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タモリ、又吉、東京ポッド、マツコ……それぞれの「東京」論

笑っていいとも!』終わってしまいましたね……。
いまだに呆然としてしまっています。素晴らしい、夢の詰まったフィナーレだったと思います。
不遜なことを言えば『いいとも』「グランドフィナーレ特大号」のエンディングが『タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?』の最後の締めにつながったのではないかと思います。

ちなみに『いいとも』「グランドフィナーレ」については「日刊サイゾー」の連載コラムに書かせていただきました。

キング・オブ・スタジオドキュメント『いいとも』の終わり方 - 日刊サイゾー


さて、そんな『いいとも』の最終期の人気コーナーのひとつが金曜日の「目指せ!言葉の達人」だ。
これはある言葉に対して辞書の新たな語釈を考える、というコーナーで、小学館の国語辞典『大辞泉』の編集長である板倉俊氏が審査を行い「達人」「入選」「ボツ」と評価を行い、「達人」に認定された場合、実際に『大辞泉』に掲載する可能性もある、というものだ。
このコーナーで意外な才能を発揮したのは木下優樹菜
何度も「達人」に認定され、そのいくつかはデジタル版『大辞泉』に掲載されることが決まった。
たとえば、こんな「語釈」だ。

・『大人』…「1年365日を異常に早く感じてしまう人」
・『涙』……「溢れる感情の結晶」
・『結婚』…「お米の固さの好みを受け入れること」

『いいとも』メンバー、タモリの場合

3月14日の放送では「東京」がテーマに掲げられた。

・「大学、物語、バナナ…つけると急に憧れ度が増す言葉」(赤江珠緒
・「人によっては『冬京』『凍京』である」(ビビる大木)
・「最低1年は住まないと電車地下鉄等々の路線図を覚える事の出来ない街、首都高にいたっては最低4年かかる」(カンニング竹山
・「たくさんの時間が流れていて、どの時間に乗るかで成功する者、失敗する者、に分かれてしまう。だが、失敗し、敗北した者にも何度でも次の瞬間が訪れて夢を見られる場所」(草なぎ剛
・「天国か? 地獄か? それはあなた次第」(関根勤
・「何でもあるのに何も無い街」(劇団ひとり
・「人それぞれの求めているものが詰まっている、なんでもおもちゃ箱」(木下優樹菜

その結果、木下優樹菜はまたも「達人」認定された。


このコーナーで木下優樹菜に次いで「達人」認定されているのはやはりタモリだ。
タモリは「東京」をこう定義している。

・「ほとんどが地方のカケラで作られた巨大都市」(タモリ

そして「東京、東京って言うけど、ほとんどが地方出身ですから。地方のカケラなんですよ」と補足する。
また「グランドフィナーレ」に向けて特設された「Yahoo!テレビ」の『いいとも』特集ページで「タモリさんへの一問一答」が掲載されている。そこで「東京の好きなところ、嫌いなところは?」の問いにこう答えている。

タモリ「好きなのは、(人口が多く多種多様な人がいるので)“マイナーなもの”が通用するところかな。アバンギャルドな店が成立してたりするしね。嫌いなところは、まず“人が多すぎる”ところ。あと、これは反面、良いことかもしれないけど“まったく過去にこだわらないところ”」

又吉直樹、東京ポッド許可局の場合

ピース又吉は著書『東京百景』の「はじめに」で次のように「東京」を表現している。

東京は果てしなく残酷で時折楽しく稀に優しい。ただその気まぐれな優しさが途方も無く深いから嫌いになれない。

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2013年6月29日に放送された『東京ポッド許可局』(TBSラジオ)では、地方出身のマキタスポーツプチ鹿島と東京生まれ・東京育ちのサンキュータツオが対比されるように「上京論」と題して「東京」を語っている。
「東京って、土地じゃない気がする。土地よりも『道』みたいな感じ」というマキタ。

マキタ: 「通り道」みたいなイメージっていうんですか? たまさかそこにステイしてるってだけの話であって、なんか東京で生まれ育った人たちもあなたみたいにいるかもしれないけど、もう土地とかそういうネイティブなものとかじゃない
タツオ: 最終的には老後は地元に戻る的な?
マキタ: 戻るかもしれないし。別にここは何かを演じている、たまさか集合している、何かもっと本当に上位概念というか。
タツオ: 『劇団東京』ってこと?
マキタ: うん。みたいな感じであって、別に住むところでもないし、次元がちょっと違う場所のような気がする。

プチ鹿島は、いわゆるクラスの中で上位の人は地元でスターだから東京への憧れはなく、そのまま地元に残ることが多いと分析する。むしろ、東京で「一旗揚げよう」とするのは田舎でくすぶっている人たちなのだと。そして「武者修行幻想」*1を抱きながら上京するのだ。

