(笑)。

最後に必ずイジられる西加奈子
小説を書く着想について。

西: 結構感動しいで、すぐ感動するんですよ。感動してそれをその時に書こうと思わへんけど、家に帰ってパソコン開いた時になんか覚えててその感動を書くのが多い気がする。これ面白いか分からへんねんけど、地元の駅で階段降りてたら七味唐辛子のTシャツ着たおじいさんがいて。ホント真っ赤で。どこで売ってるのか分からへんのやけど、その人がゆっくり上がってきたんですよ。それで私、笑い止まらなくなって。この空間なんやろって。七味唐辛子のおじさんを書くわけじゃないけど、その時に思った「なんやろ、これ?」ってワクワクした感じを書きたい

オススメの小説。

西: 中学生だったら村田沙耶香さんの『しろいろの街の、その骨の体温の』です。
中学生の頃にこの本に出会ってたらホントに救われたやろなって思う。クラス内の位置とか、私はそんなに可愛くないからおとなしくしておこうとか、そういうふうにすごい葛藤しながら生きていくんやけど、いずれ自分の美しさを見つけるというより、自分の醜さをきちんと見つける話。「あ、こういう救われ方あるんやで」って教えてくれたらすっごく楽になったやろうなって。

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ボクらの時代

読書家で知られる光浦靖子は14年11月6日の『あさイチ』「本の世界」特集でオススメの本として西加奈子の『ふくわらい』を挙げています。

光浦: 西さん本人が明るくて肯定的な人だなって思うんですけど、変な人を最終的に肯定していってくれるんですよね。自分みたいなダメな人間は自分も相手も肯定するし、肯定の先には『どうでもいいか』じゃないけどファーっとハッピーな感じがする。

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その光浦靖子西加奈子は13年2月3日放送の『ボクらの時代』で歌人東直子と鼎談しています。

光浦: (お笑い芸人は)いい人でやさしくないと生き残れない。
西: 作家もそうで、確かに作家性と人間性なんて別にしないといけないものだけど、もう我が儘言ってられへん。本が売れないわけ、今。だから新刊の平台ってあるんだけど、そこを俺が全部占めてやるぜじゃいかへんのよね。みんなでいいものを出して文芸の棚を広げようって。

天才について。

西: 岡本太郎とかが謎で、あんだけ全員に天才って言われてる人って、普通ちゃうん?って。元々はちゃうやろって思われるものだったのが、たぶんテレビとかで岡本太郎天才って全員が言う感じとかが結構怖いというか。

自信について。

西: この間編集さんと話したらモテるのは簡単だって。まず自分が「モテる」っていう意識を持って行動して、めげないこと
光浦: 自信がない人って謙虚でいいって思ってたの、最初は。でも経験を積んでいくうちに、自信がない人って面倒くさいと思った。
西: プライドなんだよ。結局それって褒めてもらいたい裏返し

西加奈子はイランのテヘラン生まれ。小学4年までエジプトで育っています。「エジプト時代が人生の黄金時代」という西は、日本に来た後もエジプトに住む友人とずっと文通をしていました。

西: 自分が今いる世界以外にも違う世界があるってことが凄い救いになってた。だから小説もそれに近いのかもって今になって思う。別に現実にツラいこと無くても、現実のココ以外に何かあるって思うと生きてて楽しい。逃げ出したくなる現実じゃなくても逃げ道としてとっておきたいというか。

プロレス者としての西加奈子

西加奈子直木賞受賞コメントでは、「プロレスに勇気をもらってる」という言葉があり大きな話題になりました。
その会見の模様はこちらに詳しく書かれています。

で、プロレスについて語ったのが以下の部分です。

西: 今めちゃくちゃ新日本プロレスが盛り上がってるんですけど、それは全力で棚橋選手、中邑(真輔)選手、真壁(刀義)選手らが素晴らしい試合をただ、見せてきたから。全力でプロレスを愛し、見せてきたので今がある。去年の1月4日のドームに行ったとき、ドームがギチギチになって、棚橋さんがそれを見て『プロレス信じてやってきてよかったです』とおっしゃって。私は勝手にそれを文学界に当てはめてて。本が売れないと言われてて、飲み屋で会ったおじさんに『太宰で終わった』『最近の作家なんか読めへん』と言われたこともあるし、『小説を書くこと自体、ダサイ』と言われたこともある。でも今、文学界には)すごい作家、すごい“選手”がそろってて、皆、全力で素晴らしい小説を書いてて。絶対また盛り上がると私は思っていて。いつか『小説信じてやってきてよかったです』と言いたい。私、何の話してるんでしたっけ? とにかくプロレスからはむちゃくちゃ勇気をいただいてます

AERA』2014年12月22日号

AERA(2014年 12/22号)』によると、西がプロレスを好きになったのはいとこの家で読んだ『プロレススーパースター列伝』を読んだのがきっかけだったそうです。

そのいとこからアントニオ猪木さんの話を聞いて、プロレスラーってすごいんやと思ったのが最初です。

一番ハマって会場に行っていたのが大学の頃。新日本プロレスでは蝶野正洋らの「nWo」が盛り上がっていた頃。

おこがましいですが、人を楽しませるとか、勇気を与えるということでは、プロレスラーの方たちと同じ地平にいると思いますので、自分はそれを小説でできているのかと。私にとってはプロレスは自分を計るためのもの。さぼってると思ったら、恥ずかしくてプロレスが見れないです

