有吉弘行のプロレス

11月1日に放送された『ロンドンハーツ』では、これまで有吉弘行の暴言によって被害を受けたと主張するメンバーが、有吉に謝罪を求めるという「有吉被害者の会」が放送された。
番組はこれまでの有吉の暴言を振り返り、それについて被害を訴えるという流れで行われた。

たとえば、グラビアアイドル代表として磯山さやか熊田曜子が彼の暴言によって仕事の方向性が変わってしまったと訴える。
しかし有吉は
「ホントに尊敬してるよ、磯山さんのことは。俺、日本のロバート・デ・ニーロだと思ってるから。太ったり痩せたり(笑)」
「俺が(ポッチャリで)止めてあげてるんだよ。この前まであなた『デブ山さん』って言われてたんだよ
などと暴言を吐き続け

俺、口の悪い下町のおっさんくらいに思ってみなよ。心は優しいなって思っちゃうでしょうよ。

と開き直る。

熊田: 私たちグラビアアイドルってそんなふうに扱われたこと今までなかったんですよ。でも有吉さんのせいで雑になってるんです、扱いが。あの子たちは何言っても平気なんだっていうふうに有吉さんがいない番組でもそうなってきちゃってる。
有吉: 仕事しやすいっていうか、使いやすいタレントになってるんじゃないかなって僕自身は思ってるんですよ。
淳:  有吉のお陰で熊田ってこういうふうにいじればいいんだって模範解答見せてくれたおかげで他にいい影響があったりとか。
熊田: きついこと言われてもスタッフさんとか淳さんは後でフォローしに来てくれる。
有吉: 俺はスタッフとか淳さんみたいに下心ないからね。
淳:  バカヤロー!(笑)
有吉: じゃあ、番組でさんざん罵ったとしたら、楽屋行ってケツのひとつでも触ってやればいいってこと?
吉村: 下町すぎるぞ! 今の発言は!

などという流れで熊田曜子

こういう番組って今までの経験上、言いあえる仲っていうのはプライベートでも知ってて、ちょっとプロレス的な感覚でやるのかと思ってたら……。

と安易に口走ると、それを聞き流さず有吉、話を遮って

まずはちょっとプロレス業界全体に謝ってほしい


いわゆる「仲良し同士の暗黙の了解でケンカする」ことを「プロレス(的)」と呼ばれることを多くのプロレスファンは嫌う。
それはプロレスの本質から逸脱しているからだ。
「プロレス的」という言葉を嫌った有吉がこの日見せたものこそ本当の意味でバラエティにおける「プロレス」的な攻防だった。

対「人気モデル」

vs小森純

【有吉の過去の発言】
・最近ゴミみたいにいますからね、カリスマが。
・根本的なこと言っていいですか? ブスじゃねえか! ブスでめし食ってるんだもんね、それは尊敬してるよ。

「ブスキャラが定着。カリスマモデルと呼ばれなくなった」と訴える小森。

有吉: だから「カリスマ詐欺」を行ってるっていうの。カリスマでもなんでもないやつに「カリスマ」ってつけてるのが問題だって言ってるの。「カリスマ」ってなんだよ、一体?
JOY: 着たものが売れたり、プロデュースしたものが売れたりとか、だから純ちゃんみたいになりたいみたいな子が非常に多いから彼女は「カリスマ」と呼ばれているんですよ。
有吉: そもそもさ、「読者モデル」っていうごまかし方なんなんだろっていうのがあるんだよな。
小森: 早い話、ギャラが安いです、「読者モデル」は。
有吉: 安っぽいモデルさんのカリスマ
ユージ: みんなが親しみやすい、近づきやすいんですよ、読者モデルっていうのは。
小森: そうそう!
有吉: 近づきやすかったり、親しみやすかったりとか、私もこういうふうになりたいなって簡単に思えるのが読者モデルだとしたら、カリスマっておかしくねえ

有吉のバチバチの口撃にぐうの音も出ず苦笑いの小森純に「カリスマって言われてるくらいの人なんだから、俺の一言ぐらいで揺るがないでしょう、普通」と有吉が追い打ちをかける。

小森: でも有吉さんの発言ってホントに影響力がでかいので、どの番組行っても「お前ブスでしょ?」って体で入ってくるんですよ。でも益若つばさとかは誰にも言われてないから「カリスマ読者モデル」のまま。うちもああなる予定だったの。うちも今頃CD出してるハズだったの!