タツオ: 俺、でももし地方に生まれてたらものすごいコンプレックスになってるかもしれない。
マキタ: うん。持って当然ですよ。
鹿島: だって恥ずかしいですよ。東京に行けば何とかなるっていう。「自分」に軸があるわけじゃないですよ。だから、東京に行けば変われるであろう……って。
タツオ: 俺がだから大学に行けば彼女ができるって思ってたのと一緒ですね。愚かな思い込みですよね。じゃあマキタさんは東京に出て何とかなると思って、しかも大学に行けば何とかなるって思って、どうにもならなかったと。
マキタ: どうにもならなかった。だから、本当に何もしてくれなかったから、周りも。「うわーっ」って思ったよね。「どうする、どうする?」って思いながら。
タツオ: やっぱり常に「『どうする、どうする?』問題」があるんだね。
マキタ: ありますよ。これ、こうやって死んでくんだって思って。何度も思ったことあるもん。
プチ: あと、僕の悪い癖は東京にあれだけメラメラと野心をもって出てきたのに、いざ住み始めると落ち着いちゃう。そういう環境に適応しちゃう変なところがあって。住めば都になっちゃうんですよね。

マツコ・デラックスの場合

数ある「東京」論の中で僕がもっとも感銘を受け膝を打ったのはマツコ・デラックスの「東京」論だ。
それは『Rockin'on JAPAN』で行われたマツコと銀杏BOYZ峯田和伸の対談での発言だ。
20歳台後半の峯田は同誌で「噛ませ犬ミネタ社会の窓」という「人生相談」の連載コーナーを持っており、2007年2月号で20回記念ということで逆に峯田がマツコを招いて「人生相談」を受けている。
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「もっと、女の子と普通に話ができるようになりたい」「普通に彼女のいる生活がしたい」という峯田の相談にマツコは「それは求めちゃダメよ。そんなほのぼのとした幸せを得た時点で、アンタのミュージシャンとしての生命は終わりよ!」「私たちは愚か者なのよ」「楽になっちゃった時点で、何かは失うわよ? そこで楽になっちゃったらつまんなくなると思うわよ、生きてて。たぶんそういうのが、創作のひとつの源になってるんじゃないのかな」「楽しくないってことに気付かずにさ、楽しいフリしてる人よりは、楽しくないってことに気づいて、楽しくないなりの人生を歩んでるほうが、ちょっと得した気分にならない? 楽しく生きてる人なんていないのよ!」などとダメ出しともエールとも言える言葉を贈っている。
さらに唐突に「男の子でオナニーしてしまう」などと言い出す峯田に「このままいけば大化けするわよ」「もっとよ! もっとすごくなるわよ。いまどきなかなかいないわよ。こんなおかしな人!」「久々の逸材だわ。本物よ」と彼の病んでいる部分を気に入った様子だった。


そして、峯田の田舎である山形の話から「東京」論へと展開していく。

マツコ: ていうか、山形なんてみんなすることないから、童貞捨てるの早いんじゃないの?
峯田: 周りはそうでした。僕は遅かったです。東京きたらちょっとは変わるかと思ったんですけど、変わんないすね。
マツコ: みんなそういう幻想を抱くけど、それね、逆なのよ東京ほど、アンタみたいなのが変わらないでいられる街はないわよ? 例えば山形にいたら、矯正されてたと思うのよ。
峯田: ああー、そうですね!
マツコ: 周りがほっとかないじゃない? 無理矢理、役場かなんかで働かされて、結婚もして、今頃ちゃんと生きてたと思うのよ。東京って、病気の人は一生病気でいられる街よ。で、肥大するのよ、その病んでる部分が。でも、だから面白いんじゃない? 


有吉弘行のツイッターのフォロワーはなぜ300万人もいるのか 絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』にはマツコをテーマにした「マツコ・デラックスの贖罪」が収録されていますが、実はこのマツコの「東京」論を起点にして書いたものです。
ちなみにこの回は「メルマ旬報」に掲載された際、ラジオ『井筒とマツコ 禁断のラジオ』(文化放送)でマツコさんと共演しているコトブキツカサさんがご本人に紹介していただき、マツコさんご本人に読んでいただいたそうです。その時の模様をコトブキさんが語っているので書き起こします。

コトブキ「これ(『マツコ・デラックスの贖罪』)僕読んで、あぁ良かったなぁと思ったから、マツコさんに『こんなのあるけど知ってる?』って言ったら、マツコさんが『知らない、読ませて』って言って、ホントに珍しくマツコさんが放送始まる前に、すっげーじっくり読んだんですよ。そしたらね、今までで僕、マツコさんと相当長い付き合いですけど、一ッ番真面目な顔してたの。で、読み終わって僕に言ったのが、『てれびのスキマさんってゲイかな?』って(笑)」(『井筒とマツコ 禁断のラジオ(2013/8/31)』)

僕がゲイかどうかはこの際置いておいて(笑)、ものすごく嬉しかったです。
というわけで、「マツコ・デラックスの贖罪」も収録されている『有吉弘行のツイッターのフォロワーはなぜ300万人もいるのか 絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』は4月3日発売です!
よろしくお願いします!

*1:プロレスなどで海外修行に行って凱旋すると劇的に成長するような幻想