恩讐の果に

今、僕はとても恵まれている立場にいると思います。
今時、テレビのことを真正面から書く書き手がほとんどいないというスキマにハマって、自分の実力以上に仕事をいただいているし、それによって経験も積んでまがいなりにもプロのライターと言えるようにもなりました。自分の嫌なことや興味のないことは書かずにすんでいるし、自分の好きなことを程よい若干ユルめのペースで書けている。
ありがたいことに書籍も2014年3月『タモリ学』での書籍デビュー以来、約3年半で7冊(うち共著1冊)という理想的な出版ペースだと思う。
周りにも恵まれ多くのチャンスをいただいてます。
だから、今の状況は理想的だと思う一方で、正直、ヌルいのではないかという危機感もあります。今はいいけど、このままではこの先、5年後、10年後はないのではないかと。
もう一歩踏み込んで、厳しい目にさらされる場所に行かなければならないんじゃないか。
そんな決意と覚悟を持って書いたのが本日発売された『笑福亭鶴瓶論』です!

笑福亭鶴瓶論 (新潮新書)
戸部田誠(てれびのスキマ)
新潮社
売り上げランキング: 1,361

編集を担当してくださったのは数々の大ヒット新書を手がけてきた金寿煥さん。
デビュー以来、一緒に仕事をしたいと思い願っていた方。と同時に、組むのは恐くもありました。金さんと組んで鳴かず飛ばずの本を作ったとしたら、どう考えても自分の実力不足が露呈されてしまうからです。
そして、僕にとっては、ひとつ因縁(という言葉が適切か分かりませんが)もあります。
金さんは樋口毅宏さんの『タモリ論』を手掛けた方でもあるのです。
タモリ論』は、2013年7月に発売され、大ヒット。
ありそうでなかった企画であり、発売のタイミングも含めて、樋口さんはもとより、編集者の力を感じました。
このヒットを受け、さらに『笑っていいとも!』終了に伴い、数多の「タモリ本」が発売されました。
僕の『タモリ学』もそのひとつと言えるでしょう。

実際には、『タモリ論』発売のかなり前から(おそらく『タモリ論』の企画前から)企画が進められたのですが、僕の遅筆が原因で先を越されてしまい、僕の『タモリ学』は、“便乗本”の誹りを受けることになりました。一方で、無名の新人のデビュー作にもかかわらず現時点で4刷りを果たしたのは、タモリさんというテーマ自体が魅力的なのはもちろんですが、間違いなく『タモリ論』ヒットの恩恵を受けているのだと思います。だから勝手に恩讐半ばの感情があったりします。
で、当時の遅筆の原因のひとつは僕に別の本職があったからです。遅々として進まない中、『タモリ論』出版の話を聞いて焦った僕は追い込まれた末、安定した収入が得られる仕事を辞めました。つまり、僕が仕事を辞めた原因の一端は金さんにあるのです!(責任転嫁)
と言いつつ仕事を辞めたことに後悔は少しもなく、むしろ間接的に恩人と言って過言ではありません。
そういった意味でも、絶対に“売りたい”と思いました。
そう、今回の本は誤解を恐れずに言えば“売りたい”本なのです。
(そういうと、今までの本が“売りたい”と思っていなかったように捉えられてしまうかもしれませんが、もちろんそんなことはなく、ニュアンスを汲み取っていただけるとありがたいです。)

だから、発売前に重版が決まったのは本当に嬉しかったです。が、一方でプレッシャーが大きくなったのも事実。
通常は書店に並び、それが売れたから書店から注文が来て、重版が決まるという流れ。今回は、そうではなく、事前の書店からの注文が予想より多かったから重版が決まったもの。つまり、実際に売れるかどうかは未知数。大量に売れ残って返品の嵐だったらどうしよう……、そんな不安が押し寄せてきます。
でも、内容には自信があります!
後はいかに手にとって読んでもらうか。
そのために自分ができる限りのことをしたいと思います。
本書のテーマこそまさにそれ。
「人見知りしない。時間見知りしない。場所見知りしない。そこに対していかに助平であるか」
そんな鶴瓶さんの言葉を通して、スケベに生きるとはどういうことかを書きました。
だから、スケベに“売りたい”。
正直、プロモーション活動は苦手な場所。でもそれにひるまずやっていこうと。

というわけでまず、本書のベースとなった連載「鶴瓶のスケベ学」を掲載していた「cakes」にて、「笑福亭鶴瓶クロニクル」と題して、誕生から弟子時代までの年表を5回にわたって掲載します。
1回目、誕生から幼少期まではこちら 
cakes.mu

そして、8月20日に下北沢B&Bで、細田マサシさんを司会に明石家さんまフリークのエムカクさんとイベントを行います!
passmarket.yahoo.co.jp

他にも、様々なプロモーション活動を考え行っていきますので、よろしくお願いします!