すると一転、丸め込み始める有吉。

有吉: だけど、いいじゃん、結婚も幸せになさった。
小森: 幸せ(笑顔)。
有吉: 「カリスマ主婦」になりたいでしょ、次は?
小森: はあー。(感心)
有吉: 料理も上手なんでしょ?
小森: ありがとうございます!
有吉: 「美人カリスマ主婦
小森: (満面の笑み)
有吉: やっぱりカリスマ読者モデルじゃないといけないっていう、気持ちがブスにしてたかもしれない。内面が出てたの、顔に。だけど気持ちが優しくなったから、顔もやさしくなったし、すごく綺麗。すごくいい旦那さんなんだね?
小森: (笑顔で頷く)
JOY: (そんなこと)思ってない!
小森: 有吉さん、ホントにありがとうございました!


vsJOY&ユージ

【JOYへの有吉の過去発言】
笑いの上澄みだけすくって軽い笑いやってんじゃねえぞ。さすがにそろそろ芸人も許さなくなって来るぞ。
・一切の(笑いの)センスがない。ただの、でくのぼうだな。
・来年消えるっていうのは間違ってました。再来年消えます。
【ユージへの有吉の過去発言】
自分のポテンシャル以上の仕事があると「キテる」って言うんですよ。ユージさん(今)そうですよ。
・同じ、でくのぼう。再来年消える。
JOYの食べかすをもらってる

「テレビでコメントするのが怖い」という二人。

JOY: 今までは軽いノリでポンと喋れてたんですけど、有吉さんの言った「笑いの上澄みだけすくって」笑い取ってるみたいになっちゃうでしょ?それが僕のスタイルだったのにそれを叩き潰された。ちょうどその時にオリラジの藤森さんとかが出てきたんですよ。本来僕がああいう感じになれたかもしれないんですよ。
有吉: まあ、でも藤森は努力したんだよ
JOY: (絶句)…努力の途中で病気で入院しちゃったんですよ。「でくのぼう」の件。ただのでくのぼうじゃないですよ。一生懸命働いて、たくさん番組も出てて、なぜ「ただの、できのぼう」かと。「がんばってる、でくのぼう」ならまだしも。
有吉: じゃあ、訂正しましょうか? 「がんばってる、でくのぼう」で。

そして「有吉の歌を聞くと体温が2度上がる」などとテキトーに応えたJOYのアンケートにダメだしする有吉。
それを実証するために普段は歌うのを嫌がる『白い雲のように』を躊躇なく本域で熱唱。
完全に流れを支配し圧倒した。

有吉: じゃあ今後「でくのぼう(JOY)」「でくのぼう(ユージ)」「ブスのぼう(小森)」で。

対「若手芸人」

フルーツポンチ村上への有吉の過去発言】
・芸人から見て、あんなダサい奴はいないでしょ?
・全てがダサい。スベった時の所作とかね。あがき方とかも。言われた時の表情も。
・(レッドシアターメンバーの暴露話に)僕が年取ったせいなのかもしれないけど、ライブの最後のコーナーなのかな? 俺、これに参戦しなきゃいけないかな? もっとピリピリしてる番組だって聞いてるでしょ? そのやり方が馴れ合いなのかって。
実力以上の評価を受けている人間に今の実力を教えてやるのも俺の仕事
ピース綾部への有吉の過去発言】
第一に番組のことを考えなきゃいけない。でもこいつらは自分が売れようと思って前に出る
・(綾部への天狗いじりに)吉本でそうやって煮えたぎってるっていうのを聞いて安心しました。もう吉本以外ではアウトなんで。

そして番組中何も出来なかった吉村に対してはツッコミを超えた暴力行為。
これに対し「若手つぶしが酷すぎる」と訴える。
有吉の本番中のダメ出しのせいでコメントが言いづらい。これを若手の中では「有吉ブレーキ」と呼んでいる、と綾部。

有吉: その前に村上、顔作りすぎじゃねえ? リアリティがなくなっちゃうんだよ、コントっぽくなっちゃう
村上: 違う、俺作ってないです!それ言われちゃったらさ、俺ホントに無意識だったのに、こういう時どんな顔すればいいんだろう?ってなっちゃいますよ。
有吉: 無意識でそういう顔になってるとしたら今後注意したほうがいいよ。表情ひとつ意識持ってやらないと
村上: ……わかりました。
綾部: 戦意を失うな、戦意を失うな!
吉村: 相手は崩しに来てるから落ち着け!
有吉: お前が番組潰してるじゃん!変な顔して。みんな一生懸命やってきたよ、お前だけコントテイスト入ってきちゃった。まさに今、お前たちが言ってた「有吉ブレーキ」が入らずに村上があの顔をずっと続けてたらさ、誰がダメージ受けるのよ?村上でしょ。3人でしょ。だから早めに注意してあげてんじゃん。