若林とのプロレス談義

最近、オードリーがプロレスファンになったことは、『オードリーのオールナイトニッポン』で繰り返し語られていますが(参考:多重ロマンチック:オードリー・若林の考えるプロレスとお笑いの共通性)、元々、若林にプロレスを薦めたひとりは西加奈子だそうです。二人は、『ダ・ヴィンチ(2014年12月号)』で対談しています。

そこでは飲み会で西が棚橋弘至を観るように薦めた経緯(酔っ払って西本人は自分が薦めたことを覚えていない)なども語られています。

西: 私、今までもいろんなところで言ってきたんだけど、プロレスラーと芸人さんを一番尊敬してて。この二つの職業は近い気がするんですよ。どっちもヤジ飛ばされるでしょう。芸人さんは、「俺のほうがおもしろいぞ、コラ!」とか言われたりして。それでも、そのままお笑い続けなあかんでしょう。
プロレスラーも、見るからに痩せてて力なさそうな観客に「お前、なにやってんねん!」とか言われて。そんな人、本当はプロレスラーにどつかれたら終わりやねん。でも、プロレスラーは絶対そんなことしないでリングに立ち続ける。その「プロ」の感じにシビレるの。あとね、M-1の紹介VTRとか観てると思うんだけど、芸人さんと「花道」に行く前のプロレスラーはやっぱり顔が似てるんですよね。

『SWITCHインタビュー達人達』では「(兄弟の)2番目って結構上を見てるから、『こういうときにこんなん言うたらあかんのやな』とかを覚えてうまいことやってたけど、うまいことやれる自分を恥じてるところもありました」と言っていた西。

西: 「今、私、うまいことやっちゃってる?」って思ってる時にプロレス観に行くと、真壁(刀義)選手*2が金属アレルギーやのにチェーンを体に巻いて全力で戦ってるのを見て。「私はこういうことができるのかな」って自分に問いかけるの。

西: 真剣にやるから格好よくない? たまに「これ、おもしろくないでしょ?」って感じで笑いを取る人おるやん。たぶん照れがあるからなんだろうけど。でも本間(朋晃)*3はさ、全力でさ、格好悪いかもしれへんけど、思い切り「こけし」をダーン!って出してる。私はそういうものにシビレるんだよ。本気でやってる人からは伝わるから。
そのマインド大事だよね。全力でやることを恥じなくなると、楽になれる。プロレスを観てると、そう感じるの。(略)取り繕ってかっこつけることこそ、かっこ悪いって思える
若林:そうじゃないと、次の試合に臨めないよね。
西: そうやねん! 日々って試合やねん!

共感百景

『共感百景』は、もともとライブで行われていたイベントで、2014年から年明けにテレビ東京で放送されています。

2015年1月2日放送のテレビ放送第2回の『共感百景』にも西加奈子は前年に引き続き出演していました。
『共感百景』はお題に対して、大喜利ではなく、共感する詩=共感詩を詠い、それを顧問の俵万智東直子が選評するというもの。詠み人は西の他、漫画家の大橋裕之能町みね子清野とおる、ミュージシャンの大森靖子、トリプルファイヤー・吉田康直、芸人の清水ミチコレイザーラモンRG、博多大吉など多彩なメンツ。MCは劇団ひとり

お題 「噂」

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「あの噂ガセだったらしいよ」その噂自体知らない

西: 何にも立ち会えてなかったというか。噂が始まった瞬間、広まった時も、終わった時も知らなかった。世界に私はいなかった
ひとり: じゃあ、言ってる方も恥ずかしいですね。
西: でも、それはわかったふりをします。「ええ?」って(笑)。

お題 「贅沢」

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社長業のかたわらトライアスロンに挑戦したりなんてしないでほしい

西: 社長業をきちんとやられてて物質的に豊かなのになんか精神の分野まで豊かになろうとしててすごい贅沢やなぁって思って。そら、社長になるでなって。凄いですよね、欲深さが。
大吉: どっちも持って行くなっていう言い方とか、ひがみと妬みでできてる(笑)。
西: なんか金持ちの人は、「金持ちブタ野郎」でいてほしいじゃないですか。でも、精神まできちんとされると、出る幕ないから。

お題 「傷」

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手首のは猫につけられた傷だから、屈託なく聞いてよ。

西: 猫飼ってる人は分かると思うんですけど、結構ザクっていくんですよ。で、それで打ち合わせとかしてたら編集の方が「あ!」っていう顔をしはるんです(笑)。でも、それを聞かれてもないのに「猫、猫!」って言うたら余計怪しいから、それが困るんですよね。聞いてくれたらいいのにって。
ひとり: 相手はおそらくなんかやったのかなって?
西: すごい優しくなるんですよね(笑)。

猫好きの弊害。

お題 「傷」

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「傷つくと思ったから、あのとき言わなかったんだけど…」いや、言うて?

西: 作家さんの対談をしていて、私プロレス好きなんですけど、オリンピックの話をしていて後から作家さんから、「西さん、メダルのことずっとベルトっておっしゃってましたよ」って(笑)。

プロレスファンの弊害。

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*1:MAGIC BOYS ~マジシャンたちの肖像~』所収

*2:スイーツ好きで有名。

*3:先日『水曜日のダウンタウン』に「天龍源一郎以上のハスキーいない説」で天龍と対決した選手です。