まずは足場を崩す有吉。
ワイプでのオーバーリアクションを有吉に注意されたので控えめにしたと訴える綾部。しかし実際の放送を見ると有吉はちゃんとオーバーリアクションをしていた、と。

有吉: 綾部はさ、そういうふうに注意されたらリアクション抑えるわけでしょ?調整してるわけでしょ、色々。調整するってのがおかしいじゃん。俺、柴田理恵さんに注意したこと無いよ。泣くようなシーンじゃないでしょって言ったこと無いよ。
綾部: そりゃそうでしょう。若手芸人ですから、前へ前へってなっちゃうんですよ。有吉さんもそういう時期があったでしょ?
有吉: ない!(キッパリ)
綾部: ええ? なんでないんですか?
有吉: (笑) 俺、やっぱすぐスターになっちゃったから。
吉村: 天才か、お前!

「優しく若手を見守って」と言う若手芸人たち。

有吉: うん。はい、じゃあ、なんにも言わなきゃいいわけね。
綾部: いや、なんで0か100しかないの?
熊田: (入ってきて)共通して言えること分かりました。有吉さんは愛情がないんです!
有吉: 愛情、あるだろ、俺は! なんで俺が愛情がないんだよ、今までの話だってそうだろ、愛情持ってやってんだよ! ただ言い方が悪かったりな、そっちの受け取り方が悪かったりするけど、俺は愛を持ってやってるんだよ! じゃあ、愛ってなんだろうね? 厳しさも愛だろ!

ここから、急に入ってきた熊田に対し、淳「別の子に変えますか?」有吉「いや、この子でいい」というお約束の流れまで入れてくる有吉と淳*1

村上: あれを見たスタッフさんがホントにこいつら面白くないんじゃないかって思っちゃう。
有吉: だからさ、スタッフがさ、俺が言わなきゃ気づかないノロマだと思ってるの? 俺が言ったから「うわっ、そうだわ。有吉の言うとおりだ」なんてノロマはいないよ、スタッフに。
村上: 違くて。スッタフさん批判に飛び火しちゃったら俺……、ホントに怖くなっちゃってぇ。怖いです! だって全部評価するんだもん。有吉さんのやってることはツッコミじゃないんだよ、評価してくるんですよ
有吉: やっぱり芸人ってタイプがあってさ、淳さんみたいに番組仕切ったりとかして人をコントロールするタイプもいれば、お前みたいにさ、コントロールされる側の人間もいるわけだろ? でもどっちが上ってわけじゃないんだよ。芸人のレベルとして。どっちも笑いのためにやってることだから。で、お前は確実にイジられるほうの芸人だってことには気づいてるでしょ? そしたらさ、イジられてなんぼじゃない?
村上: ハイ…。
淳:  今のはもう、完全に有吉お笑い塾の塾生の顔だったよ(笑)。
熊田: (入ってきて)でもそれくらい有吉さんの言い方……
有吉: (遮って)今、芸人の話してるんだっ、バカ野郎っ!!
淳:  チェンジなさいますか?(笑)
有吉: いや、この子でいい(笑)。

吉村が「なにも出来なかったのは認める。でもあれはお笑いのパンチじゃない。ただの暴力」と訴えると、一転、今度は「だから、それは吉村、ホントに悪かった」と深々と頭を下げる有吉。
なんで謝るんだよ!来てくれよ、頼むから来てくれよ!怒ってくれよ。喧嘩してくれよ!
と詰め寄り暴行を加える吉村に無抵抗で怯えて見せる有吉。

「許してやってくれ」と淳、3人に土下座を促し、彼らがそれに従うと有吉、すぐに立ち直り

今後二度と生意気な口きいてほしくないです。ポンコツ芸人なんだからっ!

そして結局訴えた全員で土下座。


相手の攻撃を受け止め、それに対し自在に返していく有吉。
時に叩きのめし、時にかわし、時に丸め込み、時に急所をつく。
作られたキャラクターは剥ぎ取られ、人間味がむき出しになっていく。
一歩間違えば相手も自分も重大なダメージを負いかねないギリギリの緊張感の中で、相手を上限まで引き上げつつ、なお自分がそれを凌駕する。
それはまさに有吉弘行のプロレスだった。

*1:この日、淳は名レフェリーであり、名実況&解説であり、名セコンドだった